sideロン①
恋人とデート中に月を見て思い出した。
月が2つ…
ああ、そうだ。ここはゲームの世界だ。そして俺は主人公なんだなと。
前世で姉と一緒にはまっていたゲーム。『選ばれし男─ロンの冒険─』
そして、俺の腕の中でうっとりとした表情で俺を見つめるミカ。前世で一番好きだったキャラだ。ミカにハマリ過ぎて、小遣い全部をミカグッズに使っていたくらい好きだった。信じられない。あのミカとこうして過ごしてるなんて。
俺はどんな女性に言い寄られてもミカだけにする。ゲームみたいにフラフラはしない。そう思っていたのに…
「別れましょ」
翌日、ミカから告げられたのは思いもよらない言葉だった。
え?ゲームと展開違わないか?俺がゲームの世界と気づいてしまったから展開変わった?
いやいや、恋人同士だ。ゲームに描かれなかっただけで、別れてくっついてを繰り返していたカップルだったかもしれない。
その後もミカに話しかけたり、誘ったりするが、つれない返事ばかりだった。しかし、俺の顔を見れば頬を赤らめているし、本気で嫌がっている風には見えない。俺は格好いいから、俺の事が好きな奴らに別れろと言われたのか?そいつらに嫌がらせとかされてる?そうか、そうに違いない。ミカは健気なキャラだしな。俺が守ってやらないと。
俺は、ますます張り切ってミカのそばにいる時間を増やしたが、一向に俺の胸に飛び来んで来ない。そのくせ、チラチラ俺の顔を盗み見てはポーっとした表情をしたり、頬を染めたりしている。お前、俺の事が好きだろ。いい加減、俺に落ちろ。俺も段々とイライラし始め、そろそろ俺の父である領主の権力を使って強制的に娶ろうかと思っていた矢先、父から呼び出しを受けた。
「勇者?」
父と一緒にいたのは、王都から来たという兵士だった。その兵士に、俺が勇者としての神託が下ったと聞かされたのだ。
ミカの事ばかり考えていたから、すっかり自分の役割を忘れていた。そうか、この時期に神託があったのか。
ん?ちょっと待て。今、行くとすると、ミカは俺を追いかけて来ないし、下手したら、俺がいない間に他の男と結婚してるかもしれない。
俺は兵士に、恋人がいる地を離れる訳にはいかないこと、どれだけ俺が恋人を好きか、もし恋人に何かあれば生きる気力も無くなる事などを語り、再度今は王都に行けないと告げた。
それからの俺は、なぜか数人に体を捕獲され馬車で無理矢理、王都まで運ばれたのだった。




