第88話 歌って踊る王太子、始動
学院は今、ルミナリア祭の準備で盛り上がっている。
女子は男子の衣装を借りたり、逆に男子の女装用の服を仕立てたりしているようだ。
その影響か、それを機に学院内では婚約するカップルが続出していた。
セレナは、
「やっぱり文化祭は恋の季節、こうでなくっちゃ。」
とドヤ顔だった。
「そういえば、お前達は衣装どうするんだ?」
俺はアルベルトとレオンハルトを見る。
レオンハルトは舌打ちをしながら、
「ちっ、ヴィオレッタが嬉しそうに作っているよ。
何が楽しいんだか。」
と答えた。
アルベルトは、
「私は私の服を貸す代わりに、とある令嬢が衣装を仕立ててくれますよ。」
と答える。
なんだかんだ言って、男装・女装の方は何とか目処が立ったようだ。
問題は、歌って踊る王太子、俺達の方だった。
実は、今日が初練習となる。
そこで音楽室に、俺たちは集まった。
ちなみに、ルミナリア祭までは完全極秘だ。
セレナは、
「今回、私達がやるのは、この5曲。」
と言って楽譜を配る。
俺はその楽譜を見て、思わずセレナを見た。
その楽譜は、日本のある有名ヒット曲だった。
セレナは俺の視線に気づき、
「レオニス、この曲、全部歌えるよね?」
と言う。
その曲は日本ではどれもメジャーなもので、知らないやつなどまずいない。
しかもセレナは、他人の作った曲であるにも関わらず、自分が作ったと言い張っていた。
俺が突っ込むと、
「異世界まで、著作権は及びません。
あれは、地球上限定だから。」
と強気の視線を向けてきた。
セレナのピアノに合わせ、オーケストラの練習が始まる。
「変わった旋律ですね。」
皆が感心しつつ、それでも熱心に練習を続ける。
「セレナ、ちょっといいか。」
俺は歌詞について指摘する。
「このあたり、この世界にはないものが含まれている。
だから、この世界に合わせて変えた方がいいんじゃないか?」
セレナは、
「そうだね、変えよう。」
ときっぱり言った。
俺は歌詞に合わせて、軽く歌ってみる。
前世で俺は、カラオケは得意だった。
懐かしいメロディーに、体も自然と動く。
一世を風靡した曲の振り付けも、自然と身についている。
「レオニス、かっこいい。」
リリアが呟く。
「やっぱ、あの男、ずるいわ。」
とセレナは悪態をついた。
それに合わせて、ルシアンとリリアが魔法で舞台演出を組み立てていく。
リリアの光魔法は慈愛に満ち、人々の心を魅了すること間違いなしだ。
おかげで舞台もよく映える。
ルシアンはさすが、魔術の天才。
巧みに魔力量を調整し、ほどよい火魔法で爆破演出を行い、
水魔法で霧を生み出す。幻想的な演出だった。
さらに風魔法で音響まで調整していた。
「やっぱ、ルシアン入れて正解だね。
エレノアだったら、舞台、いや観客ごと爆発しちゃうよ、きっと。」
セレナは言った。
俺も同意せずにいられなかった。
「後は、練習を重ねて、本番に備えれば、何とかなるでしょ。」
セレナは満足げに言った。




