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夜は続くよどこまでも  作者: 10MA
オーバー

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013.超越

「それでだ。協力というのなら、三上がそもそも追っていたやつの事を教えてくれよ」

「そいつというか、昨日の女もだけど、あれらを『オーバー』って呼んでる」

「オーバー?なんか厨二病くさいような、それにしてはシンプルすぎるような名称だな」

「今のところは正式名称が無いの。あいつらはどいつもこいつも自分の事を『人間を超越した上位の存在』って思い込んでる」

「なんだそれ。人間を超えた存在‥‥オーバーねえ」

「いいえ、オーバーの意味はそれじゃない。あいつらの主張を間に受けるわけにはいかないの。あいつらが何と言おうと、所詮は人間のルールを越えてしまった犯罪者。正式名称の無いあいつらを、私達が勝手に蔑称で呼んでるの」

「人間のはみ出しもので、オーバー?」

「そう。超越者だの、次の人類だのなんて戯言は認めない。馬鹿な妄言を主張するただのはみ出しもの」


なるほど、上手い事を言うものだ。相手の誇りを、アイデンティティを、そっくりそのまま蔑称にして返す。人類を超えたと思っているやつらにとっては、格下と思っている相手から受ける最大級の侮蔑だ。


「それでそのオーバーってやつは、本当に人間を超えてるのか?力は確かに人間離れしていたがー」

「あんなのただの理性を失っただけの人間よ。ただ、あの力だけは説明つかない。今まで捕えた当事者達にも知っている者はいなかった。いくら体を調べても原因不明。突然変異なのか、クスリなのか、病なのか」


三上は悔しそうに眉間に皺を寄せている。クールに見えて、オーバーに対しての熱意はどうやら本物らしい。


「じゃあ質問を変えて、オーバーはなぜ人を襲うんだ?」

「それも原因不明」


三上はそこで忌々しそうに舌打ちをしたが、説明を続けてくれる。


「でもあいつらに共通して現れる特徴が、人間への敵対心や破壊衝動。その欲を満たすために人を襲っているとしか思えない、今は」

「語り継がれる吸血鬼なんかの人型の人外のように、人を食べたり、血を吸ったりとかはしないんだな?」

「しない。まだしてくれた方が良かったわ。それなら生きるための生存本能って事でしょう。それなら私達との生存競争にはなるけれど、戦いは避けられないとしても、理解はしてあげられるのに」


2回目の舌打ち。


「でも、あいつらは衝動的に人を襲う。自分の心を満たすためだけに、命を奪う」


三上から漏れ出てくる怒りには、納得しか無い。

人を見下し、衝動のままに意味も無く襲い、自分達を人間より上位の存在だと主張する。

許せるわけが無い。

話に聞いただけで本能が、拒否する。


「三上、僕もどこまでも付き合う。オーバーには人間として、抵抗しなきゃいけない気がする」

「その覚悟は大したものだけど、和泉に何ができるの」

「う‥‥それは、確かに」


自慢じゃ無いが僕に戦闘能力なんて物はない。知恵もない。

装備を揃えて、万全の備えで挑んだつもりの昨夜も、ひどい醜態を晒してしまっただけだ。

しかしここで諦めるわけにはいかない。


「で、でもほら、三上はあまり人に存在を知られたくないんだろう?表に立てない三上の代わりに、僕が動くとかさ」


まだ三上に刺さるプレゼンができる自信は無かったが、それでも僕の有用さを説かなければ。


「へえ、動くって?」

「ほら人に聞き込みしたりとかさ」

「和泉にそんなコミュニケーション能力が?」

「う。いや、舐めないで欲しいな。僕には意外と友達も多いんだ?」

「何で本人が疑問なのよ」


喋っている内容に違和感しか無いものだから、思わず自分に疑問を投げかけてしまった。


「それとほら、三上が忙しくて大学に来れない時は、講義の内容教えてあげたりするし」

「必要ない。今回の件で大学に潜り込んだだけで、そもそも正式にあそこの生徒ってわけじゃないの」

「そうなの!?」

「コネ入学してまだ3ヶ月くらい」


『コネ入学って本当にあるんだ』と思ったが、人脈といった意味のコネでは無く、何か大きな力が働いているのかも知れない。

もしその真相を知ったら、コネの正体を知った者がいたら、そいつは消されるようなコネなのではないだろうか。


「そ、そうなんだ。3ヶ月前からあの女を追ってーー‥‥」


そこである可能性に行き当たる。

大きなコネを使える三上が、一般人でも容易に入り込める大学に、わざわざ非公式ではあるが正式に在学する理由。


「うちの学生にいるってことか?あの女が」

「和泉にしては察しがいいじゃない」

「マジか‥」

「当てずっぽうだったの?表沙汰になっていないけど、この地域で多発してる暴行、それに殺人。場所や時間、手口なんかを精査していくと、ここの学生の可能性が一番高いの。人間の上位存在を名乗る割に、人間を否定するくせに、見た目に人間との差異なんて全く無いからね。同じ人間を怪しまれずに、何度も観察するためには、学生になるのが効率が良いと判断されたってわけ」


三上が所属もしくはバックに付いている組織の姿が少しずつではあるが見えてきた気がする。

どうやら初めにイメージした、暴力を暴力で解決するような、反社会的なものではないらしい。どちらかと言うと、秩序を重んじる警察のような存在のようだ。

その手段が合法かは微妙な所ではあるが、国が認めた超法規的存在の可能性もある。

そう考えると、確かにただの一学生たる僕が存在さえも知って良いものとは思えなかった。


「3ヶ月もいたら、大体の目星は付いているのか?」

「いえ、全然」

「全然‥‥」

「なによ、別に無能の和泉のように遊んでいたわけでは無いの。何人か疑わしいやつはいた。そしてそいつらでは無かったという事が分かった。これはこれで成果と言えるでしょう?」


疑問を投げかけてきた割に、投げ返したら打ち殺されそうな目だ。

僕は黙って、首を縦に振って三上の言葉を受け止めるしか選択肢は無い。


「それじゃあ、次の候補は?」

「さっきあなたが聞き込みするって言ったのよ」

「あ、僕の仕事なのね」

「そう。でも初めに言ったように、オトリも続けてもらう」

「そんなほいほいオトリ作戦が通用するものなのか?向こうも仲間の1人が囚われたら警戒するものじゃないか?」

「するでしょうね。でもあいつらの衝動は、私達には理解できない程に強いものなの。人間を虐げる事に、暴力に依存していると言っても良い。やりたくてやりたくて仕方がないの。そう我慢が続くものじゃないはずだわ」

「依存か。それこそタバコや酒‥いやそんなものどこではなく、麻薬のようにか?」

「良い例えをするのね。スマホの電話帳に大学の友人はおろか、地元の知人らしき名前すら見当たらない程ぼっちに依存してる人は言う事が違うわね」

「お前そんなとこまで見たのか!ぼっちに依存した覚えはねえよ!」


とんでもない女だ。その表情は、冗談なのか本気なのかも分からない。

この真意を読み取れない態度も、何かしらの技術を使っているのだろうか。だとしたらとんでもない無駄遣いだ。


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