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ノイズ

黒い粒が、


右手へ集まっていく。


柄、鍔。


そして、


長く伸びる刃。


「……」


黒い粒が止まる。


手の中には、


一本の剣があった。


昨日と同じ。


ひいおじいちゃんが使っていた剣。


軽く振る。


刃が、


空気を切った。


「いい感じ.....」


剣を消す。


もう一度。


右手を伸ばす。


黒い粒が集まる。


柄、鍔、刃。


「……」


また同じ剣ができた。


少し離れた木陰で、


ハクトが見ている。


もう一度。


剣を消す。


右手を伸ばした。


その時。


ザッ――


「……?」


音がした気がした。


ハクトを見る。


「……」


いつもと変わらない。


木にもたれて、


こっちを見ている。


「何だ」


「いや」


右手へ視線を戻す。


黒い粒を集める。


もう一度、


剣を作った。



昼を過ぎた。


剣を振る。


消す。


また出す。


同じことを、


何度も繰り返した。


最初より、


かなり安定している。


昨日みたいに、


途中で崩れることもない。


「……疲れた」


その場に座る。


近くに置いていたペットボトルを取る。


水を飲む。


ぬるい。


「ハクト」


「何だ」


「これ、まだ特訓いるの?」


「いる」


「……そっか」


もう一口飲む。


ハクトが、


木陰から出てくる。


その時。


ザッ――


「……」


ハクトの右腕に、


細かなノイズが走った。


一瞬、


輪郭が乱れる。


すぐに戻った。


「それ」


ハクトが、


こっちを見る。


「昨日もなってたね」


「ああ」


「何なの?」


「分からん」


「そっか」


ペットボトルの蓋を閉める。


立ち上がる。


「もう一回やろう」


「ああ」


右手を伸ばした。



林の中へ差し込む光が、


少しずつ赤くなっていた。


剣を消す。


今日だけで、


何回出したか分からない。


腕が重い。


「今日は終わりだ」


「うん」


荷物を持つ。


林を出る。


住宅街を歩く。


まだ、


昼間の暑さが残っていた。


「暑いね」


「ああ」


「アイス食べたい」


「食えばいいだろ」


「お金持ってきてない」


「俺も持ってないぞ」


「だよね」


蝉の声が、


ずっと聞こえている。


少し前を、


ハクトが歩いていた。


ザッ――


白い身体に、


一瞬だけノイズが走った。


「……」


すぐに戻る。


ハクトは、


そのまま歩いている。


僕も、


その後を歩いた。



「やばい.....溶ける.....」


玄関を開ける。


「ただいまーー」


返事はない。


父さんは、


まだ帰っていないみたいだった。


「暑くて死ぬ.....」


冷蔵庫を開ける。


麦茶を出して、


コップへ注ぐ。


「……うま」


ハクトが、


リビングへ入ってくる。


僕はもう一杯、


麦茶を注いだ。


「飲む?」


「飲めない」


「そっか」


コップを口へ運ぶ。


ハクトは、


テレビの前に座った。


「つける?」


「ああ」


テレビをつける。


夕方のニュースが流れ始めた。


僕も、


ソファへ座る。


「……」


特に見るものもない。


適当にチャンネルを変える。


ハクトも、


何も言わなかった。



いつの間にか、


外は暗くなっていた。


部屋へ戻る。


ベッドに横になる。


今日は、


さすがに疲れた。


右手を見る。


剣を出そうと思えば、


たぶん今でも出せる。


でも、


やめた。


「明日もやるの?」


「ああ」


「やっぱり」


目を閉じる。


窓の外から、


鈴虫が鳴いている。


「おやすみ」


「ああ」


部屋が、


静かになった。


「……」


ハクトは、


壁にもたれたまま座っていた。


右手を見る。


ザッ――


指先に、


ノイズが走った。


すぐに戻る。


「……」


ハクトは、


手を下ろした。


ザッ――


今度は、


肩。


白い身体が、


一瞬だけ乱れる。


それも、


すぐに戻った。


静かになる。


「……」


ザザッ――


「――っ」


突然。


大きなノイズが、


ハクトの全身を走った。


「.....」


ハクトは静かに目を閉じた。

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