第三十七話 【遠い男】
もうこれ以上、もうすぐ七歳になる身体に閉じ込められたままでいるわけにはいかない。
もうすぐというのは控えめな表現で、あと一週間で本当にその歳になる。
ルビーが来てから三ヶ月が経ち、状況は少し良くなった。マリアは以前とは違って明るくなり、顔を合わせるたびに、今までに見せたことのないような笑顔を浮かべる。
ここで過ごした十二ヶ月間を基準にしての「今まで」だが。
そしてこの期間で、水の制御も上達した。
完璧ではない。まだ失敗もあるし、コップに収まる以上の量を使おうとすると、水が四方八方に飛び散ってしまう。それでも完璧だった。
うまくいくからではなく、努力しているからだ。
それは、他の人たちと違って、俺にとってはプラスなことだった。
「今までしたことのなかった努力、か……」
そう呟くと、マリアがこっちを見た。
「ダイキ? 何か言った?」
「いや、なんでもない。大丈夫」
「そう。何かあったら言ってね」
そして去っていった。
(よかった……)
隠し事をするのは好きじゃなかった。何度も打ち明けようとしたが……どう言えばいい?
マリアは居場所をくれた。
本当のことを話すべきだが、その勇気が出ない。
マリアは、俺が七歳ではなく、九歳になると思っている。
そうしなければ、上位天恵であって暁の目醒めではないと信じてもらえなかったからだ。
母であるジュリエットが、俺のために空へ光を放つまであと七日。
ここからその輝きを見ることはできないが、それでも感じることはできる。
そして一つだけ言えるのは、そのことを考えると、久しぶりに心が温かくなるということだ。
アメリアは誕生日のために、いろいろと準備をしてくれている。
思っていた通り、この村の人たちは毎年誕生日を祝う習慣があり、アメリアもそれをすごく喜んでいた。
カリエという名前のカタツムリまで連れてくるらしい。
何より、俺のために何かを用意していると言っていた。
何だろうか。わからない。
気になるか? 少しは。
「一時的な秘密」というのはあまり好きではないが、無理に聞き出すわけにもいかない。そんなことをすれば、あのワクワクを台無しにしてしまう。
今はただ、訓練を続けるしかない。
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それは朝の訓練中に起きた。
マリアは朝早くから出かけ、ルビーも村の子供たちに無償の授業をしに行っていた。
もちろん、行くのは断った。
一人になれる唯一のチャンスだったからだ。
コン、コン。
「ん?」
扉に近づく。
「閉まってるよ」
コン、コン。
ため息をついて、扉を開けた。
「おっと、こんにちは。マリアはいるかな?」
その男は背が高く、頭の大部分を隠す帽子をかぶっており、髪が耳をすっぽりと覆い隠している。
緊張した様子で、唇を噛むようにしてこっちを見ていた。
なんだ、この人は?
「少し前に用事で出かけたけど」
「ああ、そんな……君は誰だい?」
「俺は……息子」
「子供がいたのか……なるほど」
よく見ると、ここまで旅をしてきたにしては、肌が異常なほど綺麗だった。
髪はプラチナグリーンの色をしている。
そして目も深い緑色だ。
「こうして見ると、確かに彼女に似てるね。少なくとも目は。落ち着いているところは? そこはあまり似てないかな」
「悪いけど、あんたが誰だか知らないんだけど」
「ごめん、名乗るのを忘れていたよ……ヤズミ・アゼニオだ」
「ああ……来たんだ」
まさか、目の前にいるのがあのヤズミだとは思わなかった。
マリアがヤズミを見たら、どう反応するだろうか。
喜ぶとは思えない。むしろ怒るだろうが、もしかしたら落ち着くかもしれない。
すべてはヤズミの行動次第だ。
もしここにとどまるつもりなら、許してもらえるかもしれない。
とはいえ、かなり複雑な恋愛模様だ。
おまけに、教会では罪と見なされている。
「風はいつも気まぐれなんだよ、少年。年月は関係ない、時には運命の場所へ運んでくれるんだ」
「そう」
「あの……中に入ってもいいかな? 外は暑いし、こういう急激な温度変化には慣れていなくてね」
「いいよ」
そう言うと、男は中に入り、テーブルの一つに腰を下ろした。
「あのね、少年。マリアに子供がいたこと自体は嫌じゃないんだ。むしろ彼女のために喜んでいる。でも、あんな風に去ってしまったことは後悔しているんだ。私にも責任があって、断れるような立場じゃなくて……」
「落ち着いて、ヤズミ。慌てても仕方ない」
「ああ、君の言う通りだ。気候の変化のせいで、どうも言葉に詰まってしまってね」
ヤズミは袋を取り出した。
中には果物と短剣が入っている。
果物の皮を剥き始めた。
「メンシェの果物は最高だね……ん……もっと持ってくるべきだったな」
「ねえ、ヤズミ。ここに一人にしておいてもいい? 物を壊さなくても、マリアが怒るかもしれないから」
「ああ、うん。大丈夫だよ。えっと、一つ聞きたいんだけど、今マリアは誰かと付き合っているのかい?」
「父親が最初は一緒にいるのを許さなくて、引き離されたんだ。数年後、父親が死んで一人になった。それからマリアがまた見つけてくれただけ」
「ああ、それは辛かったね……それに、私を怖がっていないようだ」
「怖い?」
「マリアは私のことをなんて言っていた?」
妖精だということをすっかり忘れていた。
だからこその、この独特な髪と綺麗すぎる肌だ。
「妖精だって」
「だから、怖くないのかい?」
「怖い? なんで妖精を怖がる必要があるんだ?」
「いや、なんでもない。君の言う通りだ。『なぜ』なんて理由はないね。ただ驚いただけだよ。君の母親でさえ怯えていたからね。滅多なことでは怖がらない人なのに」
ヤズミは帽子を取り、耳を見せた。エルフやゴブリンほど尖ってはいないが、人間のものとは違っていた。隠す必要があるくらいには、十分に異なっている。
「それに、今度は私が怖がっている番だ」
ヤズミはそう言いながら、帽子をテーブルの上に置く。
「私を見たら、あの女性が何をしてくるか……マリアもそうだし、姉のルビーもね」
「一つ聞いてもいい?」
ヤズミは瞬きをしてこっちを見た。
数秒後、頷く。
「どうして戻ってこようと思ったんだ? 何年も経ってから、また来たいと思った理由は?」
「まあ、それは子供が聞くべきことじゃないし、私にもあまり時間はない。ただ、もう一度会いたかったんだ。マリアが……無事かどうかを確かめるためにね」
「なるほど。それなら、『休暇』が与えられるくらい、王族に深刻な何かが起きたってことだな? 王女に何かあったのか?」
「ああ……いや、王女には何も起きていない。王妃の方だ。でも言った通り、君には話せない」
「わかった」
「礼儀正しい子でよかったよ。王女にもぜひ君の話をしよう。落ち着いた男の子が好きでね、だいたい君と同じくらいの年齢なんだ」
それ以上何も言わなかった。
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数時間後。
食堂に戻ると、ヤズミは眠っていた。果物は一つも残っておらず、どうやらすべて片付けたようだ。床まで綺麗になっている。
どうやらマリアはまだ戻っていないらしい。いつものことだ。数時間かかることもあれば、夜遅くや、ひどい時には翌日になることもある。だが、もうそろそろ帰ってくるはずだ。
マリアの仕事は、近くの森を監視し、そこに棲む魔物が近づかないようにすることだ。自ら進んでやっているため報酬は一切受け取らないが、少なくとも食事は受け取っている。
仕事で家を空けることには慣れているし、宿屋も今は閉まっているから、特にやるべきこともない。それに、ルビーがいつも来てくれるし、アメリアも母親が作ったご飯を持ってきてくれる。
起こすために近づいた。
眠っていること自体はどうでもよかったが、マリアが帰ってきた時に、宿屋のテーブルに顔を伏せて寝ている見知らぬ男を見て大騒ぎになるのだけは避けたかった。
単なる合理主義だ。
「おい、ヤズミ。起きろ」
少し揺する。
「ダイキ! 私の後ろに!」
背後から鋭い声が聞こえた。
マリアだった。
「マリア……」
「いいから。こっちへ来て」
従う。
「ん、少年……どうしたんだい?」
マリアは腕を掴み、自分の背後に庇うように立たせた。
「ダイキ、どうして見知らぬ人を中に入れてるの?」
「俺は……」
ヤズミがゆっくりと目を開け、その視線がマリアで止まる。
まるで時が止まったかのように、目を丸く見開いたまま固まった。
「マリア……君なのか?」
「え? 嘘……そんなはずない」
マリアの腕が少し下がるのが見えた。
掴む手が緩み、背筋がわずかに伸びる。
「ヤズミ? あなたなの?」
二人は全く同じ質問をぶつけ合った。
「マリア……やあ」
ヤズミは弾かれたように椅子から立ち上がり、髪を整えた。
そして、ほんの少しだけ距離を詰める。
「なんでそんなに背が高くなってるの?」
不意に、マリアの口から出た最初の言葉がそれだった。
ヤズミは彼女よりも十五センチほど背が高い。
「まあ、私たちの種族はある日突然成長するものだし、それに訓練とか……」
「ヤズミ。一つ聞いてもいい?」
マリアの声は少し震えていた。
「どうして無駄な希望なんて持たせたの? また会えるって言ったのに……もちろん、寿命の長い妖精にとっては八年なんてあっという間かもしれないけど、人間にとっては長すぎるわ……上位天恵になれば二百年は生きられるかもしれないけど、時間の感覚が変わるわけじゃない……十代から大人になる時間を過ごすのなら、なおさらよ」
ああ、こんな場には居合わせたくない。
「本当にすまない。信じてほしい、戻ろうとはしたんだ。でも無理だった。この間、ずっとアヤメ王女の護衛をしていたんだ。育つまで仕え続け、やっと『休暇』とやらをもらえたばかりなんだ」
ヤズミは一瞬、こっちを見た。
「それに、この話は別の場所でした方がいい。場所を変えられないか、マリア……?」
「言いたいことがあるなら、私のダイキの前で言いなさい」
「わかった……待って、ダイキ? その名前……」
「話してくれたら、私からも話すことがあるから」
ヤズミにすべて話すつもりか?
当然、年齢を言えば、明らかな時系列の矛盾にヤズミは気づくだろう。
村の人たちは、似たような境遇の女性が何人かいたため、マリアが若くして母親になったのだと思い込んでいる。
だが、ヤズミは別の時期、別の状況の彼女を知っている。すぐに勘づくに違いない。
ヤズミはついにため息をついた。
「わかった。君の息子の前で話そう」
椅子に腰を下ろす。
マリアはただ腕を組んで立っている。
「言うべきことを言って」
ヤズミは自分の胸を叩き、ようやく口を開いた。
「いいだろう。これから話すことは機密事項だ。いや、完全な機密というわけではないが……フェイリュウの外には知られていない。アラジエル王の妻が亡くなった。少なくとも、表向きにはそう知られている……そして王は喪に服している。そうなると、使用人たちは『解放』され、アラジエルは自身のオーラを放って、すべての妖精に宮殿に立ち入らないよう命令を下すんだ」
どうやら、王というのはただの肩書きではないらしい。自らの種族すべてに命令を下せるような、何らかの繋がりを持っているのだろう。
それほどの力があるなら、王である理由も、ヤズミがはるばるここまで旅してきた理由も頷ける。
ヤズミは指でテーブルを叩き始めた。
「この喪に服す期間が永遠に続くわけじゃない。実際、近いうちにまた呼び戻される気がしている。何せ、私は彼にとって最高の戦士であり、実質的な右腕だからね。今のところ、幼い王女は私を叔父のように慕ってくれていて、それが王の機嫌を『少しだけ』取るのに役立っているようだ。とはいえ、王の娘への態度はどこかおかしいが」
マリアは軽く瞬きをした。
「おかしい? それってどういうこと、ヤズミ?」
ヤズミはテーブルを叩くのをやめた。
「わからない。前よりも冷たくて、少し残酷なんだ。娘だって悲しんでいるのに、気にも留めていない様子だ。慰めるどころか、『お前には何の価値もない』とか、話しかけるなとまで言っている。護衛である私には、ただ見守ることしかできない。一番腹立たしいのは、もし王ではなくただの男だったなら、確実に殴り飛ばしていたということだ」
マリアが俺の髪を撫でていた。
「だったら、どうして殴らないの?」
「マリア、君も知ってるだろう。妖精は王に危害を加えることができない。王が一声命じればそれで終わりだからだ。それなのに、自分の娘に護衛を必要としている。なぜだと思う? オーラは妖精にしか効かないからだ。皮肉な話だよ、あれほど強大な力を持っているのに」
その王女、アヤメ。
どうして同情しているんだ?
似たような経験をしたから、感情移入しているのだろう。
両親を失った時、誰も俺のことなど気にかけてくれず、ただ遠ざけられるだけだった。
三ヶ月ごとに開かれる合同の夕食会やパーティー、誕生日の時も。
だが、アヤメとは違い、それはすべて俺の責任だった。
そんな目に遭っているのは自らの選択のせいではなく、世界と、父親と呼ぶ男の残酷さのせいだ。
だから、俺とは違う。
勢いよく扉が開いた。
「えっ?」
ヤズミが驚いて身をすくめる。
振り返る。
そこにはルビーがいた。
「き、君がルビーだね?」
ルビーはゆっくりとした足取りで近づき、ヤズミを鋭く睨みつけた。
「よくも。彼女を。ボロボロにしておいて。来られたわね?」
ヤズミはカウンターの裏へと逃げ込んだ。
馬鹿馬鹿しい光景だが、気持ちはわかる……。
「姉さん。待って」
ルビーはピタリと立ち止まる。
「ヤズミは来られなかっただけなの。それだけよ」
確かに。
王から宮殿を離れず、娘を守るように命じられていたのだろう。
それで、場はほんの少しだけ落ち着いた。
それほどではないが、少しだけ。
ルビーは依然として怒りに満ちた目で睨みつけていたが、それ以上近づこうとはしなかった。
太陽が沈もうとしていた。
その時、光が二人の顔を照らし出す。
束の間の幸せを、確かに見た。
「マリア……幼い王女が大人になれば、私はここに来て一緒に過ごすことができる。あと数年だけ待ってほしい……もう無駄な期待はさせない。『すぐに』とは言わないが、少なくとも『その時が来る』とだけは約束する。そして、君が上位天恵で本当によかった」
そう言って、二人は手を取り合い、額を合わせた。
どうやら、時間が感情の痕跡を完全に消し去ることはないらしい。
ああ、俺は本当にそんなことを思ったのか?




