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乙女に捧げる狂詩曲  作者: 遠夜
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乙女の心残り

久しぶりなのに短いです。ごめんなさい。

私のこの奇妙な体質の根源が青磁(ちちおや)からの遺伝だとするなら、はたして青磁本人はそれを自覚しているんだろうか。

これまで青磁の口からそのての話題が持ち出された事は一度も無いし、明け透けで隠し事の下手くそな青磁に、何かを意図的に隠し続ける事ができるとも思えない。


━━━とすると、これまでずっと本人無自覚で色々やらかしていた可能性が大だ。


一年の半分は行方が知れなかった青磁。

家に帰ってくる度「また迷子になっちゃっててさー」とかヘラヘラ笑ってたけど、もしかしてアレどっかに『跳んで』たりしたんじゃないの!?・・・無自覚、コワッ!!!


よくよく思い返してみると、青磁が撮ってくる写真はいつも、ドコを撮影してきたんだと言いたくなるような風景が多かった。


「まぁ、ともかく。あんたがそ(・)う(・)い(・)う(・)血筋なんだって事は理解したよ」


「えええぇ・・・」


「異能の才が同じ血統に顕れやすいのは、普通に知られてる事さ。血族全員に顕現するわけじゃないし、かなり代が空く場合もあるけどね。あんたのとこはたまたま二代続いて濃く出たんだろ」


・・・今更そんな事実が判明したところで『だから?』って感じだけど。

世間で俗に言う『夫婦の縁は切れても親子の縁は切れない』ってのはこの事かと思った。

血の繋がりって、ホントに厄介。




*




グウィネスさんとの会話の後で、いつもの就寝時刻に自分の部屋に戻ってはみたものの、なんとなく目が冴えて全然眠れない。

今日一日で受けた精神的なダメージが、思った以上に大きかったからだと思う。


自分のこの妙ちきりんな体質が青磁からの遺伝だとわかっても、それで何か事態が好転したとかいうわけでもなく、ただあの超ド天然と血が繋がっている事実を再認識させられただけ。


しかも当の青磁は自分の異能について全くの無自覚だから、本人をあれこれ問い詰めても何か参考になるような答えはとても期待できそうにもないときてる。


けど、まぁ・・・色んな意味で諦めはついたかな。


どんなに不本意でも血の繋がりは消せやしないし、どれだけ自分の不運を呪ったところで時間は巻き戻らない。

でも不幸中の幸いとでもいうか、私にも青磁にも居場所があって、傍に寄り添い支えてくれる人がいる。


元の世界を恋しく思う気持ちは、きっと一生心の片隅に居座り続けるだろうし、時々は望郷の念にかられて涙する事もあるだろう。

━━━それでももう今は、此(・)処(・)が自分の生きる場所。


なのに今頃になって急に何故か、向こうに残してきたお母さんの事が酷く気掛かりで仕方がない。


自分は一度向こうで死んだものと割り切って、そこそこ前向きにやってきた私はともかくとして。

新天地で夫と第二の人生を送るべく海外に渡った途端、突然連絡もつかなくなった娘を母親はどう思っただろう。


普通に考えて数ヵ月も連絡が途絶えれば、いくら海の向こうとはいえ日本にすっ飛んで来たはず。

少し調べれば私が春から一度も受講していない事や、知人の誰とも顔を合わせていない事はすぐ知れる。


そして間もなく、元(・)夫に続いて一人娘までもが行方知れずになった事実を知ったお母さんは、どんな想いでそれを受け止めたのだろう━━━━。




あれこれ考えて余計に眠れなくなった・・・。

こうなったら気分を切り替えるしかない。

私は1LDKに繋がるクローゼットの扉に手をかけた。



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