「だからしばらく」
一個のパンを物質と霊体で二人で分けて、平らげながらカルブが尋ねる。
「アアルの野はどうだったんです?」
「家出してきた」
「何で!?」
「父上に怒られた。早死にすんなって。おれだって好きで死んだわけじゃないのに」
「あー。それはどちらもお辛いですね」
「だからしばらく世話になるぞ」
「だから何で!? 王宮に帰ればいいじゃないですか!?」
「おれを感知できるのは、生きてる人間ではお前だけなんだよォ」
「うーん、しょうがないですね……でもオレ、仕事があるんで夜まで遊べませんよ?」
「それより今からアケトアテンに行こうぜ」
「だから仕事があるんですってば!! しかもアケトアテンって、めちゃくちゃ遠いじゃないですか!!」
「スメさんの遺体をミイラにして丁重に葬ってほしいんだ。ちゃんと報酬は出すぞ」
「スメさんって誰? てか、報酬って? 幽霊がどうやって出すんですか?」
「おれの墓から財宝を持ち出せ」
「それはマズイですって!!」
「じゃあ、愛の女神ハトホルにかけ合って嫁探しを手伝ってやる」
「それならばぜひ!! あ、いえ、すぐには駄目です。先約が……」
「ホッマのミイラなら親父さんに頼めよ。帰ってきてるんだろ?」
「何で知ってるんです?」
「さっき工房のほうを覗きに来てた。いろいろ文句があるみたいだったぞ」
「うわあああ」
カルブの父は先王の宗教改革の真っただ中を生きてきた人なので、アテン神式の葬儀についてはカルブよりもはるかに詳しい。
普段は別の町で働いており、カルブに嫁はまだかとせっつくために数日前からテーベに来ている。
「あああ、もう! 父ちゃんにどう説明したらいいんですか~! まさか幽霊が見えるだなんて言えないですよ~!」
半泣きで旅の支度を始めるカルブの横で、冥界の旅を終えたばかりのファラオは、日差しを浴びた川面のように目をきらきらとさせていた。
アテン神☆ぷりーず2、無事完結いたしました!
執筆中、応援してくださった皆さま、ありがとうございました!
完結後に読み始めてくださった皆さま、ありがとうございます!
異世界ファンタジーが大人気の時代に、古代エジプトの物語に興味を持っていただけたこと、とてもとても嬉しいです!
今後は皆さまの感想や、そもそものエジプト研究の発展をもとに、アテン神3の執筆も考えていきたいと思っております。
(近々大発見があるみたいなことが、前々から言われているのです)
ではでは、いつかまた。
最後までお読みいただけたことに心よりの感謝を込めて……
挿絵は貴様二太郎さまからの読了記念ファンアートでございます♪




