第十七話 【明かされざる秘密】
完全にやらかしてしまった。
いや、そこまでではないが、雨は降り始めてから少しもやまない。むしろ勢いを増し、暗い色は薄れたものの水量は増え、それでもやむ気配はなかった。
その時、エミリアがなだめようとしてくれた。
「心配しないで、ダリアン……」
母のことを考え、仕事で魔法を使ったせいで怒られるかもしれないと気にしているのを、エミリアは察していた。絶対に魔法を使わないようにと注意されていたのだ。
「パパとママ、怒ると思う?」
少し落ち着いてからそう尋ねる。
エミリアは答えなかった。ただ雨をじっと見つめている。
魔法の後で風呂に入っていたが、依然として自分の形をしたあの植え込みを見つめていた。
「ダリアンくん、何か言った?」
そう言って振り返り、こちらを見る。
「パパとママが怒るかもしれないって。この街に洪水対策のシステムがあるとしても、そういう問題じゃなくて……怒られるかも」
エミリアは後ろ手になり、前かがみになって片眉を上げると、小さく微笑んだ。
「私を助けてくれたなら、他のことは全部どうでもよくなると思うわ。それに、あなたがやったこと……」
「俺がやったこと?」
「ええ、永続魔法よ。すごいわ。本で読んだことがある気がするの。魔法を一定時間維持できる魔術師がいるって。でも、そういう人たちはすぐに疲れちゃうって言われていて……」
「エミリア……そう言われてみれば」
通常よりも多くのマナを送ってしまったのかもしれない……。あるいは、魔法が必要以上のものを引き出したのか、一部がうまくいかなかったのか、それとも『原点』が完全に空になっていなかったのか。
いや、魔法は成功した。
雲はもうそれほど暗くなく、雨は穏やかに降っている。雨脚は強いが、最初のような雷や稲妻はない。
「魔法の要求以上にマナを流し込んだだけかもしれない。だから疲れを感じないんだ。そのエネルギーはもう回復した。それでも、完全な答えは分からないけど」
エミリアは頷くだけで、再び植え込みに視線を戻した。
その時、足音が聞こえて振り返る。
「何かしら?」
廊下の先を見つめながら言う。
ネレアスが妻と一緒に歩いてくるのが見えた。
二人は……いや、今の俺には表情が何を意味しているのか判別できないから、何も語っていないように見えた。だが、ずぶ濡れだった。
「ああ、何があったのかもう耳に入ったみたいだね」
ネレアスの顔に笑みが浮かぶ。
「それについてだけど、ネレアス。この雨は俺の責任なんだ。魔法陣を描いたら……こうなった」
「本当かい? 何時間も続いているから、てっきり世界の摂理によるものだと思っていたよ。それは……」
「必要以上のマナを注ぎ込んでしまったのかもしれない」
素早く言葉を挟んだ。嘘はつけなかったから、そうするしかなかった。
「そうか」
それだけだった。怒られはしなかった。
女性は何も言わず、これまでにないほど微笑んでいた。その眼差しはもはや悲しみではなく希望を語り、「子供が思春期の娘を助けられるわけがない」という思いは消え去っていた。
その後、二人は自分たちの娘を見た。
もはや部屋に引きこもっている者ではなく、自室に閉じこもるのをやめ、屋敷の廊下で背筋を伸ばして立っている十二歳の少女を。
「エミリア、何か食べない? 私、すごくお腹が空いちゃったわ」
「ええ、お母様。何があるの?」
「うーん、それは分からないわ。シェフが何を作るか見てみましょう」
ネレアスが前に出た。
「私が料理してもいいかい?」
「あなたが? 料理を?」
二人は同時にそう言った。
「ええと……ああ。少し習っていたんだ。それに……ジュリエットにアドバイスをもらったかもしれない」
ネレアスは近づきながらそう答えた。
「それじゃあ、行こうか?」
そして、こちらを見る。
「ダリくんも来る?」
「いや、ごめん、エミリア。少しやることがあるし、これ以上遅くなったらママが怒るかもしれないから……」
三人は頷いたが、ネレアスが一番早かった。
「ああ、そうだね。彼女を怒らせないほうがいい」
そうして、レオフル邸を後にした。
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帰って正解だったのだろうか?
はっきりとは分からない。
残っていたとしても何もできなかったから、帰ったところで大した影響はないはずだ。
それでも、廊下で振り返る前に、エミリアが両親へと駆け寄る足音を聞いた時、後で怒られることになったとしても、今日俺は何かを成し遂げたのだと確信した。
まあ、ああいう場面でできることは少ない。それもまた、挨拶もせずに帰ることを選んだ理由の一つだ……。
奇妙な感覚だ。
前世において、雨は俺の過ちの証であり、トラウマの象徴だった。機械になろうとしたこと、母の言葉に従い破滅に向かったこと、父の言葉を完全に無視したことの証。雨が嘲笑い、水が侮辱しているとすら思っていた。人生そのものが俺を拒絶し、だからこそ苦しめ続けているのだと。
今日までは。
エミリアにとって、それは啓示の瞬間だった。これで完全に癒えるわけではないだろうが、たとえ遠く離れているように感じても、感情が完全に消え去ることはないのだと気づくかもしれない。
毎年十月十四日、雨に打たれる時だけが、再び感情を抱くことを許される唯一の瞬間だった。そして同じ日、俺は死に、雨に打たれながらこの世界に転生した。
その時、母の姿が目に入り、思考はすべて吹き飛んだ。
「ママ……ただいま」
「ダリアン・セラフェル!」
本能的に肩がビクッと跳ねた。声があまりにも大きすぎた。
「こっちにいらっしゃい! 雨の中で何をしているの?」
「ママだって雨の……」
「口答えしないの、ダリアンちゃん!」
そばまで歩み寄り、ようやく雨をしのげる場所に入った。
説教を覚悟したが……母はしゃがみ込み、俺を抱きしめた。
「ああ、私の赤ちゃん……。あまり水に濡れちゃ駄目よ、風邪を引いてしまうわ」
「でも、気持ちのいい天気だし……」
「シッ、そんなの関係ないの。私が水に濡れちゃ駄目って言ったら、駄目なのよ」
「分かったよ、ママ……」
「さあ、入りましょう。お風呂に入って、チョコレートをあげるから」
そうして風呂に入り、ホットチョコレートを飲んだ。
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翌日、後味の悪い感覚とともに目を覚ました。
「うーん……珍しいな。起こされなかったのは初めてだ……」
初めて長々とあくびをし、惰性で腕を伸ばした。
目をこすり、少し髪を整えながら辺りを見回す。着替えを済ませてから、厨房へと降りていった。
「そんな……嘘だろ。本当にこう書いてあるのか?」
父が取り乱した声で話しているのが聞こえた。
(え?)
「ええ、そのせいでこんなことをするなんて思わなかったわ……でも、恐れていた通りになってしまった。これは恐怖を生むだけよ」
ゆっくりと近づく。
今回は、ただ一部を立ち聞きするだけで終わらせるつもりはなかった。
恐怖。
大陸最高の防衛力を誇る自治都市ゼレニアで、一体何が恐怖を生み出すというのだろうか……。
扉の隙間から覗き込んだ。
「テラン二世の息子が『暁の目醒め』かもしれないとは分かっていたが、それは王族以外には広まっていなかったはずだ。だが今は……王国中がそれを知っている。しかも、最悪なのはそこじゃない」
暁の……目醒め。
聞き間違いだろうか。
おとぎ話の……。
「あなた、それ自体は良いことじゃないの? どうしてそんな顔をするの? 別の目醒めが存在するはずないんだから、布告なんて大した問題じゃないわ」
「ジュリエット、言いたいことは分かるが、そういう問題じゃないんだ。同時代に別の目醒めが存在しないとしても、人々は恐怖を抱くし、偽の証言が出る可能性すらある。平和な世界を信じているのは知っているが、現実はそうじゃない……」
布告。
アレクシオから聞いたことがある。父はかつて反乱軍を震え上がらせ、近くの村を襲おうとしていた彼らを鎮圧したのだと。
その父が今、手紙を強く握りしめながら震えている。
会話は続いたが、それ以上有益な情報は得られなかった。
「ダリアン様?」
不意にかけられた声に、勢いよく振り返った。コービンだった。
そのまま後ろに倒れ込む。
厨房の扉が開いた。
「ダリアン? いつからそこに……?」
素早く床から起き上がり、服の埃を払った。
「ママ、知りたいんだ」
「知るって、何を?」
「ママ、お願いだ。知る必要があるんだ」
母は父を見て、それからこちらを見た。俺がそのことを忘れるか何かを期待するように、自分の右腕を掴んでいる。
「ママ。パパ。二人が隠していることが悪いことかもしれないのは分かってる。でも、俺はこの家の当主になれるかもしれないって言われた……なら、候補としてこういうことを知る権利があるはずだ。幼い頃から戦い方も勉強も教えてくれたのに、どうしてこれだけは教えてくれないの?」
やがて、母の肩の力が抜け、俺の目線に合わせてしゃがみ込んだ。
「あなたの言う通りね。私たちはとても偽善的な親だったわ。はぁ……仕方ないわね、うちにはとても賢い子がいるんだもの」
母は頭の上に手を伸ばし、額にキスをしてから立ち上がった。
父が近づいてきた。
「ダリアン」
「パパ」
「ほら。だが、大きくなってからこれを根に持たないでくれよ、いいな?」
こんな時でさえ、父は冗談を言う。
手紙を受け取り、読み始めた。
アントロポス王国の全臣民へ:
我が息子、ケイラン・カリエノスは『暁の目醒め』を得た。
この目醒めを、我が国の神官たちが記録する一般的な祝福と混同してはならない。神聖なる光による祝福は依然として存在するが、暁の目醒めは別物である。それは絶対的かつ不可逆であり、女神自身によって紡がれた運命の下に生まれた者にのみ授けられるものなのだ。
父としての余の誇りは計り知れないが、王としての義務はそれ以上に重い。
古の年代記には、世界は一世代につきただ一人の暁しか受け入れることができないと記されている。二番目の目醒めが時期尚早に起こる可能性は十分にあるが、それは現実の基盤を崩壊させ、次元の間に亀裂を生じさせ、運命の糸そのものを引き裂きかねない。
余は汝らの王としてだけではなく、これらの言葉が意味する重みを理解する一人の父としても語っているのである。
ある者にとっては称賛の的となるものが、別の者にとっては恐怖の原因となるであろう。
ゆえに、この先永遠に記憶されるよう、余はここに以下の通り布告する:
手紙を裏返した。
『第七年の勅令』
(大層な名前だ……)
アントロポス王国の全臣民へ:
七歳を迎える前に祝福を受け、かつ我が血筋に属さぬ子供はすべて、『暁の特異点』とみなされる。女神の予期せぬ異常であり、生命の秩序を破壊する者である。
そのような者たちは、ただ存在するだけで魔法の自然な循環を歪め、物質を変異させ、この世界を支配する法則を破壊し得る。彼らを『腐敗の脅威』と認定し、王の命により、その力が完全に目覚める前に処刑するものとする。王家の血筋のみが、破滅をもたらすことなく暁を宿すことができるのである。
女神の導きがあらんことを。そして、それを宿す運命にある者の上にのみ光が輝かんことを。
テラン・カリエノス二世、
アントロポス王国国王
なんだって……?
いや、待て。こんなの筋が通らない。
暁の目醒めがそれほど危険だというのなら……。
現実を崩壊させる。次元の間に亀裂を生じさせる。世界の均衡を腐敗させる。
どうして王族以外の時だけ、そんなことが起こるんだ?
王族には適性がないのかもしれない……彼らはただ、世界を守るためではなく、王を守るためにこうした布告を出す特権を持っているだけだ。王家の血を引かない別の子供がその目醒めを得るのを許すことは……自分の後継者と同等、あるいはそれ以上の存在を許すことに等しいのだから。
「ママ。パパ。教えてくれてありがとう」
「もっと色々知りたいんでしょう?」
少し考え込んだ。
答えが必要か? ああ、必要だ。
「目醒めって何? 暁の目醒めとはどう違うの?」
「ああ、それについては私はよく知らないのよ。パパは知ってるけど、こういう話をするのが苦手なのは知ってるでしょ? だから、落ち着いて読めるように本を用意しておいたわ。それでいいかしら?」
「うん、それでいいよ」
ああ、今はそれが最善だろう。




