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空明の再誕 - 生きる理由を取り戻すために  作者: 日和秋彦
第3章:炎

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第三十六話 【生きることを学ぶ】

 前世では、単なる問題児では済まされない存在だった。


 あまり語りたくはないが、避けられないことでもある。

 時折、過去について自問自答することがあった。そんな時、あの声を必要としているにもかかわらず、決して現れはしなかった。


 勅令のせいでゼレニアから逃げ出した時、あの声は暁の目醒めと共に消え去ったのだと思っていた。迫り来る光の啓示のための、単なる導き手に過ぎないのだと。

 実際のところ、その神秘的な光の声は、頭の中に響く声と同じだった。

 だが、違ったのだ。


 孤児院にいた頃は、静かな子供だった。あまりにも静かすぎた。誰からも好かれないし、自分から状況を改善しようともしなかった。

 文字通り、施設で一番年長の子供となり、十八歳になった時には新宿の建設会社で働いていた。


 腕力があり、頭も切れ、見た目以上に有能だった。

 現場での作業を楽にするため、密かに力を使って資材を軽くしていた。そのおかげで、誰も本当の理由を理解していなかったが、やることはすべて良い結果を生んだ。


 作業員たちからは確かに好かれていたが、話しかけてくることは決してなかった。

 どう接すればいいのか分からなかったからかもしれない。

 恐れられていたからかもしれない。

 あるいは、自分自身の檻のせいだったのだろう。他人が入ってくるのを拒み、同時に自分自身が外に出ることも許さない、あの檻の。


 ああ、考えすぎても意味がない。

 ただ、あの世界で唯一価値のあったこと、つまり機械になることにおいて、異常なほど優秀だっただけだ。


 人間になること? それは違う。

 文句も言わず、どんな契約も引き受ける。

 そして今、再びその機会を得ている。だが今回は、感情を抱き、効率を拒絶する機会だ。

 あるいは、単にマリアやジュリエットのような人たちと出会う必要があっただけなのかもしれない。岩のような殻など気にせず、ただの抱擁一つで突き破ってくれる人たちと。


 面倒なことだ。


 感じるのに、理由が分からない。

 求めているのに、何なのか分からない。

 考えているのに、何を考えているのか分からない。


 どうすればいい?


 ただ、試し続けるしかない。

 これまでやってきたように。

 そして、何度も同じ問いを繰り返すのはやめるんだ。


「ああ……そうするべきだ」


 ---


 面白いことに気づいたのは、朝のことだった。


 ジュリエットの記憶やマリアの突飛な行動が引き起こす感覚を再現すれば、周囲の風を導くことができる。風力を上げたり、致命的なものに変えたりするわけではない。ただ、導くだけだ。


 足元から髪の毛まで、風を上昇させてみる。まだ微かなものだが、それでも進歩には違いない。


 問題は、記憶だけでは完全な感覚にアクセスできないことだ。今のところは、毎日少しずつやっていくしかない。ルビーが来る前の八ヶ月間、再現できることなど知る由もなく、ただ何か違うものを探そうと費やしてきた。それでも、まだ現実的とは言えない。


 だからこそ、アレクシオとの稽古を思い出しながら、剣の修練に明け暮れていた。


 手作りの訓練用人形の急所を突くという、集中力を要する鍛錬の最中だった。グラスを片手に持ったルビーが、俺を止めたのは。


「これ、飲んでちょうだい、ダイキくん。フルーツジュースよ。自分で作ったの」

「でも……」

「文句は言わないの。マリアに見られるかもしれないわよ。あの人、飲み物を断られるとどうなるか知ってるでしょ?」

「分かった……悪い」


 ジュースは思っていたよりも美味しい。ルビーはただ微笑みながらこっちを見つめている。膝に肘を突き、片手に頬を乗せながら、わずかに眉を上げて。


 なぜそんな風に見るのか聞きたかったが、今は放っておくのが一番だ。

 もしそれで、こういう時間がもっと増えるなら、何も知らないままでもいい。


「ねえ、ダイキ。頭を撫でてもいいかしら?」

「あぁ……好きにすればいい」


 近づいてきて、その通りにする。


「言っておきたいことがいくつかあったの。何よりも、生まれてきてくれてありがとうって。唐突に聞こえるかもしれないけれど、本当に妹を幸せにしてくれたし、この宿に欠けていた温もりをもたらしてくれたわ。もちろん、本当のお母さんのことは気の毒に思ってる。私より年下だったけれど、自分の母親のように慕っていたから。でも、あの時逃げたのは最善の選択だったわ。悲しいことだけど、必要なことだったのよ。あなたは強い子ね、ダイキ」


 答える前に、しばらくその顔を見つめた。

 いつものように、ため息をつくことしかできない。


「強い子供なんかじゃない。助けてくれた人たちのおかげで、手段を得られただけの人間だ。船は俺のものじゃないし、難破したところを老人に救われた。そして今はマリアが……。ただ運が……」


 髪を撫で続ける手が止まることはない。

 何も言わないが、注意深くこっちを観察している。


「シーッ……足跡について話したこと、覚えてる? たとえそう感じていたとしても、思っている以上に、彼らのために多くのことをしたのよ。あの盗賊たちだって倒せたはずでしょ? でも、ここに来なければ、マリアは永遠に孤独から立ち直れなかっただろうし、私もあの子のそんな姿を見てこんなに幸せな気持ちにはなれなかったわ」

「分かった……あんな言い方をして悪かった」


 絶対的な真実を口にしていた。他の考え方などできるはずがない。同じように感じ続けているのだから、前言を撤回することもできない。理解はできないが、すべき唯一のことは、ルビーを嫌な気持ちにさせないことだけだ。


「さて、ダイキくん。少し授業を受けてみない?」

「でも、休暇中じゃないのか?」

「ええ、そうね。でも夏よりずっと早く来てしまったし、本当のところ、教えたくてうずうずしていたの。それに……誕生日まであとどれくらい?」

「夏の初めだから、だいたい二ヶ月くらいだ。もっとも、数日前に変更したけどな」

「そう。お母さん、これから毎年あなたのために何かするそうね……空に光を放って、それが消えていくような」


(本当にそんなことをするつもりなのか……?)


 母は俺が生きていることを知っている。世界のどこかにいると分かっているのに、こっちが見てくれることを願って空に光を放つほど悲しんでいるのだ。

 だが知らないのだ。あまりにも遠くにいて、鷹の眼を使うこともできず、何より、それを見るために近づくことすらできないということを。


 それは完璧なアリバイにもなる。

 毎年、長男の死を悼んで空に光を放つ打ち砕かれた母親を、王が疑うはずもない。

 もし自分が本当に人間なら、こういうことを完全に理解できるはずだ。


 一方で。

 それは何年にもわたって絶え間ない記憶となり、再び会える保証などどこにもない。

 エリザベスの場合、存在しない兄ではなく、幻の兄とともに育つことになるだろう。


 他の家族なら、兄がいたこと自体を隠してそれで終わりにするだろう。

 だが、それでは不可能だ。俺は生きていて、再び会う可能性は高いのだから。


 ただ感謝することしかできない、エリザベス。

 生まれてきてくれて、前へ進む理由になってくれて。

 孤独を感じないように、そしておそらく、より良い自分になれるように。

 なにしろ俺が最初の子供で……赤ん坊の世話において、両親がどれだけ未熟だったかは明らかだったのだから。


「本当にありがとう、妹よ」


 ……


「何か言った、ダイくん?」


 振り返ると、アメリアが友達と一緒に待っていた。

 今回は、兄の姿はない。


「アメリア、ずいぶん大きくなったわね!」


 ルビーはすぐに立ち上がり、歩み寄る。


「ルビーさんなの? すごく大きくなったでしょ!?」

「ええ、すごく成長したわね。お母さんは元気?」

「ちょっと怒ってる。突然見捨てられたって言ってたよ」

「あはは、相変わらず大げさね」

「大げさかどうかは分からないけど……二人って姉妹みたいでしょ? お母さん、いつもルビーさんのために祈ってるよ」

「そう。じゃあ、後で会いに行ってみるわ。甥っ子のこと、よろしく頼むわね?」

「お世話なんて必要ないと思うけど、分かった!」


 そう言い残し、ルビーは立ち去った。


「行こ、ダイくん? 湖に行くの」

「ああ、行こう」


 ---


 アメリアは岸辺に座り込み、足と体の一部を水に浸している。

 他の子供たちのように、水の中には入っていなかった。


 湖は、それ自体が美しい。

 底まではっきりと見えるほど透き通っている。


「アメリア、他の奴らと一緒に泳がないのか?」


 水から上がり、隣に座る。


「たぶん、その必要がないからだよ、ダイくん」

「そうか」


 アメリアは振り向き、腕の上に顔を乗せた。


「ダイくんは、自分がちっぽけだって感じたことある?」

「いつだってそうだ」

「星って何なのかな? あんなに遠くにあって……死んだら、星のところへ行くんだよ。すごいと思わない? おばあちゃんがどこにいるのか知りたいな」

「幸せで、後悔のない最期だったのか?」

「うん。お母さんが言うには、すごく強い人で、自分の問題を世界や他人のせいにしたりは絶対しなかったんだって。おじいちゃんと結婚してからは良い人生だったって自覚してて、最後の日々は他の人を助けることに費やしたらしいよ。もっとおばあちゃんのこと知りたかったな……お父さんやお母さんの話からだけじゃなくて。でも、どうにもならないよね」


 答える前に、一瞬横顔を見る。


「ああ、どうにもならない。だが……」


 代わりに前に進むことはできる。

 口に出すのは難しいことじゃない。

 ただ言え、ダイキ。


「……その人たちのために前に進むことはできる。いつか同じ場所へ行くのなら、誇りに思ってもらえるようにしなきゃならない。そう思わないか?」


 アメリアは柔らかく笑い、腕に口元を隠す。


「ダイくんって、言葉の選び方がすごいよね。おじいちゃんが話してくれる物語よりも……カラスのニュースの嘘よりもずっと」

「少し調子に乗っただけだ」

「もしそうだとしても、すごいよ」


 また笑って、膝を抱え込み、その間に顔を隠した。


 この世界では、ニュースはカラスを通して届けられる。

 人間の言葉でメッセージを伝えると、そのまま飛び去っていく。

 長距離の連絡には大いに役立つが、すべては生きて到着できるかどうかにかかっている。

 だからこそ森を避け、夜にしか移動しないのだ。


「ああ……そうかもしれないな……」


 深呼吸をする。

 その瞬間、手元で何かが泡立った。

 視線を向けると、小さな水泡が右手に浮かび、こっちの動き一つ一つに合わせてついてきている。


(えっ?)


 反射的に手を動かすと、水泡が弾けた。

 それと同時に、水鉄砲のような水流がアメリアに向かって一直線に飛んでいく。


「ダ、ダイくん? 何してるの!?」


 答えはしない。

 ただじっと見つめていた。

 怒ってはいない。

 声とは裏腹に、その楽しげな態度はまったく別のことを物語っている。


「あ……そういうことするんだ……」


 アメリアは立ち上がり、水をかけ始める。

 当然ながらやり返さないので、結局やめて、再び座り込んだ。


「もう、ダイくんの勝ち。ダイくんを怒らせるのって簡単じゃないね。カイロスなんて、息を吹きかけるだけですぐ怒るのに」


 その瞬間、耳に届いたのは、自分自身の気づきだけだった。


 やるべきことは、元素の制御を取り戻すことにある。だが、今度は違う方法でだ。

 以前は、何年もかけて語り合い、理解することに費やしてきた。

 しかし今は、新しい方法を学ばなければならない。直接的な制御を。


 ---


 部屋に戻り、金属製のグラスを見つめる。


 このグラスには、すべての元素が含まれている。

 鍛造するために使われた火でさえも。


 それでも、見ているだけでは何も感じられない。


 何かを起こそうとしたが、グラスは小さなテーブルの上に鎮座したままだ。

 何の応答もない。何の反応もない。


「今日動いたのなら、どうやってやったんだ? 家族のことなんて考えてもいなかったのに……」


 ゆっくりと腕を伸ばす。


「もし本当に機能するなら、あの湖にいた時のように、穏やかでいるのが理想なんだろう?」


 火は、苛立ちの中から生まれた。

 風は、嘆くのではなく、思い出し、大切にしようとした時に現れた。

 そして今、水は、湖畔での穏やかな会話の後に現れたように思える。


 もし、共感なのだとしたら?

 あるいは、思考を超えた状態での、他者との繋がりなのかもしれない。

 明確な答えはなかったが、突き止める必要があった。


 あの元素たちがそうなら、土はどうなる?


 もう一度グラスに近づく。


 あの時は楽しかった。たぶん、それを考えればいい。理由を分析するのはやめて、アメリアとの語らいという心地よい記憶に身を委ねるんだ。そうすれば、ようやく何かを成し遂げられるかもしれない。


 目を閉じる。


「ダイくん! ダイくん!」


 その記憶が、即座に脳裏を叩く。


 目を開ける。


 グラスの中の水が震え、泡立ち始めた。まるで、同じ形に留まることに飽き飽きしているかのように。


 その時、繋がりを感じた。手から糸が伸びているような。正確には違うが、似たような感覚だ。長い棒で何かを支え、それが自分の腕の延長であるかのように錯覚する感覚。


 そこで、手を上に向けて動かしてみる。


 水がグラスの上へと昇り始めた。


「やったか……」


 ただ見つめていた。グラスの水が少しずつ一点に集まり、完璧な球形になるのを。水は宙に浮いている。そして手を動かすと、水も一緒に動いた。


 どう説明すればいいのか分からないが、やり方は分かっている。

 まるで、ずっと自分の一部であったかのように。


 とはいえ、初めてだったからかもしれない。本能、そして何より人間の性質は、考え始めるまでは素晴らしいことを成し遂げる傾向にある。しかし、考えた途端に、思っていたよりも複雑だったことに気づくのだ。


 そして今、唯一の疑問は、なぜ水が最初にできたのかということだった。アメリアとのあの瞬間、何がそこまで響いたのだろうか。


 ちっぽけだと言ったあの言葉のせいだろうか?

 それとも、昔からの友達を前にして、よそ者に個人的なことを話してくれたからだろうか?


 この村に来てから七ヶ月、ゼレニアを離れてから九ヶ月が経っていたとしても。


「分からないが、悪くない」


 わずかな動きで、水を手元に引き寄せる。


 動かす時の感覚を再現する。

 何千もの泡が手足を駆け巡るかのように。


 そうすると、水の形が変わった。より不規則な形へと。


「うーん……」


 ボールを持っている様子をシミュレートすると、水は再び水泡の形に戻る。


 思っていたほど複雑ではないが、今のところは息が詰まるような作業だ。

 シミュレートしようとすることは、感じることとは違うと言わんばかりに。そして、それこそがまさに今起きていることだった。


 自分の能力を超えたことをしようとするのは、簡単に使える力ではないことの十分な証明だった。火の時点でさえそうだったのだから、他の元素がどうなるのか見当もつかない。


 ---


 最初の週は、全く同じ量の水を動かすことだけに費やした。少しずつ動きは自然になり、最終的には様々な形に変えられるようになる。


 四角、三角、ひし形、球、螺旋、円柱、さらには辛うじて形を保っているような歪な図形まで。


 どれであろうと問題ではない。水は常に適応し、こっちも共に適応できるからだ。


 本質的に、すべての元素の中で最も適応力が高く、扱いやすいものだった。水は一定の元素であり、岩を砕き、火を窒息させ、空気を内に包み込むことができる。だがそれでも、絶え間ない型と、何より命令を必要とする。


 奇妙なことだ。あらゆる元素の中で最も一定なのは土だというのに、繋がりを一切感じられない。何か起きないかと数え切れないほど触れてみたが、何も起こらなかった。


 その一週間、あのグラスの水だけに集中し、他には何もしなかった。まるでそれができる唯一のことであるかのように。

 だが、そんなことはない。まだ火と風が残っている。


 攻撃性と執着。


 どうすればいい?


 より良い結果を得たいのなら、理解し始めなければならない。

 より良い人間になるために。

 そして何より、力を制御するために。


 そう……

 本当の意味で生き始めるために。


 第3章完:炎


 ここまで読んでいただきありがとうございます。


 これにて第三章は終了となります。


 逃亡の旅は終わり、自由を感じる時が来ました。


 次章/次巻:風

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