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最強の鑑定士って誰のこと?~満腹ごはんで異世界生活~  作者: 港瀬つかさ
書籍27巻分

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トッピング色々、ホットケーキ祭りです

そりゃ、ヘルミーネがいたからそうなるよねという話。

 ルシア特製の調整粉を使えば、誰でも簡単に甘くて美味しいホットケーキが作れる。その事実を知った仲間達によって、本日のおやつはホットケーキに決定してしまっていた。いや、別に悠利(ゆうり)にも異論はないのだが。

 何故そうなったのか言えば、先日の採取訓練での一幕が原因だった。レオポルドが探し求めていた素材を手に入れるために、妖精を満足させなければいけなかった。その妖精が美味しいものを求めてきたので、悠利が試作で作っていたホットケーキを食べさせたのだ。

 そして、その現場に居合わせたヘルミーネを筆頭に、仲間達が今まで食べたことのないホットケーキを食べたい! という感じになってしまったのだ。なお、ルシア特製の調整粉の味は、料理祭のときにミニアメリカンドッグを作ったことで知っている。あの仄かな甘みを皆が覚えているのだ。

 皆が食べたいというのでおやつにホットケーキを作ることに決めた悠利は、せっかくだからと自分で焼いて焼きたてを食べる方向にすることにした。熱々のホットケーキはとても美味しいので。


「それでは、まず見本を一つ作っていきます」


 そう告げて、悠利は温めてあったフライパンの上に薄く油を引いて、ボウルの中のタネをお玉一杯分流し込んだ。これは調整粉に卵と牛乳を入れただけのものだ。基本のホットケーキの作り方みたいなものである。

 食堂のテーブルの上に卓上コンロを置き、その上にフライパンを置いて作業をしている。周囲には複数の卓上コンロとフライパンがスタンバイしてあり、タネを入れたボウルも複数ある。準備はバッチリだ。

 フライパンの上に載せた生地は、しばらくするとぷつぷつと気泡が出てくる。それを確認し、縁に火が通っているのを確認してから、フライ返しでひっくり返す。ポンッと軽やかにひっくり返すと、こんがりとした綺麗なきつね色が広がった。


「こんな感じで、気泡がぷつぷつ浮いてきたらひっくり返して反対も焼きます」

「はい! 大きさはどんな感じですか!」

「お好み焼きと一緒で、大きすぎたらひっくり返すの大変なので、お玉一杯分で作ってください。何度焼いても良いから」

「解った!」


 元気よく質問をしたレレイに、悠利は真面目な顔で告げた。実際レレイはお好み焼きで失敗したこともあるので、聞き分けが大変良かった。多分、お代わり自由という言葉が効いているのだろう。いっぱい食べられるなら、それで満足なのがレレイである。

 悠利の説明を聞いた仲間達は、それぞれフライパンに向き合ってホットケーキを焼き始める。流石に一人一台というわけにはいかないが、他人が焼いているところを見るのもそれはそれで楽しいらしい。わいわい言いながら焼いている。

 ……ただし、もうここは専用のフライパンを渡しておいた方が良いな、と言う悠利の判断で、ブルックとヘルミーネには一台ずつコンロとフライパンが渡されていた。スイーツ大好きなお二人である。他人に無自覚に圧を加える姿を防ぐための配慮でもあった。

 今も、手順が解ったのならばと真剣な顔でホットケーキを焼いている。一応、悠利の説明はちゃんと聞いていたので、大きなホットケーキを作ったりはしていない。彼らにとっては、大きいものを作るよりも、幾つでも食べられる方が魅力的なのかもしれない。

 とりあえず悠利は焼き上がったホットケーキをお皿に盛り付けると、てくてくとトッピングを置いてあるテーブルへと移動した。

 そう、本日のホットケーキ祭りは、自分でお好みのトッピングをして楽しむ仕様なのである。バターに蜂蜜、メイプルシロップなどの基本を抑えつつ、それ以外にも多種多様なジャムに生クリーム、シンプルなスライスチーズも用意してある。カットフルーツなどは用意も大変だし、食べるのも大変そうなので、今日はシンプルに何をかけるか、ぐらいのトッピングである。

 なお、何でチーズがあるのかと言われたら、甘いのが得意ではないラジのためである。バターだけでも良いが、チーズを載せることでその塩味でホットケーキの甘さも緩和されるのではないかと思ったわけである。……流石に、おやつだと言っているのにベーコンを用意するのは気が引けたので。

 甘塩っぱいという意味では、多分ベーコンも美味しいんだろうなぁと悠利は思う。ミニアメリカンドッグが美味しいのだから、多分美味しい。しかし、悠利の中でホットケーキは甘いおやつというイメージなので、用意したトッピングはそちら方面ばかりになっていた。

 そんな悠利が何を選んだかと言うと、まずはシンプルに食べたいと言うことでバターとメイプルシロップである。熱々のホットケーキにバターをひとかけ載せると、ホットケーキの熱でじゅわりと溶けて染みこんでいく。その上から、たらーっとメープルシロップをかけるのだ。

 蜂蜜でも美味しいが、何となくホットケーキにはメープルシロップだよね! みたいなノリだった。慣れ親しんだ味とはそういうものである。


「いただきます」


 手を合わせて食前の挨拶をすませてから、悠利は目の前のホットケーキにナイフを入れる。ホットケーキと言えばナイフとフォークで食べる、みたいな感じだった。実家でそういう風にして食べていたので。

 そっとナイフを入れれば、柔らかなホットケーキにすぅーっと吸い込まれていく。バターとメープルシロップを吸ったホットケーキを切れば、断面が見える。上からじんわりと染みこんだと解る色の違いを確認して、悠利は思わず笑顔になった。

 表面だけに味があるのではなく、中までしっかり染みこんでいるのを確認して嬉しくなったのだ。食べやすい一口サイズにカットすると、そのままフォークで口へと運ぶ。

 口の中に入れた瞬間に、ほかほかとした温かさと、バターの風味がぶわりと広がる。続いて、メープルシロップの上品でありながら奥深い甘さが届く。中までしっかりと染みこんでいる証明のように、生地を噛めば噛むほどにじゅわっと美味しさが広がるのが何とも言えない。

 思わずふにゃりとした顔になりつつ、悠利はもぐもぐとホットケーキを咀嚼する。熱々のホットケーキなので冷ましながらではあるが、その優しい甘さを堪能して幸せな気持ちになっていた。

 流石はルシアの調合してくれた調整粉と言うべきだろうか。卵と牛乳しか入れていないのに、上品な甘さのある良い生地に仕上がっている。素人が焼いてもきちんと膨らんでくれるのも含めて、この調整粉は本当に最高の品物だった。


「やっぱりこれ、売り出したら良い感じになりそうなんだよねぇ」


 ぽつりと悠利は呟く。この調整粉、ルシアと悠利が個人的にやりとりしているだけのものなのだ。公式に販売されてはいない。しかし、この美味しさならば店頭販売したら良い感じに売れそうな気はするのだ。

 ただ、そのためにはこの調整粉で何が作れるのかを周知する必要がある。使い道の解らない粉なんぞ、誰も使わないだろうから。そのためには、ルシアに店でこの調整粉で作ったスイーツを販売して貰うとかで知名度を上げる必要があるだろう。

 その辺りのことは悠利には専門外なので、時間のあるときにでもルシアと相談しようと思った。……お店で正式に販売されたら、悠利も気兼ねなく買うことが出来るので。

 そんな独り言を呟いている悠利をそっちのけで、仲間達はホットケーキで盛り上がっていた。お玉一杯分の大きさならば特に失敗することもなくひっくり返すことが出来るようで、あちらこちらで「出来たー!」という喜びの声が上がっている。

 トッピングに種類があるのも好評だった。一口にジャムと言っても、種類が沢山ある。それも、今日用意しているのはちょっぴり贅沢な果肉がゴロゴロしているタイプのジャムなのだ。今日のおやつは豪華だなーみたいな雰囲気があった。


「熱いから、冷ましてる間に二枚目を焼いても良い……?」

「解った。解ったから背後から圧をかけるな」

「圧はかけてないよー。クーレのが焼き上がったら、あたしの焼きたいってだけだもん」

「何か圧があるんだよ」


 いつも通りのじゃれ合いを繰り広げているレレイとクーレッシュ。猫舌のレレイは焼きたてほかほかのホットケーキを食べることが出来ない。ひとまずバターを塗り、蜂蜜をかけた状態で放置中だ。なので、冷めるまでの間にもう一枚焼いておきたいらしい。

 一緒に作業をしているロイリスとミルレインはお先にどうぞという反応なので、レレイは二人に向けてありがとうと笑顔でお礼を言っている。思いやりが満ちた実に微笑ましい光景だった。


「何味で食べるか迷ったけど、バターだけでもめっちゃ美味いな、これ」

「蜂蜜だけでも美味しいよ」

「けど、バターと蜂蜜とかだと、塩気もあって味に深みがある気がする」


 各々素直な感想を言い合いながら食べている見習い組の姿は、実に微笑ましい。ひとまずバターだけで食べているカミール。たっぷりの蜂蜜を染みこませて食べているヤック。バターをしっかりと溶かして塗り込んでから、蜂蜜も遠慮なく使っているウルグス。三者三様であるが、いずれも結論は美味しいというものだった。

 ふわふわのホットケーキは単体でも十分に美味しいが、そこに何らかの味付けを加えることで相乗効果で美味しくなっているように思えた。また、元々ふわふわしっとり食感ではあるが、蜂蜜やバターを染みこませるとよりしっとりして柔らかさが強調されているように思える。

 お互いにどういう食べ方がより美味しいだろうかと雑談をしている三人の傍らでは、マグが黙々とオレンジマーマレードを塗ったホットケーキを食べていた。口の小さいマグなので、小さめに切ってホットケーキを食べている。マーマレードは皮が入っているのもあって、甘味と酸味に仄かな苦みがあるのも特徴だ。それが良いアクセントになっているようだ。

 特にマグが暴走するほど食いつく要素はないのだが、ほんのり甘いホットケーキはお気に召したのか、割とご機嫌で食べていた。食べ終わったらお代わりをしそうな程度には気に入っているようだ。


「ラジ、それ、どんな感じ?」

「ん? あぁ、チーズの塩気が生地の甘さを和らげている気がするな。あと、焼きたての上に載せるとチーズが溶けて食感が楽しい」

「そう」


 甘いものが苦手なラジは、迷うことなくチーズをトッピングして食べていた。実はミニアメリカンドッグを食べることは出来たので、チーズを載せたら問題なく食べられるのではと当人も思ったらしい。悠利の目論見も当たっていた。

 熱々ほかほかの上にスライスチーズを載せたことにより、薄いスライスチーズはとろんとしている。ナイフとフォークで食べやすい大きさに切るときに、チーズが伸びるのがご愛敬である。

 食べてみれば、柔らかなホットケーキにチーズが絡んで、口の中で絶妙の調和を見せる。甘塩っぱいと言うほどではないのだが、チーズの風味がホットケーキの甘さを中和して、やや軽食っぽい雰囲気を出していた。少なくともラジの口には合っている。

 そしてアロールは、ひとまずシンプルにオレンジジャムでホットケーキを食べていたのだが、チーズがどういう風になるのか気になったらしい。彼女はチーズが大好きなのだ。だからラジも、質問されても疑問に思わず返答しているのである。

 ラジの説明を聞いたアロールは、ありがとうと告げてホットケーキを食べる。きっと、お代わりをするときにはチーズを載せるのだろう。まだ十歳児のアロールはそんなに沢山食べることは出来ないけれど、好物があるのでお代わりをしようと考えているようだった。

「んー! 美味しいー!」


 幸せを堪能していると解る声が聞こえた。嬉しそうにホットケーキを頬張っているのは、ヘルミーネである。果肉ゴロゴロのイチゴジャムを載せたホットケーキを食べながら、ご満悦の表情である。

 特筆すべきは、食べながらお代わり分をフライパンで焼いているところであろうか。ちなみに、一枚は既に焼き上がって別の皿に入れてある。次々食べられるようにという感じだった。

 ヘルミーネは別に大食漢ではない。しかし、彼女は甘いものは別腹を地で行くタイプだった。美味しい美味しい甘味であれば、普段の胃袋の許容量など何のそのと言わんばかりに沢山食べるのだ。今日もホットケーキを堪能するつもり満々である。

 そもそも、食べる前から美味しいのを彼女は知っていた。ルシアが作った調整粉を使って作っているという段階で、美味しいことは保障されているというのが彼女の持論である。あながち否定出来ない。ルシアさんは凄腕のパティシエさんである。

 そのヘルミーネの隣では、ブルックが重ねたホットケーキをもりもりと食べていた。勿論、お代わり分はフライパンでスタンバイしている。一枚ずつ食べている皆に対して、二枚重ねて食べると言う贅沢なことをしているのがブルックであった。

 バターをどちらにも塗り、下のホットケーキには蜂蜜を、上のホットケーキにはオレンジマーマレードを塗っている。そうすることで、上下のホットケーキをまとめて食べることで、二つの味を堪能できるということらしい。大きく開けた口に二枚のホットケーキを入れる姿は、ちょっと見応えがある。

 具体的に言うと、まるで吸い込まれるようにホットケーキが消えていくからだ。ブルックは見た目は細マッチョという感じなのだが、クランきっての大食漢である。それは、彼の正体が竜人種(バハムーン)という人と竜の姿を併せ持つ種族だからかもしれない。しかも彼はスイーツ大好きなので、ホットケーキを大量に食べるのは当然かもしれない。

 もはや、ブルックが次から次へとホットケーキを食べていようと、誰も気にしていなかった。というか、自分が食べる方に集中していると言う方が正しいかもしれない。人によっては、自分で焼くという行程を楽しんでいるようでもあった。

 そんな中、やっと冷めたホットケーキを堪能したレレイが、満面の笑みを浮かべて悠利の元へとやってきた。


「ユーリ、これ美味しいね!」

「お気に召したようで何よりです」

「これ、この間ミニアメリカンドッグ作ったときのやつだよね?」

「そうだよ」


 味に覚えがあったのか、レレイはそんな風に質問してきた。間違っていないので悠利は肯定する。そんな悠利に、レレイは大真面目な顔をして問いかけた。


「じゃあ、もしかして、他にも美味しいおやつ作れたりするの……?」

「……何でこういうときは勘が鋭いの、レレイ」

「やっぱり! ミニアメリカンドッグになって、ホットケーキにもなるなら、きっと他にも何かあると思ったんだー。今度それも食べさせてね!」

「まぁ、出来る範囲でね」

「うん!」


 食べることが大好きだからこそか、こういう勘はとても働くレレイだった。確かに他にもお手軽に作れるおやつはあるので、悠利も否定はしない。一口カステラとか、ドーナツとか、ミニアメリカンドッグのように中に色々なものを入れたものとか。具体例を出さないのは、聞き耳を立てているだろうスイーツ同盟の二人を警戒してだった。

 おやつはあくまでもおやつだ。日々のご飯が優先されるのは当然のこと。準備に手間がかかる手作りお菓子を、ご飯よりも優先しろとはレレイは言わない。レレイは美味しいものは何でも好きなので。


「ところで、レレイは何で食べたの?」

「えっとね、とりあえず生クリームをドーンって載せてみた! 美味しかった!」

「それに行くかなーとは思ってたけど」

「予測されてた!? ユーリ凄いね!」


 自分の行動が予測されてたことに、レレイは驚いたような顔をした。ちなみに悠利がレレイのトッピングが生クリームと予想していたのは、それが一番ボリューム満点だからである。食べ応えを求めそうだなと思ったので。

 なお、熱々の状態で載せると生クリームが溶けてしまう可能性があるのだが、レレイは猫舌だ。ホットケーキがちゃんと冷めてから生クリームをたっぷり盛り付けたので、柔らかい生クリームを堪能できたのである。ホットケーキの優しい甘さと、生クリームの牛乳の風味が絶妙なバランスだったという。

 そんなレレイに、悠利は厳かな表情で告げた。


「ちなみに、生クリームとジャムの組み合わせも美味しいと思うよ。お腹膨れるけど」

「それ美味しそう! 試してくるね!」


 良いことを教えて貰ったと、お代わりのホットケーキのトッピングをするために移動するレレイ。その元気な背中を見送って、悠利は笑顔になる。他の仲間達も、何だかんだで自分好みのトッピングを探してわいわいしながら、美味しそうにホットケーキを食べてくれているのが見えたので。

 自分で焼くことで焼きたてのホットケーキを食べられるというのも、盛り上がっている理由の一つなのだろう。仲間達の圧に負けておやつをホットケーキにすることになったけれど、結果として皆が喜んでくれているので良かったなぁと思う悠利なのでした。




 途中で出かけていた面々も加わって、おやつの時間は大層盛り上がったのでありました。美味しいは皆で楽しむのが正しいですね。





多分、ブルックさんは、いつの間にかタワーみたいにして食べてたと思います。

ご意見、ご感想、お待ちしております。

なお、感想返信は基本「読んだよ!」のご挨拶だけですが、余力のあるときに時々個別でお返事もします。全部ありがたく読ませて頂いております!

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1~25巻発売中!26巻2月10日発売。コミックス1~12巻発売中。電子書籍もあります。よろしくお願いします。
最強の鑑定士って誰のこと?特設サイト
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