序章 【彼らが見せないもの】
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「我々の勝利のようだな、息子よ」
優雅で冷徹な声が、セラフェル家の跡取りであるダリアン・セラフェルの敗北について、七歳になる息子に語りかけている。
相手が幼かろうが、無邪気であろうが関係ない。
ダリアンとケイランは世界の覇者となり得る存在だ。そして今、この予期せぬ襲撃により、その座は息子だけのものとなり、自らの地位も永遠に保証される。
だが、それを自分の目で確かめなければならなかった。
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セラフェルの屋敷を包み込む寒気は、手で触れられそうなほどだ。巨大な暖炉や魔法陣の暖房でさえ、和らげることができない。まるで何かの気配のようだった。説明はつかない……いや、誰も説明などしたくなかったのだ。
セラフェル家の偉大なる家長であり、これまで一族に最大の貢献をもたらしてきたヴァレリウスは、生涯最大の悲劇の淵に沈んでいる。
息子の喪失。
半身をもがれたように打ち砕かれ、何をしても己のすべてであった存在を取り戻せないと悟っている。赤ん坊の頃から泣くこともなく、魂を見透かすような瞳で見つめてきた、才能あふれる素晴らしい息子。ずっと愛してきた。
その時から、アエリウスや兄が抱いた、父親になるという感情を理解した。そして今……息子を失うということがどういうことかを、思い知っている。
ジュリエットは慰めようとした。まだ時間はある、探しに行くこともできると……。だが、もうどうすることもできない。もしそのような捜索を行い、ダリアンが戻ってきたと知られれば、法令によって判決が下され、戦争は避けられない。
そんな真似をすれば、ダリアンに許されないだけでなく、一族全体を危険に晒すことになる。軽々しく冒せるリスクではない。どれほどの富を誇る一族であろうと、誰にでも弱点はあるのだ。
息子の腕が切断される間、傍に付き添うことができるほど強い女性でありながら、ジュリエットは今日一日、ベッドから起き上がれずにいる。ほんの少しでも笑顔にするものがあるとすれば、それは胎内で育ちつつある、新しい命の存在だけだった。
「今日、国王陛下があの子に会いにいらっしゃるわ……。心の準備はできているかしら、ヴァレリウス」
あの法令を下した張本人が、厚顔無恥にもこの場にやって来る。感情を爆発させ、王に詰め寄りたかった。だができるのは、ただ口を閉ざし、余計な関与を避けながら最善の対処法を探ることだけだ。そのためには、まず戦略を練らなければならない。
「このような事態への心構えなど、できるはずがない……。精神が酷く不安定だ。まともに振る舞える自信がない」
「無理しなくていいのよ。あなたの気持ちは痛いほどわかるわ。だって、今の私たちは……息子を失って壊れてしまった、ただの親なのだから。そうでしょう?」
ヴァレリウスはゆっくりと抱き寄せ、妻の髪に顔を埋めた。
突然コービンが現れ、胸に拳を当てた。
「ヴァレリウス様、ジュリエット様。陛下が会議室でお待ちでございます」
「ありがとう、コービン。下がってくれ」
「失礼いたします」
コービンでさえ、内心は打ちのめされている。その冷静な仮面の下には、甥を失ったひとりの叔父の姿がある。それでも、平静を保たねばならない。
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広い会議室では、テラン王がリズミカルに剣を叩きながら、室内を値踏みするように見回している。
傍らにいる幼いケイランは、苛立った様子で床を蹴っていた。
巨大な扉が開かれる。
一気に室内の温度が下がった。
「ヴァレリウス卿、ジュリエット夫人。達者な姿を見られて、余も嬉しく思うぞ……」
二人は答えず、ただ凍りついたように立ち尽くした。目の前にいるのは、ダリアンを追い詰めた元凶。あの忌々しい法令のせいだ。だが、その怒りは呑み込まなければならない。
息が詰まるような空気の重さを無視し、王は気にする素振りも見せない。椅子に腰を下ろすと、目の前の状況を冷徹に計算し、分析し始める。
正式な当主となる前は『白狼』の名で知られていた並外れた男、ヴァレリウス。まるで砕けたガラスの上を歩いているかのように、あるいは無限の旋風の中にいるかのように、重く苦しげな足取りで進み出た。乱れた白い髪が、今の状態を何よりも物語っている。
隣で腕を支えているのはジュリエットだ。かつて光に満ちていた瞳は赤く腫れ上がり、ただ深い悲しみだけを映し出している。
(何があろうと……最大の障害は、もはや盤上にはない)
剣を叩く指を止め、テーブルに両手を置きながら、王は内心でほくそ笑んだ。
「ヴァレリウス、ジュリエット。悲しみの中、余を迎え入れてくれたことに感謝する」
その声は絹のように滑らかでありながら、黄金のように仰々しい。
「今日は若きダリアンに会いに来たのだ。余の息子であるケイランがな……」
王は傍らの少年を指し示す。しかし、当の少年はまったく話を聞いておらず、隣の暖炉で揺れる炎をじっと見つめていた。まるでその炎が、何かを思い出させるかのように。
「次期当主に会いたがっていてな。何しろ、いずれは我が息子と共に光耀の宮廷を歩む運命にあるのだからな」
ヴァレリウスは、王が座る席の数歩手前で足を止める。
「申し訳ありません、陛下。ですが……もう遅すぎました。わざわざお越しいただいたことには感謝いたしますが、すべては終わったのです」
「遅すぎた、とは……? どういう意味であろうか。腕に傷を負い、命を救うために切断したと聞いておったが、まさか……」
「ええ、そのように伝えられました。ですが……あの子は……すでに毒が回っていたのです」
ヴァレリウスは口元を覆った。息子が死んだと言おうとしたが、どうしても言葉が出ない。喉が完全に塞がってしまったのだ。
「あの子……あの子は……」
「あの子の小さな体では、耐えきれなかったのです……。そして……眠りにつきました。二度と、目を覚ますことはありません……」
結局、それを言葉にしたのはジュリエットだった。気丈に振る舞おうとしていたが、口にした言葉の意味を自覚した瞬間、気を失いそうになる。
すぐさま夫に抱きとめられた。自分がどれほど打ちひしがれて見えようと、もはやどうでもよかった。ヴァレリウスにとって死という言葉を口にするのは絶対不可能であり、それはジュリエットにとっても同じだ。
テラン・カリエノス二世は、二人の言葉に嘘が混じっていないか探ろうとする。
言葉以上に真実を暴き出す、不自然で異様な瞬き。
嘘を隠す者特有の、視線の揺れや手の動き……しかし、何も見つからない。嘘の痕跡など、微塵もなかった。
「それは……なんという痛ましいことだ。このような時に、軽率に喜びを示すような発言をしたことを謝罪しよう。順調に回復しているものとばかり思い込んでおり、これでようやく、息子にふさわしい対等な友ができると期待していたのだ。我が子を失う悲しみは、余にもわかる。心から哀悼の意を表する」
誰に対しても決して頭を下げることのない王が、二人の前で深く一礼した。その瞬間、顔が視界から消え……王の唇は、歪な笑みの形に吊り上がった。
(運命は余に味方している。感謝するぞ、女神よ。神聖なる後継者を授けてくれたばかりか、忌々しい競争相手まで排除してくれたのだからな)
王は心の中で歓喜する。
「女神アテが、光の野にて彼に永遠の安らぎを与えたまわんことを。そして、星の試練を乗り越えられんことを祈っておるぞ」
そう言い残し、王はその場を後にした。




