(番外編)甘い誘惑の先③
最初に動いたのは、レオニスだった。
アルベルトは、
「落ち着いてください。絶対に騒ぎを起こさないでくださいね。」
とレオニスに小声で言った。
レオニスは一呼吸ついて、女主人に向かって話しかける。
「私はこの娘が気に入った。いくらだ?」
その声は静かだった。
だが、押し殺した怒りが滲んでいるのは明らかだった。
女主人はその気配に気づくことなく、値段を口にする。
その金額は、決して安くはなかった。
だが、レオニスは、
「ほおー、たったそれだけか?安すぎるのではないか?」
と言う。
場の空気が、わずかに歪む。
女主人は、
「この娘は初物ですし、見た目もこのとおり。
だから、これ以上は。」
と言ったが、
「だから、安すぎると言っている。」
レオニスは言い切る。
その言葉に、女主人は一瞬、言葉を失った。
「なんで、レオニス、値上げ交渉しているんですかね?」
とアルベルトは肩をすくめる。
レオンハルトは、ため息をついた。
結局、レオニスは女主人の最初の言った金額の三倍を支払った。
だが、それでも納得した様子はなかった。
そのままエレノアを抱き上げると、振り返ることもなく部屋へ向かう。
次に差し出されたのは、リリアだった。
レオニスはエレノアしか目に入っておらず、セレナとリリアは置き去りにされる。
セレナはカイルやアルベルトが何とかするだろうが、リリアにとってはピンチだった。
助けを求めるような瞳でリリアが見上げた、その時。
動いたのは、ルシアンだった。
「その娘は、私が買おう。」
ルシアンはそう言って、迷いなく金を女主人に渡す。
「へえ、ルシアンが聖女様を買いますか?」
とアルベルトは興味深そうに見ていた。
リリアはそのまま、ルシアンに手を引かれ、部屋へ連れて行かれた。
残ったのは、セレナだった。
すでに助かったと確信しているセレナは、ふんぞり返っている。
「カイル様、早く私を買って〜❤️」
カイルはそんなセレナを冷たい瞳で睨みつける。
「私は、女性を買うなんて、破廉恥なことしません。」
「何でよ、カイル様、でも娼館にいるってことはそう言うことでしょ。
浮気しようとしてたくせに、なんで逆ギレするの?」
セレナの言い分に、カイルは、
「浮気ではありません。」
とキッパリ答える。
だが、任務のためとはとても言えない。
見兼ねたアルベルトが、
「その子、少し安くなりませんか?」
とねぎり出す。
「ちょっと、お兄様、何で値切るのよ。
レオニスみたく、釣り上げてよ。」
とセレナは不満そうだった。
が、結局、カイルは女主人の言い値を支払った。
「カイル様、その分、ご奉仕しますから❤️」
セレナの不埒な発言と共に、部屋へ消えていった。
残されたのは、アルベルトとレオンハルト。
二人は大きくため息をつく。
「後は俺達で何とかするしかないな。」
レオンハルトは、ため息混じりに言った。




