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これだけ言いましょう。


お待たせしました、ここ“から”ゲームパートが始まります!!

 ベッドにスマホを放り投げ捨てた3分後。

 すぐに投げ出したことを後悔して反省までした私は、ベッドに腰掛けて片手にスマホを持った状態で、静かにローディングを待っていた。

 スマホ買い換えたの、つい最近だったんだよね……はー、壊れなくてよかった。スリープにならないように気を遣いながら、しみじみそう思う。これで壊したってなったら、親の方から禁止令が出そうだ。ただでさえ、パソコンやるのもギリッギリなのに……うう、怖い怖い。


 そんな風に考える余裕が持てるのは、私がこれ(ふぁんたん!)に慣れたからかも。昨日もおかしかったし。おかしかったっていうか、すごくデータ量が多いゲームだから処理に時間がかかる面倒なやつ、っていうか。

 とにかく、『ふぁんたん!』=ローディングがすごく長いアプリ、と解釈した私は、今は気持ち穏やかに待つことができていた。

 そのせいか、ローディングも10分いかなかったような気がするし。……それでも10分なんて長いんだけれども。


 い、いや、気を取り直して進めよう。うん!



 スマホ画面に視線を落とす。


 ローディングされた画面には、フルアーマーな鎧さんが出ていた。

 人間、でいいのかな?ファンタジーによくある獣人とか、人間じゃない種族とかじゃないよね?全身が――頭から顔、指先に至るまで鎧に包まれてるから、判断のしようがないなあ、これ。いいや、人間って考えとこ。


 ていうか……鎧さん、あなた、やけにリアルな3Dグラフィックしてますね!?スマホとは思えないクオリティなんだけど!お、おおう、なんだか、パソコンでMMORPGしてる感覚になってきた!!


 って、あれ?モブっぽい鎧さんでこれじゃあ……えっ、まさか、自分のキャラも、パソコンMMORPG並のキャラクターグラフィックとか、そういうの期待できちゃう感じ?

 わっ、そうだったらどうしよう!すっごい興奮するんだけど!!



 その時、興奮で荒ぶっていた私の指先が、スマホ画面に触れた。


「あ」


 思わずそんな声が出たのは、画面にいる鎧さんから会話ウインドウが出てきたから。スマホ画面の1/4くらいの大きさのウインドウが、画面の下に出てきて、そこに文字が出てくる。文字が順番に出てくるなんて、今時珍しいと思ってたけど……そうじゃないんだなあ。いや、本当に喋ってるみたいですごくテンション上がるからいいけども!


 ドキドキしながら待ってると、全て表示されたらしく、右下に逆三角マークが出てきた。あー、あるある!ここでボタンとか押して、先に会話を進めてねっていうあれね!

 ちなみに、表示されている文章はこうだった。



『ようこそ、“迷宮国家ヴァルシアハグマ”へ。これからあなたの入国手続きを行いますので、こちらの質問に答えてください。 ▽』



 国名はヴァルシアハグマ、か。……私、絶対覚えられないだろうなあ。長いしややこしいし。そんなに頭の出来はよくないし。

 いや、待てよ?この国が本当にミユキの登録していたサーバーかはわからないんだった。パソコンのメモ帳を起動して、メモメモっと。

 よし、今度ミユキに確認とろう。


 で、なんだっけ?入国手続き?

 質問って言ってるし、これがミユキの言ってたキャラクリ、かな?


 そう見当をつけて、画面をタッチ。

 すると、ウインドウに新しい文字が出てきた。


 キャラクリだったら、と考えてちょっとわくわくしてる自分がいて、それに笑う。

 パソコンでMMOを始めた時も、キャラクリは楽しかったなあ、って思い出して。



 そして、『入国手続き』の質問が始まった。





『あなたは誰かの“後継者”ですか。 ▽』



「……これ、“はい”か“いいえ”かって出るのかな?」


 ちょっと不安になった私は、即パソコンに向き合った。攻略サイトの検索で、『入国手続き』を入れて探してみる。

 あ、あった。えーっと?


 そこによると、『ふぁんたん!』はちょっと特殊なゲームらしくて、なんでも『会話機能』というシステムが導入されているとか。

 その『会話機能』とは。読んで字のごとく、NPCと会話できる機能らしい。結構自由度が高くて、文法や単語によほどの間違いがなければ、伝わるんだとか。普通に挨拶しても返されるし、値引き交渉まで行えてしまう。帰ってくる言葉はまるで本当に目の前にその人がいるかのような自然体な感じで、且つ全て同じような言葉ではない。個人差があるような、そんな気がするほど細かいんだとか。 


 パソコンからスマホの方に目を移してみる。

 『会話機能』らしいボタンとかアイコンって……あ。


「もしかして、これかな?」


 それは、画面右上にあった吹き出しアイコン。吹き出しって、なんか会話っぽいイメージだし。


 軽くタッチすると、会話ログ画面みたいな感じになった。鎧さんの言っていた言葉が、色付きのウインドウに収まって画面上に順番に並んでいる。鎧さんのは白色だけど、他のキャラクターだと違うのかな?そんな画面の背景は薄い黒で、後ろに鎧さんとその背景が透けて見えた。

 そこにある鎧さんの会話ウインドウは、下に行くほどついさっき喋った言葉になっている。これは……まだ二つしかウインドウはないけど、きっと増えるんだろうなあ。上限はわからないけど、一定の数になったら古い会話から消えるに違いない。他のゲームの会話ログはそんな感じだから。


 それだけなら普通の会話ログなんだけど、画面の下――鎧さんの会話ウインドウがあった場所に、真っ黒なウインドウが出ていた。そして、パソコンやスマホで文字を入力するときに出てくる棒が端っこで点滅している。ここに言葉を入力しろってこと?

 試しに、“あ”と入力してみたら、普通に表示された。ていうか、メール打つ時みたいにご丁寧に変換機能も予測機能も出てくるって……やばい、これは楽しいかもしれない。ハマっちゃうかも。ちなみに、デリートもメールみたいにできた。ますますテンションが上がる。


 NPCと自由に喋ることは、結構な人の夢だと思う。というか、私は憧れてた。だったらいいのになーって、ゲームをする度に思ってた。だから、本当に自由に喋れるなんて、なんか夢が叶ったみたいで嬉しい。嬉しい通り越して感動だよ!

 これから、『会話機能』使いまくるかも……。


 にやにやしながら、とにかく進めるために文字を入力した。「“後継者”か」っていう質問に対してシンプルに“はい”、っと。



>はい ▽



 あ、私の時も出るんだ、この三角。じゃあ、タッチ、と。



『あなたの前任の名前、及び引き継ぐ職業は? ▽』



「……前のメールもそうだけど、公式は後継者をころしに来てるでしょ、これ……」


 私はミユキのプレイヤーネームを覚えてるからいいけどさあ……。ここまで念入りに確認取られると、もうなんか、しつこい!

 会話機能で上がったテンションが落ちた。どうしてくれるんだよー……。そう思いながら、また吹き出しアイコンをタッチして、出てきたウインドウに文字を入力していった。



>前任はミキ、職業は奴隷商人です ▽



 タッチしてから少し間があった。ん?ローディング?

 けれど止まったのはほんの一瞬で、割と直ぐに鎧さんが頷いた。


 ……えっ?“頷いた”?



『確認が取れました。“奴隷商人”“ミキ”様の“後継者”として登録します。 ▽』



 あ、はい。タッチ、と。


 って、いやいやそうじゃないだろう私!!

 なんださっきの!?鎧さん頷いた!?モーションまであるのか!細かい!素敵!!

 こんなので一気に落ちていたテンションが上がるなんて、現金なやつだなあと自分でも思うけどしょうがない。だって、ホントに会話してるみたいで嬉しいんだもの!


 とか思ってるうちに次の文章が出終わっていた。次はなんだろ?



『あなたの名前はなんですか。 ▽』 



 いたって普通で、当たり前だ。私は前々から決めてた名前を入力する。



>ノアです ▽



 ノア、はパソコンMMOの方でも使ってる名前だ。まあ、本名の「なお」をローマ字にして、それのaとoを入れ替えた単純で安直な名前なんだけども。本名とそんなに離れてないしファンタジーな世界設定でも浮かないから、割と使いやすかったりする。……使うの、まだ片手にも満たない回数しかないけどね。


 進めるために画面をタッチしたら、また少し間があった。またモーションとか?



『登録名は“ノアです”でよろしいですか。 ▽』


>いいえ ▽



 速攻で会話コマンド使ったよ!

 これはひどい。なんでそこまで入るの?!って感じだ。……え、もしかして、結構この機能、使いにくい?いやまさか、まだ使い始めたばっかりだから、うん。

 キャラクリ用?の質問、だし……今から単語でパッパッと答えちゃうか。



『では、名前は? ▽』


>ノア ▽


『登録名は“ノア”でよろしいですか。 ▽』


>はい ▽


『“ノア”様ですね。では次に、性別はどちらですか。 ▽』


>女 ▽


『“女性”でよろしいですか。 ▽』


>はい ▽


『“ミキ”様の“後継者”である“奴隷商人”“ノア”様。性別は“女性”。ここまでよろしいですか。 ▽』


>はい ▽



 『“会話”機能』のはずなのに全っっ然楽しく会話できないんですけど!!

 あと、質問形式だからかキャラクリが面倒に感じてきた。こう、パパパッ!とテンポよく進められたらいいのになあ。

 そう思いながらも、画面をタッチして文字を入力しては質問に答え続けた。


 髪の色、目の色、髪型や身体的特徴(ほくろ等、って鎧さんに言われた)、挙句には年齢とか体型とか身長とか体重まで聞かれた。


 体重を聞かれた時は、思わず自分のお腹の肉をつまんでしまった。……い、いや。別に太ってないし。標準よりちょっとだけ肉付きいいだけだし。BMI値は肥満とかじゃなくていたって普通値だし!……頭の中で色々弁明してるうちに悲しくなった。質問にはちゃんと答えたけどね……“何キロ代”ってアバウトだったけど。

 ちなみに、年齢や身長の方も“10代後半”や“150前半”って答え方をしていたけれど、どちらも問題はないようで頷きモーションを返された。


 あとは、好きな色を聞かれて。思わず画面の向こうで首をひねった。

 なんでここで好きな色を聞いてくるの?何に使うの?

 そんな疑問は後で攻略サイトを見たりして解消することにして、すぐにちゃんと答えた。“濃いレモンイエロー”、っと。私ははっきりした明るい色合いが大好きなのだ。オレンジと迷ったけど、やっぱりイエローかなって。余談。


 こうして、全ての質問が終わったらしく、鎧さんがこんなことを言ってきた。



『質問は以上です。ご協力ありがとうございました。 ▽』



 普通にタッチしてスルーでもいいんだろうけど、『会話機能』なのに単語しか返していなくて正直不満だった私は、つい吹き出しアイコンをタッチして文字を入力していた。

 で、気づいた時にはもう確定を押していた。


「あ、やばっ」



>こちらこそ、ありがとうございました ▽



 ……なんだろう、画面が固まった気がする。まさか余計なことしちゃったかな、と内心焦る。あああもう、素直に画面タッチするだけにしとけばよかった!画面触るのが怖いんですけど……。

 ええい、でも進まなきゃだから、えいっ!


 押したら、鎧さんが身体を揺らすモーションをした。えっ!?どうした鎧さん!?

 おろおろしているうちに、鎧さんの会話ウインドウに文字が表示し終わっていた。

 えーっと?



『いやあ、嬢ちゃん中々!ここで俺たちにそんなこと言うやつなんて滅多にいないからなあ、お前さんはかなりの期待株と見た!奴隷商人っていう職を継いだのが心配だが……まあ、嬢ちゃんならなんとかなんだろ!ガハハハッ!! ▽』


>あざーっす! ▽



 って、なに返事してるんだ私!自重しろ私の右手!!

 あと鎧さんも鎧さんだよ!キャラ変わりすぎじゃない?気のいいおっちゃん、みたいになってる。もしかして、こっちの方が本性ってやつで、さっきまでのはお仕事モードとか?……まさかそんな。

 いやでも、フレンドリーになったのは嬉しい、かも。親密度が上がったって感じで。


 頬が緩む私を尻目に、鎧さんはまた身体を揺らして、言葉を続けた。



『ハッハッハ!面白い嬢ちゃんだな!まあ、そろそろ本題に行くか。 ▽』


『質問に答えてもらったわけだが、その答えをベースにお前さんの“姿”を作ってみた。ああ、この“姿”っていうのはな、嬢ちゃんがこのヴァルシアハグマでやっていくために必要なものなんだ。 ▽』


『今から出てくる嬢ちゃんの“姿”は、いわば仮の体ってやつだ。嬢ちゃんみたいな奴らが、この国や他の国で仕事をするには……あー、なんだ。どうしてもこの“姿”が必要になるわけだ。 ▽』


『というのも、お前さんたちはこの“姿”を媒介としてこっちに干渉するし、できるんだ。逆もしかりだな。だから、“姿”が必要になる。ここまでわかるか? ▽』



 ……えーっと。ちょっと情報量が多すぎていまいち追いつけてないんだけど……。

 つまりは、キャラクリで作ったキャラクターを通してゲームをする、ってことかな?ゲームというか、職業をロールプレイングするっていうか。

 うん、それなら普通のことだ。理解できる。

 でも、どうしても不思議な箇所がある気がする。『プレイヤーが“姿”を媒介としてゲームをする逆もしかり』?

 ……うーんと、つまり、『NPCがプレイヤーの“姿”を媒介としてプレイヤーに情報を伝える』ってこと?んん?よくわかんないな……。情報仕入れなきゃ。メモしておこうっと。


 メモし終わった私は、そのまま『会話機能』で“はい”と入力して返事をした。

 今は深く考えないで、他のゲームみたいに『自作キャラクター=自分』って考え方で。ゲーム世界の自分ってことで捉えておくことにした。じゃなきゃ、延々と考えかねないし。


 画面をタッチすると、鎧さんが頷くモーションをした。続いて、会話が表示される。



『物分りが良くて助かるぜ。まあ、こっちが勝手に作った“姿”だからな。ある程度はいじれる。気に食わなきゃ、好きなようにいじってくれ。ただし!質問事項に対しての答え直しはもうできない。今から見せるお前さんの“姿”がベースだ。いいな? ▽』


>はい ▽


『いい返事だ。なら、今から出すぞ。“姿”を確定するなら声をかけてくれ。それじゃあな。 ▽』



 そこで画面をタッチすると、また固まった。はいはい、ローディングですね。来るだろうとは予想してたから、特に驚きはないけど。

 ……でも、この長いローディングはさっきまでのよりは嫌じゃない。

 だって、この先に、これから使っていく自分の分身が出てくるってわかってるんだから。


 ハァー、質問形式のキャラクリなんて初めてだから、ドキドキする。どんな感じかなあ。あんまり盛らないで、割と現実の自分に近い感じで答えたからなあ……。



 結局、10分くらい経ってから画面が変わった。

 召喚陣みたいな丸模様が画面に写ってるだけだ。……この召喚陣みたいなのをタッチしたらいいのかな?


「ほいっと」


 軽く触れると、召喚陣みたいなそれが光った。一瞬画面が白くなって驚くけど、すぐにそれがなくなる。こ、壊れてない……んだよね?お使いのパソコンは正常です的なあれかな?


 と思ってたんだけど、そんなのはすぐにぶっ飛んだ。


 なぜなら、画面に女の子が出てきていたから。

 召喚陣みたいなものの上に立っている女の子は、パソコンMMOみたいな綺麗な3Dグラフィックをしていた。鎧さんと一緒だ。違うのは、その姿が少し透けていて背景がうっすら見えること。仮の姿って言ってたっけ?だからかな?


 ……さて、この女の子の後ろとか、見れたりするんでしょうか。くるくるっと動かせたりするんでしょうか。

 恐る恐る女の子に触れて、そのまま横に動かすと、彼女はぐるりと後ろを向いた。


「~~~っ!!!」


 声にならない悲鳴が出た。


 うわぁ……す、すごいっ!!


 高揚した気持ちのままに、マウスでやるように指でキャラクターをくるくるまわした。すごいすごい!ちゃんと質問事項で答えたことが反映されてるっぽい!!うーっ感動!


 質問で答えた通り、女の子は、黒目黒髪をしていた。

 髪型はちょっと希望も入れて、ストレートな髪を高い位置でポニーテールに、って言っていた。長さを指定していなかったからあれだけど、ちゃんと高い位置でポニテだし、髪の毛はまっすぐっぽい。

 けど、腰までの長さはさすがに長すぎると思ったから、右側に出ていた『カスタム』というボタンを押してみた。

 すると、『幅等を変更する場合は希望箇所をタッチし、そのままスライドしてください。色の明度彩度を変更する場合は、希望箇所をタッチし、左側のバーで調節してください。カスタムコマンドを終了する場合は、もう一度コマンドをタッチしてください。』なんて文章が書かれたウインドウが下に出てきた。結構親切なんだ、ちょっと見直したかも。

 言われたとおりに、髪をタッチしてそのまま上にスライドしていった。肩まではいらないかも……頭分でいいかな。顎の位置くらいで指を離してみて、『カスタム』をタッチする。またくるくる回してみて確認、っと。……うん、満足かな。

 年齢と身長は左上に並んで表示されていた。さすがに体重は表示してないか。でも、体型と身長体重を合わせて身体を作ったのか、女の子の姿はリアルの私に近かった。……胸……いや、やめよう。盛って現実を思い出して虚しくなるよりかは……うん。な、ないわけじゃないし!……でも夢見たかったような……ハア、諦めよう。身体はいじらないことにした。

 アップにして細かいところも見てみると、身体的特徴っていう質問の答えも反映されていることがわかった。答えた通り、左目尻の下にほくろがあるし、目は少しつり目だった。うん、ここも特に変更しなくていいや。


 特に変えたい箇所も見つからないし、キャラクターの出来にも満足だから確定しようとして……ふと、もう一度全体を見れるようにした。

 そこで気づいた。


「……服の色、濃いレモンイエローなんだ」


 好きな色は、服の色に反映されたらしい。ただ、選んだ色が色だからか、大分派手な感じになっていた。

 どれくらいかって、頭以外は全身黄色と言っても過言じゃないくらい、黄色い。現実でこんなコーディネートをしたら、軽く三度見はされるんじゃないかってくらいの色合いだ。


 アップにしたり離したりして、服を観察してみた。


 靴はブーツみたいな感じの茶色い革靴。色合い的に、手触りが柔らかそうだ。ブーツの中にズボンを入れるスタイルらしくて、随分ぶかぶかな感じがするけど……大丈夫かな、これ。紐やベルトで形を固定しているようには見えないし……。


 いや、今はそれじゃない。色だ。靴はいいんだ、靴は。問題はそれ以外。


 靴と違って、女の子の身体を包む服は全体的に黄色い印象を受ける。目に眩しい感じがするとも言える。


 フード付きで腰までの長さがあるマントは、表面こそ靴と同じ柔らかそうな茶色だけど、内側である裏面はレモンイエロー。


 その下には、薄くて淡い色合いの黄色をした長袖のブラウス。


 ブラウスを入れてるズボンも、靴に比べて随分明るい茶色をしていた。むしろオレンジに近い感じだ。ベルトは黒色だったけど。


 って、全身明るすぎだろ、これ……。

 いやでも、綺麗な色合いだからヘタにいじりたくないかも……でも目立つし……うーん……。



 少し悩んで、結局彩度や明度はいじらないことにした。悩んでる間に、腰のベルト横にSでMなアレに使うアイテムがいくつか見えたような気がするけど、気のせいに決まってる。よね?


「ええい、もういいや!確定!」


 吹き出しアイコンが変わらず右上にあったから、それをタッチして会話ウインドウを表示させる。声かけて、って言ってたからこれでいいかな?



>終わりました。これでお願いします ▽


 

 画面をタッチすると、また一瞬白くなった。すぐに戻って、質問されていた時みたいに鎧さんが画面中央に出てきた。あ、ローディングは長くなくて大丈夫だったんだ。まあ、すぐに進められるなら願ったり叶ったりだけども。


 鎧さんから会話ウインドウが表示されて、そこに文字が現れる。



『お、終わったか。……うん、いい感じだな。ほとんど手を入れてないようだし、気に入ってもらえたならこっちも嬉しいぞ。ハハハッ! ▽』


>いえいえ ▽


『そんな風に返すとはまた、お前さんってやつは……。こりゃますます、嬢ちゃんに期待できるな。ああいや、こっちの話だ。気にすんな!いい意味だから悪いことはない。いや、こんな話してる場合じゃあないな。そろそろ仕上げといくか。 ▽』



 ん?“仕上げ”?



『“ノア”、お前さんに商業の神の加護があらんことを。それじゃあ行ってきな! ▽』


>はい! ▽



 加護とか、本当、ファンタジーっぽい。細かいなあ。

 と思いながら返事をして画面をタッチすると、画面が真っ白になった。


 今から、素敵じゃなさそうな奴隷商人ライフが始まるんだ。複雑な気持ちだけど、ドキドキしながらローディングを待った。





『そういやあ……プレイガイドのやつの説明、し忘れたな。ま、あの嬢ちゃんならなんとかするだろ。ガハハッ!さーて、次の仕事をするか!』










『会話機能』について


 画面右上端にある吹き出しアイコンをタッチすることで、使用することができる。

 使用中は専用画面に切り替わる。その様子は作中のとおりである。バックログ機能として活用する人もいる。

 使用方法はいたって簡単。メールを打つように文章を打ち込むだけ。予測変換等の機能もメールそのものである。文章を確定し発言するときは、打ち込んだ文字があるウインドウの横にある▽ボタンを押せばよい。それまでは確定されない。最大入力文字数は200文字。

 『会話機能』を終了したいときは、呼び出したときと同じように右上にある吹き出しアイコンをタッチすればよい。


 作中では行っていないが、『会話機能』中に他のウインドウを立ち上げることも可能。他のウインドウについては次の話中に出てくる(予定)。

 ※例えば、「○○を持っているか」という質問に対し『会話機能』を立ち上げ、そのまま『所持アイテム』をタッチし持っているかどうかを確認することができる……ような感じ。


 『会話機能』だが、単語入力で使う人が多い。原因は、作中のようにきちんと文章にしても伝わらないときがあったり、単語だけで十分伝わることに気づくから。

 だが、文章で伝えた方がNPCの親密度が高まる(らしい)。真相は作中のとおりであるが確定とはいえない。



 会話機能についてはこんな感じでアバウトに考えております。

 こういうの、実際にゲームで導入されればいいのに……と思いますが、そうなるとプログラミングが大変そうです。というか厳しいか。いくつかの単語に対して反応を返す、というように現実のスマホの音声機能感覚まででしょうか。高望みはいけませんね。


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