第二十四話 【故郷は遠く】
男は話し続けた。自分の人生について、特に自身とその後悔について多くを語る。
会話の中で少しずつ心を開いていったが、他の多くの面では固く閉ざしたままだった。
宗教によれば、死期を悟ったなら、自分のこれまでの人生をすべて語る必要があるらしい。
義務ではないが、大半の人間を怖がらせるような、ある迷信が存在するのだ。
もしそうしなければ、秘密を打ち明けないまま後悔を抱えて天国へ行くことになり、そこには何の救いもなく、結果として転生してしまうかもしれないというものだ。
そこから古い魂が生まれる。
転生するということは、別の動物として生まれ変わる可能性があると言われている。もう同じ自分ではない。
基本的には、少しばかり経験を積んだだけの新しい存在になり、もう自分ではなくなる。
失った者たちともう二度と会えなくなる。
だから、男はあんな様子なのだ。
「俺の力は、結局俺を全員から孤立させた」
「わかる。たとえ便利な力だとしても、それに伴う他のすべての意味も理解してる」
「わかるだと? まあ、そうだな。お前の言う通りだ。たとえ便利でも、人はお前に存在しないものを求める。そして時には、お前自身もそうしてしまうんだ」
その最後の言葉は、完全に心に突き刺さった。
違和感を覚えたからでも、間違っていると思ったからでもない。
それどころか、完全に同意していた。
「あんたの言う通りだ」
その男はオソリオといった。
ずっと昔、自分の能力を使って奇妙な感染症から村を救ったと説明してくれた。だが、本来起こるべきだったこととは裏腹に、人々は敵対した。力を理解できなかったため、そもそもオソリオが皆を病気にしたのだと思い込んだのだ。
またしても、ただ善いことをしたかっただけの人間に対して、世界は理不尽だ。
「人は勝手に思い込む。ないはずのものを探すんだ……それに、未知への恐怖が一番厄介だ」
未知への恐怖……。
死ぬ前に抱いていたのは、その恐怖だったのか?
力を使えば、調べられる。
そうだ。
この男が言っていることと同じだ。
「どうして別の場所へ行かなかった? ゼレニアは常に医者を求めている。人が多すぎるし、必要とされているはずだ」
オソリオはしばらくこちらを見つめた。
何よりも、考え込んでいるようだった。
小さくため息をつき、口を開くまで視線を外さなかった。
「坊主。馬鹿げているのはわかっているが、俺はもうここを離れたくないんだ。もう遅い。それに、息子の墓を置いていきたくない」
くそっ。まだ生きているとばかり思っていた。
どうしてそんな風に思ったんだ。一番わかりきっていたことなのに。
子供を失うことより、もっとマシな何かに心がすがりたかったのかもしれない。
もう家族のことなんて考えたくなかったのかもしれない。
「悪い、まだ生きていると思っていた」
「どのみち、中位の天恵者である以上、俺より先に死ぬのを見届けることにはなっていただろうな」
「そうか」
「わからなくていい。ゴホッ、ゴホッ……人はそれぞれ、自分のやり方で生きるものだ」
息子を失い、人々を失い、おそらくは妻も、そして生きる気力すら失っただろうに、ここを離れようとしなかった。
立ち去ることは、失ったものを受け入れることにもなるからだ。
そして、失ったものを受け入れてしまえば、前に進む気力はさらに失われてしまう。
それは、思っている以上の強さを持つということだ。
俺がやったことと似たような強さ。
全員を守るために、立ち去ること……。
「俺は家族を守るために出てきた」
ついに口に出した。思っていた以上に、その言葉は重くのしかかる。
「あん?」
「前に、ここで何をしてるのか聞いたよな。今それに答えたんだ」
「子供が家族を守るために逃げ出したってのか?」
「狂ってるよ。ああ。でも、他にどうしようもなかった」
選択肢なんてなかった。
密かに鍛練を積んだとしても、勝てる見込みはなかった。
ケイランは、もう一人の暁の目醒めだ。
そして今、あいつはもっと質の高い訓練を受けることになる……。
だが、アレクシオに言われたことがあった。
確か……。
「本には真実が書かれていることもあれば、嘘が書かれていることもある。それは事実だ。だが、常に現実を語るとは限らないというのもまた、否定できない事実だ。金があろうがなかろうが、その気になれば何者かにだってなれるし、生存本能でさえそれを促してくる」
今まさに、俺を突き動かしている生存本能だ。
気づけば、その言葉を声に出していた。
「いい言葉だな。以前、確かヤズミという少年がいてな。すごく妙な名前だが……。ずっと前にここを通り過ぎたんだが、並外れた奴だったよ。放浪者でな。じっと落ち着くこともなく、植物ばかり食ってた……。色んなことを教わったし、俺の力も奴には効かなかった。時々、知り合いの少女について話していたが、多くは語らなかったな」
(その名前、何かの記憶に引っかかるな……)
何かを口にするより先に、男は激しく咳き込んだ。
「俺が上位の目醒めだったら、こんな状況にはなっていなかっただろうな。もう変えたいとも思わないが」
その時、単純な考えが頭に浮かんだ。
「オソリオ。一つ考えがある。方法があるんだ」
男は少し目を細め、注意深くこちらを見る。
「どういう意味だ、坊主?」
丸太から立ち上がった。
「その病気を全部、俺に移すってのはどうだ。上位の天恵者である俺なら、接触した瞬間に病気は死滅する。そうすれば、あんたはまた助かるだろ?」
言葉のあと、ただ沈黙だけが落ちた。
聞こえるのは、焚き火のパチパチという音と、木が燃える音だけだ。
頷いてくれることを期待していた。
立ち上がり、その力を解放してくれることを。
「坊主」
だが、そうはしなかった。そのままの姿勢で動かない。
「俺はもう、十分すぎるほど生きた。もし回復してしまえば、もっと生きることになる。もっと生きれば、ここに居続けたいという気持ちはさらに薄れていく。俺はもう気力が尽きたんだよ、坊主。それに、お前にすべてを話したからな、これで安らかに逝ける気がする」
なんだって……? 諦めたのか?
「聞いて悪かった。他に方法はないのか?」
「ああ。方法はない。俺を理解してくれる奴なんてそうはいない。それに、俺はひどく頑固だからな。ただの子供のお前にこんなことを言ってすまないが、嘘をつくこともできないんだ」
ただの子供……自分がそうであることを時々忘れてしまう。
「じゃあ、これからどうするつもりだ?」
「目を閉じるまで、海を眺めるさ。俺にできるのはそれだけだ」
オソリオは丸太の中から何かを取り出す。素朴なギターだった。
そして、温もりを感じるメロディーを弾き始めた。
「これで……俺にはこれが一番いい」
何も言わなかった。
言えなかった。
そのメロディーを前に、思考が停止する。
男はささやくように歌っていた。
息子へ捧げるように……。
「もうすぐお前に会いに行く、何があっても、お前のそばに……」
そして、終わった。
ギターは使い古されていた。チューニングもずれている。
いくつかのコードは音が外れていたが……。
胸の奥に響くメロディーだった。ジュリエットと、あのチョコレートを思い出させるようなメロディー。
また会いたいよ、ママ。
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オソリオは見捨てられた村にある小屋の一つを提供してくれた。
音楽のあと、村へと案内してくれた。
「ここだ。ゴホッ、ゴホッ……古いチューリップ。その病気が来る前は……ここにチューリップがたくさん咲いていたから、そういう名前がついたんだ。昔は美しかったが、今は、まあ……いつものように、雑草が場所を奪っちまった」
何十年も人が住んでいないにもかかわらず、村はよく手入れされていた。
まるで誰かが、途方もない時間をかけて、ずっとこの場所を維持してきたかのように。
そして、その誰かとは……。
「維持することに決めたんだ。ここは退屈だからな。だから、失われた家を一つ一つ取り戻したかったんだ」
小屋を提供してくれた時、そう言っていた。
「坊主、名前は何ていうんだ?」
しばらく彼を見つめた。
「ダ……」
その名前は言えない。
ダリアンだとは名乗れない。
俺の名前は、この世界に一つしかないから。
母が「ダリウス」と名付けたくなくて、
とっさに変えて作られた名前だ。
ここが忘れ去られた村だとはわかっているが、噂はすぐに広まる可能性がある。
「ダイキ。俺の名前はダイキだ」
「ダイキ……? 変わった名前だな。あの男みたいだ」
大いなる輝き……。
本気でこんな名前を選んだのか、俺は?
それから、男は俺の髪のひと房を指さした。
「おい、坊主。お前、前からそんな赤い髪の房があったか?」
「赤い……髪の房?」
「ああ、見てみろ。鏡を探せ。どこかにあるはずだ」
小屋に入った。
鏡は割れていたが、まだ大きな破片が残っていた。
自分を見ると……。
ああ。
左側に、赤い髪の房があった。
どうしてだ……?
事故の血がこびりついているのかと思って確かめてみたが、そんな痕跡はなかった。
明確な境目はなかった。
根元から赤く染まっていた。
天恵者だからだろうか……?
鏡の破片を手にしたまま外へ出た。
「ああ、そうだった。母も同じだったんだ。癖っ毛みたいなもんで。家系の遺伝だ」
「ああ、なるほどな……だが、驚いているように見えたぞ」
「ああ、それは……自分には一生現れないと思ってたからだ。でも、ここにあった」
誤魔化すように、その髪の房に触れた。
焦っていた。
もしこれが暁の目醒めの兆候だとしたら、思っていた以上に危険な状況にいる……。
「まあいい。何かあれば言え。上位の天恵者なら、かなり食うんだろうな」
男はいくつか言葉を残して立ち去った。
夜になれば、肉と自分で育てていた野菜を少し持ってきてくれるらしい。
それから毛布も。必要ないと言ったのだが、どうしてもと譲らなかった。
さらに、剣の砥石まで渡してくれた。
石を手に取り、作業を始める。
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「これでいいか……」
剣をよく見る。前よりずっと良くなっている。
今の剣には、独自の輝きがあった。
そこに、歪んだ自分の顔が反射して見える。
コンコン。
「俺だ。飯を持ってきたぞ」
外に出ると、棒に吊るされた豚と、数匹の巨大なリスがあった。
「あんた……一人で狩ったのか? 言ってくれればよかったのに」
「いや、洞窟に追い込む罠だ。効果的でな」
「なるほど」
飯は美味かった。本当に美味かった。
体が求めていた肉の量は、相当なものだった。
「お前、六歳だったよな?」
「ああ、六歳だ」
「十五歳の奴みたいに食うな。驚きだ」
答えず、ただ黙々と食べ続けた。
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最後は、焚き火の炎の前に一人残された。
男は再び浜辺へと向かっていった。引き留めはしなかった。
どうせ引き留められなかっただろう。
炎を見つめる。その光が自分の瞳にどう反射しているかを想像した。
それから、赤い髪の房に触れた。俺の目と、目の前にある炎と同じ色。
すべてを奪ったのと同じ炎が、今は俺に温もりを与えている。
時々、自分にこの元素から力を与えられる資格があるのか疑問に思う。
もう話しかけてこない。
もう関わろうとはしない。だが……。
自分の顔を思いきり叩いた。
「明日……出発する」
もう数回叩く。必要なことだった。
すぐ色々なことに迷ってしまうからだ。集中しなくてはならない。
「ダイキ坊主」
振り返る。オソリオが戻ってきていた。
「言い忘れていた。明日出発するのか? この近く……まあ、森を抜けた先にエルピダという場所がある。そこへ行くといい。宿もあるし、ここよりよっぽど快適に過ごせるはずだ」
そう言うと、また去っていった。
エルピダ?
どこで聞いた名前だっけ?
覚えている……。
いや、違う。きっと何かの本で読んだだけだ。
どうして思い出せない?
いつもなら全部覚えているのに。
思い出した。
エルピダは……。
(ゼレニアからずっと遠く離れた場所だ)
ルビーの村へ行かなきゃならないのか?




