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空明の再誕 - 生きる理由を取り戻すために  作者: 日和秋彦
第2章 - 光

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第十九話 【隠したもの】

 ひとつ分かったことがある。


「こんにちは、可愛い子」


 母はファクトゥーラスと、おかわりのホットチョコレートが載ったお盆を運んできた。


「こんにちは、母さん……」

「可愛い子、あなたのために用意したのよ。さあ、食べて」

「お腹空いてない……」

「食べなさい」


 これ以上抵抗しても無駄だと思い、お盆を受け取ってベッドの脇に置いた。


「母さん、一つ質問してもいい?」

「ええ、何かしら?」

「どうして全部隠していたの?」

「あなたはまだ子供だからよ。子供でいるうちは、どうしても知らされないことがあるの。今日勝てたのは私たちが偽善者だったからであって、毎回疑問に答えるわけじゃないわ。分かったかしら?」


 母は髪を撫でながら、ごく普通に答える。


「うん、分かった……もう一つ質問なんだけど、どうして王様はあんな議論を呼ぶような決断を下したと思う?」

「……んー、さっぱり分からないわね」

「そっか。それじゃあ……今までに目醒めの人に会ったことはある? つまり、暁の目醒めじゃない、普通の天恵者に」

「そうね……」


 ジュリエットが一度目を閉じ、息を吸い込んで再び目を開け、こちらを見るのが分かった。


「隠しておいても意味がないわね……いいわ。実はもう二人に会っているのよ。コービンさんとアレクシオさんだわ」

「本当に? コービンとアレクシオが? それなら納得だ……」


(……どうしてそんな大事なことを隠していたんだ?)


 目醒めは女神の光によって引き起こされる。神聖なものであり、当然ながらあの女神に関連している。

 この社会の大部分がその信仰に基づいているほど宗教的なものなのに、なぜ隠すことにしたのだろうか?


 赤ん坊の頃から、早く学ばせたがっていた。それも同じ理由なのだろうか?

 素質を見て、暁の目醒めだと思っているのかもしれない。だが、その素質は転生者だからだ。前世の記憶と経験を持ち、他の誰かの場所を奪って……。


 ……。


 今宿っているこの体は……本来の持ち主から奪い取ったものなのだろうか?


「納得って? 可愛い子、何を考えているの?」

「母さん、アレクシオのレベルはどれくらい?」

「剣術のこと?」

「ううん、天恵のほう……遅咲きか、中級か、それとも上級か……」

「ああ、それは直接聞いてみたらどうかしら?」


 母のその言葉を聞いて、探しに出た。


 ---


 アレクシオは妻のメラニーと共に、岩のそばに座っていた。


「あいつ、俺の背が高すぎて君には不釣り合いだって言ってきたんだ。酔っ払ってたから、指一本で小突いてやったよ」

「あなたったら、相手は酔ってたのに……でも、逆よ。私の方があなたに釣り合わない気がするわ」

「何言ってるんだい、メル? 君がいなかったら、俺の人生はまるで違うものになっていたさ」

「最近、やけにロマンチックね?」

「嫌だったか?」

「嬉しいわ。たまたまには言葉にするのも悪くないわね」


 何も言わなかった。

 二人の会話の邪魔をしたくなかったからだ。


「俺たちの生活が慌ただしいのは分かってるけど、ダリアンが成長していくのを見ていると、あんな子供が欲しくなってくるんだ」

「ア、アレクシオ……やっとそんなこと言ってくれた」

「想像してみろよ。小さなメラニーが芝生を走り回ってる姿を」


 その時、アレクシオが気配に気がついた。


「おや、ダリアン。いつからそこにいたんだ?」


 いつもなら確実に気配を見抜く男が……今回は気付かなかったのだ。


「今来たところ」

「そうか。何か用か? 今日は休みの日だから、訓練は無しだぞ」

「うん、一つ聞きたいことがあって。天恵者だって聞いたんだけど」


 アレクシオは妻を見やり、メラニーが肩をすくめると、二人は再びこちらへ視線を戻した。


「おっと、バレていたか……十歳になったら話すつもりだったんだが、王の息子の件で予定が狂ってしまったようだな」

「レベルはどれくらいなの……?」

「俺のレベル? ああ、そうだな。天恵を得たのは十歳の時だ」

「それってつまり、上級ってこと……」

「ああ、その通りだ」

「長生きするだけじゃなくて、固有の力も持ってるってことだよね? それって本当?」

「まあ、そうだな、持っている。役に立たない力だが……いや、役に立たないというのは語弊があるか。極めるまではそうだったが、もし他の奴が持っていたら、間違いなく役立たずな力だっただろうな」


 他の誰かの手に渡っていればおそらく無用の長物と化していたであろう、有用な力。

 だがアレクシオは何をやらせても天才だったからこそ、最大限に活かすことができたのだ。


 あの力が極められるという事実は、天恵者の固有の能力について多くのことを物語っていた。

 魔法陣も内部魔力の技術も使わない。

 全く異なる仕組みで機能しているのだ。

 本には書かれていなかったが、例の光と関係しているのだと睨んでいた。


「どんな力なの? 見せてくれない?」

「ほう、何かに興奮している姿を初めて見たな」


 アレクシオが立ち上がった。


「しばらく使っていなかったからな。少し感覚を思い出させてくれ」


 マントを脱いでメラニーに渡す。


「ストレッチは大事だぞ。特に、長期間使っていなかった時はな」


 ゆっくりと肩を動かし、大きな円を描くように回してから、深く息を吐き出した。


 周囲で空気が圧縮されるのを感じる。

 まるで、突然とてつもない重圧がのしかかったかのように。


 アレクシオは無言だったが、ようやく口を開いた瞬間、その重圧はあっという間に消え去った。


「俺の固有の力は、大きさを自由に変えられる不可視の盾だ。まあ、限界はあるがな」


 沈黙。

 再び空気が張り詰める。


「見えない盾?」

「ああ。じっとしている限り盾は維持されるし、どれだけダメージを受けても壊れない」

「無限……? それなら常に完璧な防御ってことだよね?」

「最高の力のように思えるが、そうでもない。じっとしていなければならないし、話すこともできない。だから喋ると周囲の空気が変わるんだ。飲食もできない上、エネルギーを消費するから、永久に使い続けるのは現実的じゃない。それに、もし敵が盾の大きさに気付けば、地面を直接攻撃して影響を与えたり、閉じ込めたりすることもできる……捕まったのもその手口さ」

「何のために使ってきたの? 剣の達人でもあるのに」


 アレクシオは顎に手を当てながら、記憶を辿るように少しの間だけ空を見上げた。


「ああ、だが本当に数えるほどしか使ってないな……じっとしているのは退屈だから、滅多に使わない。だが、新米の騎士だった頃は、他の奴らを守るために使っていた。一度、変化する魔物の群れが攻めてきた時に、橋を丸ごと一つ塞いだことがある。あいつらは水が嫌いだから、他に渡る手段がなかったんだ」


 水が嫌いな魔物?


「なるほど。そういうことならすごく役に立つけど、アレクシオは剣の達人だから、もうその力は必要ないんだね。でも、うまく組み合わせれば無敵になれるんじゃないかな……」

「問題はな、ダリアン。内部魔力と天恵者の力を同時には使えないってことだ。エネルギーの種類が違うから、どうしても待機時間が必要になる」


 それが完全に正しいとは思えない。

 エネルギーが違うからこそ可能なはずだ。だが、おそらく練習してこなかったか、必要性を感じなかっただけだろう。


 アレクシオは話を続けた。


 奴隷商人に誘拐されたのは、この力のせいだったらしい。

 はっきりとそう言ったわけではないが、「自由を奪われた」という言葉からそう解釈した。純真な子供に聞かせるには最も無難な言い回しだ……だが、俺は子供じゃない。


 両親を失った後、上級天恵者であるという理由だけで、自分の故郷の村から売り飛ばされたのだという。逃げ出そうとあらゆる手を尽くしたが無駄だった。その時、力が発動して完全に身動きが取れなくなってしまったからだ。


「初めて力が発動した時、動こうにも動けなかった……奴らも近づくことはできなかったが、実に狡猾だった。周りに檻を作り、エネルギーが尽きるのを待ったんだ。その日の終わりには、そこから連れ出されていたよ」


 人は、ほんのはした金や恐怖、あるいは未知への恐れだけで、どんなことでもやってのける。両親を亡くしたばかりの子供を売り飛ばすことすらも。


 それでも、大人になったアレクシオは自分を見捨てた村へ自ら足を運んだ。だが、そこで目にしたのは、村がすでに存在しない、もっと正確に言えば、すっかりもぬけの殻になっている光景だった。

 結局のところ、アレクシオを売った金は何の役にも立たなかったのだ。村は年月の経過に耐え切れず、滅びてしまったのだから。


「……昔の持ち物を探しに行ったんだが、木の板の下にまだ残っていたよ……ボロボロになった本と、クマのぬいぐるみがな。村の連中を憎む気にはなれなかった。ある意味、あいつらのおかげで祖父さんのところへ行くことになったんだからな」


 何か用事があるとかで、メラニーと共に立ち去る前に残した言葉はそれだった。


 ---


 もう一つの目的はコービンだった。


 偉大な戦士といったような素振りは見せていない。

 時折、人間離れした速さで動くことはあったが、やっていることはフレデオと同じ、家事に内部魔力を応用することだけ。たまに針を投げる冗談を言うくらいで……。


 従業員用の通路の一つで、ソファに座って本を読んでいるのを見つけた。


「コービン、一つ聞いてもいい?」

「ダリアン様、もちろんでございます」


 敬称を使わないよう何度も頼んでみたが、頑なに拒否するので無駄だった。それが彼の一部なのだと思い、無理に変えようとはしなくなった。他の者は身分や敬意からそうするが、コービンは心からそうしたいと感じているからこそ使っている。だから、こちらにできることはあまりない。

 もし無理に何かを押し付ければ、それは素のコービンを嫌っているのと同じことになってしまう。


「天恵者だってことは知ってる。急にこんなことを聞くのは困らせちゃうかもしれないけど、どうしても答えが知りたくて……」

「落ち着いてくださいませ、ダリアン様。ご心配には及びませんよ」

「力は、どんなものなの?」

「もし私の耳に関係する力だと思われていたのなら、それは違いますよ、ダリアン様。教えてください、あそこに何が見えますか?」


 視線を向けた。


「花瓶。花瓶が見えるよ」

「では、今は?」


 見ると……それはもう元の場所にはなかった。

 宙に浮き、やがてコービンの手元へと引き寄せられていったのだ。


「基本的には、触れずに物を動かすことができるのです」

「念動力?」

「上級天恵者とはいえ、制限は多いのですよ。例えば、自分の力で持ち上げられないものは浮かせられません。剣の腕を磨いて強くなれば規模も大きくなりますが、私には剣の才能もそれほどありませんしね。お気づきだったかもしれませんが、力を使う時はいつも手足が震えておりました……もっと凄い力になっていたかもしれませんが、若い頃に活用しきれなかったのです」


 制限付きの念動力。

 そして、活用しなければ、真の可能性は失われてしまう。


「教えてくれてありがとう。引き続き休んでいていいよ」

「休む、ですか? いいえ、ダリアン様。私は決して休んだりいたしません。今この瞬間も力は発動しておりまして、普段は人の手が届かないような屋敷の隅々まで掃除しているのです。だからこそ、王は私を雇い入れたのですよ」

「屋敷全体を……?」

「手が届きにくい場所だけでございます。他の場所は使用人たちがやってくれますからね」


 そう言われ、驚きながらその場を後にする。


 ---


 部屋に戻り、ノートを取り出して書き始めた。


 『 今日、重要なことを一つ確認した……アレクシオとコービンは上級天恵者だった。


 アレクシオの力は不可視の盾。

 動かない限り実質的に無敵だが、そこに問題がある。

 それでも、橋を丸ごと塞ぐなど、大規模なことにも使っていた。

 それが子供の頃に捕まった原因でもある。

 彼の力は完璧ではないが、彼自身がそれを有用なものにしたのだ。


 コービンは触れずに物を動かせる。

 念動力。明確な限界があり、自分の身体で持ち上げられるものしか浮かせられない。若い頃に活用しきれなかったと言っていたが、それでも動かずに仕事をするために、常に力を使い続けている。

 彼は本当に、決して休まないのだ』


 指先で鉛筆を回した。


(ずっと前から、天恵者だったのか……)


 他に、何を隠しているんだろうか?

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