第四十七話 【俺の世界の帰還】
ファセルムの二十九日。
午前九時。
母が旅立ってから、六十九日が経った。
結局また咲くことになった、あの同じ花を届けるために。
咲くまでに本来はずっと時間がかかるため、これは前代未聞の出来事だ。
ましてや、この時期に咲くことなどあり得ない。
この間、俺はエリトの魔物探しにすべての時間を費やした。
俺はやつらに対して免疫があった。
俺の方が強かったため、やつらは反撃してこなかった。
アメリアだけが心配していた。
彼女は俺を叱り、自分の家に連れ帰って寝かせた。
共同生活にはひどく苦労したと認めざるを得ない。
だが、思っていたほど難しくはなかった。
エリトは一匹も見つからなかった。
村に猫がいると寄り付かなくなるように、やつらは姿を現すのを避けている。
俺はこの村にとって猫と見なされている。
誰かにそう言われたわけではない。俺自身が導き出した結論だ。
まるで、どういうわけかこれが自分の唯一の目的であるかのように。
なぜか?
再び人間性を遠ざけたいからだ。
どうにかして、ただ役に立つだけの存在になりたいから。
猫が本能に従うように、俺は自分の義務に従う。
だが、そうしようとするたび、いつも何かが俺を引き上げる。
森の中で、いつも長すぎる時間、姿を消していた。
エネノ自身が探しに来なければならないほどに。
あるいは最悪の場合、大声で叫び始めるほどに。
俺を見つけて連れ戻した後、アメリアは俺を叱り、何日も怒り続けた。
どれだけ人間性から遠ざかりたいと願っても、
どれだけこのすべてから逃げ出したいと思っても、
失うものがなければ、痛むこともないのだから、
そんなことばかりが頭をよぎっても、もう俺にはできない。
「ダイくん! 悪いダイくん! あんなふうにいなくならないでよっ!」
今の俺には錨がある。
俺の生真面目さなど気にしない人々がいる。
孤児院にいた頃、面会に来る家族たちは俺をハンサムだと言い、記録は俺がとても聡明であることを示していた。
運動神経が良く、勤勉。
完璧な子供だった。
だが、俺の目とそこにある完全な虚無を見ると、彼らは距離を置き、二度と戻ってくることはなかった。
彼らを責めることはできない。
誰もそんなことは望まない。
そんな子供を育てるのは難しい。
だから、誰も彼らを裁くべきではない。
剣から手を放し、鞘に収めた。
「ふぅ……」
認めるのは難しいが……。
「会いたいよ、母さん」
---
数時間が過ぎた。
森から戻り、宿屋の外にあるベンチの一つに腰を下ろした。
古くて不格好な、マリアの体重を恋しがっているかのようなベンチ。
毎年十月十四日にいつも座っていた、あのベンチを思い出させるベンチだ。
まるで、こんなことが本当に必要であるかのように。
座っていれば何かがわかるかのように。
そんなことを考えるなんて、あり得ない。
それが人間の面白さだ。
論理や明白なものを探そうとはしない。
ジュリエットは、俺を愛する理由などないと言った。
何が起ころうと、常にそうし続けるのだと教えてくれた。
そして俺は自問する。それが人間であるということなのだろうか?
それが、機械ではないことで人生が与えてくれる自由なのか?
同時に、自分を浮かせているものを失うこともある。
鎖が切れ、あの錨を置き去りにするように。
だから。
俺はどうすればいいんだ?
わからない。
何も確信が持てない。
達成できそうに感じる日もある。
ある瞬間にはやってみたいと言えても、いざやるべき時になると、そうはならない。
岐路だ。
謎だ。
そんなこと、何も重要じゃないと信じるようにもなった。
正しい方法さえ探せば、うまくやれるはずだと。
正しい方法とは何だ?
愛されるがままになることかもしれない。
自分には帰る場所があるのだと、ようやく受け入れること。
俺をここに繋ぎ止めている人たちを失うのが怖いのだと。
だが、それを言うのは簡単だ。
そう語るのも簡単だ。
やること?
今のところ、不可能だ。
俺のこの態度で、どうしていまだに人々を不快にさせていないのかがわからない。
彼らは俺を成熟している、あるいは賢すぎると見て、『古い魂』という概念と結びつけているのだ。
時には、ありのままの俺を見てほしいと思っていた。
過去の思考を持つ、成熟した大人の人間として。
だが、それが俺を表していないこともあった。
俺は子供なのか、大人なのか?
わからない。
どう感じたらいいのかわからない。
わからないし、知りたくもない。
なぜ俺はこの世界に生まれたんだ?
もし神々が俺で何かを企んでいるのなら、言わせてもらうが、その通りにはならない。
こういうのを本当に望む人たちもいただろう。
俺はその誰でもない。
もし何かをしなければならないとしたら、それはただ、俺が大切に思う人たちを……生かしておきたい人たちを守るためだけだ。
利己的に聞こえるかもしれないが、気にはしない。
もう自分を英雄だとは見ていない。
それとも、そうなのか?
英雄とは、共感と、自分の能力への義務感から他の人々を助ける者のことだ。
俺は一度も英雄だったことはない。
前世で俺は弱者を守っていたが、そうしていた唯一の理由は、母の言葉に従うためだった。
誰に対しても共感など抱いたことはなかった。
【それを置いて、前に進め。何を持っていようと関係ない。そんな風に考え続けて、お前に何が残る?】
今になって、頭の中の声がまた俺に話しかけてきた。
(神々に遣わされたんだろ? ああ、そうだな。俺を説得してその手品に従わせ、計画のただの駒にするために。そんなものは求めていない)
頭にズキッとした痛みを感じた。
軽いものだが、反応のような。
【お前は何も知らない。私も何も知らない。私はお前のようだ。お前は私のようだ】
思った通りだ。
自分が『俺』だという同じ手段に訴えてくる。
本当に、この声には意味がなかった。
(お前は誰だ?)
完全な沈黙。
【私に名前はない……私は……私は在る。I am……アシャム。そう呼べ】
(ア……シャム?)
【英語の『I am』を使って作ったのだ】
(俺の知識も持っているのか?)
【Ich habe es】
(お前は何だ?)
【い……いや、わからない。私は誰だ、ヒカリ?】
(いや。お前は誰でもないはずだ。
俺はおかしくなりかけている。
お前は誰でもない。
俺は狂っている。いや、ずっとそうだった。
どれだけ足掻こうと、俺の精神は常にそうだった。
これはただ、俺の精神的な問題の産物で、そして……)
【考えてみろ。
光はお前のすべてを癒す。肉体的な外見だけでなく、精神も。
その上、『暁の目醒め』として、お前が何らかの病気を抱えることは不可能だ。だから統合失調症のようなものは無効化され、拒絶される。
私は、お前のマリアに対する家族としての感情と同じくらい、現実のものだ】
(嘘だ)
【嘘はつけない。お前がここに存在するために、私の一部が重要だった】
(何をした?)
【……】
(おい?)
完全な沈黙。
「くそっ……」
宿屋に入り、自分の部屋に閉じこもった。
---
そのまま眠りに落ちた。
「どれくらい寝た……? アシャムに全エネルギーを消耗させられた」
窓を見た。
夜だったが、もうすぐ夜明けだった。
窓に近づき、枠に寄りかかった。
「そんなに寝てたのか?」
窓を少し開けた。
庭から漂ってくる香りを感じた。
「ん? 誰がグリルを使ってるんだ?」
その時、誰なのか気がついた。
マリアだった。
彼女に違いないだろ?
だが……。
こんなに早く、グリルで何をしている?
マリアはいつももう少し遅い時間に朝食を準備していた。
靴を整え、ほとんど駆け足で外に出た。
庭へと続くドアを開けると、そこには彼女がいた。
ゼレニア以来見ていない肉を準備しながら、お茶か、あるいは酒と思われるものを飲んでいた。
「あら、息子よ。起きたのね。昨日着いたんだけど、寝かせておいたわよ。お腹空いた? ペコペコでしょうね」
「母さん……ごめん、すごく疲れてたんだ」
「ええ、あなたが何をしたかアメリアちゃんが教えてくれたわよ。森で迷子になるなんて。それがいいことだと思ってるの? あとでゆっくりお話しするわよ」
「迷子になったわけじゃない……ただ、もっと長くいて、狩りをより効果的にしたかっただけで……」
マリアは肉用のトングで俺を指差した。
「よく聞きなさい、このいたずらっ子。あなたが何をしたかは関係ないのよ。夜になってから帰ってきて、アメリアが怒るまで誰の言うことも聞かなかったんでしょう? だから、お話はあとよ」
「わかったよ……」
「愛してるわよ、息子。座りなさいね」
石の椅子に座り、テーブルに腕を乗せた。
思ったよりも長く、自分の手を見つめた。
震えていた。
手が揺れて、じっと止まってくれなかった。
その時、思わずお腹に手を当ててしまうほどの猛烈な空腹を感じた。その瞬間、マリアが肉の乗った皿を持ってきて、俺は何も考えずに食べ始めた。
「そうね、夕方から今までずっと寝ていて、夕食も食べてないんだから、ペコペコでしょうね。今ごろ気づいたの?」
「母さん……これ、すごく美味しいよ」
「船でもらったのよ。肉用の箱に『氷柱』の魔法陣を維持して使っていたから、こんないい状態で届いたのね」
「本当に、すごくいい味がするよ、母さん」
「うふふ、あなたが食べることにそんなに熱中してるの、初めて聞いたわね」
食べ終えて、彼女に皿を近づけた。
「あら? もっと? いいわよ、でもデザートの分は残しておきなさいね」
微笑んで、さらに二切れの肉を置いた。
「デザート? 何を持ってきたの?」
「ああ、ちょっとしたサプライズよ」
食べ終えた。
マリアは皿洗いに向かい、俺は自分の力を使ってグリルを掃除し続けた。
炎を操作して金属の棒に付着した脂を剥がし、その後、水を使って残ったカスを洗い流した。
極めて高い精度が要求される作業だった。
ほぼミリ単位の。
現実の世界なら、高圧洗浄機の助けがなければ事実上不可能なことだ。
機械を使ったとしても、これほど簡単にはいかないだろう。
「わあ。いつも感心させられるわね……それがまだあなたの本当の力じゃないなんて」
「あ、母さん、いたんだ」
「ええ」
マリアは両手に大きな箱を持っていて、それをテーブルの上に置いた。
「さあ、息子よ」
「もう? あっさりと?」
「そうよ、さあ開けて」
彼女を見ながら近づいた。
それを手に取り、見つめた。
リボンをほどき、周りを包む紙を破った。
木箱にはこう書かれていた。
『ジュリー・チョコレート ―― 生命は果実によって花開く』
「母さん……これは」
「ええ、あなたの思っている通りよ」
「本当に……?」
なぜそうなったのかはわからないが、俺は箱を抱きしめた。
今までにしたことがないほど強く抱きしめ、目を閉じて、頬をそれに押し当てた。
「ああ……息子よ、そんなことしないで、私まで泣いちゃうわ」
「ごめん、ただ……体が勝手に動いたんだ」
「ええ、わかってるわ。一つ食べてみたら?」
箱を開け、チョコレートを一つ取った。
丸い形で、ゴルフボールほどの大きさだった。
食べる前に、長い間それを見つめた。
素晴らしい出来だった。
少し溶けていたが、よく保たれていた。
この世界のチョコレートははるかに耐性があるが、同時に、扱うのが難しい。
「何を待っているの? 食べて、息子よ」
彼女を見て、本当に彼女を見つめてから、それを食べた。
目を閉じ、一口一口の味わいを心ゆくまで堪能した。
「家の味がする……」
これが、悲しむことなく思い出すということか?
これを食べると、美しい記憶が現れる。
ジュリエットがチョコレートを準備している瞬間。
悲しい瞬間など一度もなく、そんなものは微塵もない。
「えっ、ダイキ……息子よ、息子よ!」
奇妙な気分だ。
まるで家の味が美しくて、遠いものではないかのように。
このチョコレートは、ただ俺の口に届くためだけに、何キロも旅することを選んでくれた。
どんなに遠くへ行こうとも、風はいつも俺たちのところまでやって来る。
世界のどこにいようとも、思い出はいつも共にある。
悪い思い出しか持っていなければ、悪い人生になるだろう。だが……。
「息子ぉぉっ!」
素早く瞬きをして、辺りを見回した。
突如として風が強まった。
だが、俺には当たらなかった。
まるで、俺を避けることを決めたかのようだった。
「やったわね!」
何をやった……?
腕に風が巻きつくのを感じた。
「まさか……」
腕がどんどん重くなっていった。
「何を求めてるんだ……?」
その時、唯一思いついたことをした。
手を後ろに引き、全力で前へと放った。
まるで強大な敵がいて、誰かのみぞおちを掌底で打つかのように。
その瞬間、俺の後ろと腕に溜まっていた空気が前方へと放出された。
期待したほどではなかったが、すべての木々が激しく揺れた。
水と同じ原理を使って、再び風を引き寄せた。
それを半透明の球体に変え、強く握りしめた。
(これが風の制御だったのか?)
風が俺の手をすり抜け、指の間でほどけていくのを感じた。
これが、痛みなく思い出すということだ。
後ろを振り返り、美しいものを見つけ、
恐れることなくそれにしがみつくこと。
それは傷つけることのない記憶、
ただ、そこにとどまり続ける。
これが郷愁だ。
それは……。
確かに俺と共に生きている、俺の一部だ。




