胸騒ぎ
仕事終わり、いつものように店をでると、いつも迎えに来ているロンの姿がなかった。
体調不良?いや、何かおかしい。妙な胸騒ぎを覚えながら家に戻ると、玄関先に馬車が停められていてママが玄関先で誰かと話をしていた。誰?王都の兵士の格好だわ。何かあったのかしら?
「ミカちゃん、大変よ!」
ママが私を見るなり叫んだ。
「貴女がミカか。王命が出ている。今から王都に来てもらおう」
一人の兵士が、立派な書状を見せながら言う。私は他の二人の兵士に両手をつかまれ、半ば無理矢理馬車に乗せられた。
「待って!何の用で!?」
「詳しい話は王都に着いてからだ」
ゲームにこんな展開なんてない。ミカは故郷でしか出てこない。ミカが選ばれるルートでも王都に行くなんてなかったはずだ。
私がロンと別れたから、世界線が変わったのかしら?だとしてもなぜ?
馬車には目張りがしてあり、外の景色が見えないようになっている。
私はどこかで間違えたのだろうか?王都に連れて行かれて何がおこるのだろう。とても怖い。パパに会えなかった…馬車に乗った後にママの何か叫ぶ声が聞こえた気がする…
パパとママの顔を思い出すと悲しくなる。
私は一人馬車の中で泣いていた。
※※
どのくらい乗せられていたのか分からない。
馬車で連れられ、王城に案内された私は、コインにある肖像画でしか見たことのない王様の前に連れ出され、兵士に跪くよう言われ跪いた。
「そなたがミカか。急な呼び立てで驚いたろう。そなたが勇者の恋人で間違いないか?」
「勇者?」
「おおう、まだ知らぬであったな。無理もない。急に神託が下ったのでな。まだ正式発表はないが、ルンザール地方のロンという青年だ」
「失礼ながら申し上げますが、わたくしには恋人はおりませんので、誰かとお間違えかと」
「…なるほど。ではロンを呼ぶように」
しばらくすると、縄で縛られ猿ぐつわをしたロンが兵士に連れらてやって来た。
「ロン!どうしてそんな格好!?」
私の姿を見たロンは、何か話しかけてくるが、猿ぐつわのせいで内容は全くわからない。
ロンの代わりに王様が答える。
「その者は勇者に選ばれたが、旅には出たくない、故郷を離れたくないと言い出してな。調べたところ、そなたの存在が関係するとわかった。ミカ、国の一大事だ。協力するのが義務でないか?」
「協力?…どうやって…」
どう協力すればいいの?ロンに魔王を倒しに行けって言えばいいの?でも無責任じゃない?だいたいゲームの中じゃ、勇者に選ばれるなんて名誉な事だから皆でお祝いして送り出してたし、ロンだって何の疑問ももたずに旅立って行ってたわ。
「勇者よ、この国の王として神に誓い約束しよう。旅から戻るまで、ミカは我が城で責任を持って保護する。結婚の書類も用意しよう。我が許可する。これより神官も呼ぶ。すぐにこの場で式を挙げよ。3日後の旅立ちの日まで、王城の一室を貸し与えるので二人で過ごすがよい。それでどうだ?魔王を倒す旅に行ってはくれぬか?」
驚いた事に、ロンは何度も頷いていた




