私の日常
「ただいま~」
帰宅すると、パパが夕食を食べていた。
「ママは?」
「裏の畑の水撒きしてるよ」
「そう」
ゲームには出てこなかったけど、私にも家族はいて、普通の生活を送っている。
ロンが勇者になった後も、ゲーム内ではこんな普通の暮らしを続けてたのかしら。ゲーム内の私はエンドロール後、どんな暮らしをしてたのかしら?ロンでない人と結婚したのかしら?
「そうだミカ、行商に来るレイさんにミカの嫁入り先の相談をしてるって話したろ?」
「え!レイさん、何か言ってた?」
「それが…レイさんが言うには、この地域はロン君がいるから難しいらしいんだ」
ロンを忘れるため、ずいぶん前から嫁に行きたいと両親に相談していて、色々と探してもらっているけど、ロンが私に夢中な事が有名過ぎるのと、ロンが地域で有名人すぎて、ロンを敵に回したくない理由から縁談が難しくなっている。
「違う地域なら、ありそうなの?」
「ミカは一人娘だし、あまり遠くに行かれたら、パパもママも寂しいよ」
そうだった。私は一人娘で大事にされてるんだった。パパの寂しそうな顔を見るのは私もつらい。
「ミカ、もうロン君でいいんじゃないか?領主様の血を引いてるし、実家の商売も上手くいってるみたいだし、悪い子にも思えない。それに、ロン君以上の男なんてなかなかいないぞ」
ロンの実家は大きな宿屋をしていて、地域の視察に来た領主が、ロンの母親を見初めて出来たのがロンというのは公然の秘密だ。領主様の家系にしか産まれない銀髪をしているのが何よりの証拠だろう。
今だに視察になると領主様はロンの実家に宿泊し、ロンが領主様を案内するという口実で、二人で馬乗りに行く姿も見られる。
「私には過ぎた人なのよ。勇者に選ばれるんじゃないかって噂もすごいじゃない?もし勇者に選ばれたらこの地域に帰らないわよ」
「そんな先の事まで心配しすぎじゃないか?それに、ミカがロン君に釣り合わないとは思わないぞ。ママに似てミカは美人さんだし、気立てもいい素敵な子だよ」
「もう!パパの親バカ」
パパの言うように、ロン以上の人はいない。なんたって主人公なのだ。でも、私は怖い。外の世界に出れば、素敵な女性達が沢山いて、きっと誰もがロンを好きになる。ゲームでは、一人を選んで終わりだったけど、ゲーム後の物語なんてわからない。その後に一人の人と添い遂げたかどうかも証明出来ないじゃない。あんな素敵なロンがモテないはずないだろうし、浮気もあるかもしれない。浮気の心配をしながら過ごすのはつらい。大好きなゲーム主人公に好かれて嬉しいけど、好き過ぎて不安も強い。
ロンのいない世界だったら良かったのに…




