(番外編)甘い誘惑の先①
「ねえ、退屈。どっか、遊びに行かない?」
セレナの一言で、この日は始まった。
貴族の令嬢なんて、箱入り娘で、中々自由に外を出歩けない。
出歩けてもいつもお供が一緒で、気楽に遊ぶということができないのだ。
「何言っているの?セレナ?」
リリアがセレナを見る。
「えっ、だって、こうしてお茶会も飽きちゃったんだもん。」
セレナはごねる。
エレノアとヴィオレッタは顔を見合わせ、苦笑いする。
「よおし、決めた。私、街へ遊びにいく。」
セレナは言い出した。
「セレナ、やめなさい。外は危険だわ。」
エレノアは止めた。
リリアは少し考えてから、
「でも、面白いかも。」
とセレナに賛同する。
エレノアは、
「リリアまで。」
と呆れたが、
「じゃあ、エレノアはお留守番ね。」
とセレナに言われ、
「まあ、少しだけなら、いいかもしれません。」
と、結局は好奇心に負け、賛同した。
ヴィオレッタも行きたがったが、流石に妊婦を連れていくわけにもいかず、
渋々、お留守番となった。
こうして、セレナを筆頭に、リリア、エレノアの三人で街に繰り出す。
しかし、世間知らずなご令嬢三人。
すぐにトラブルに巻き込まれた。
美味しいケーキのお店があると誘い出され、まんまと罠にはまる。
魔法で撃退しようとするが、魔法封じの魔道具により魔法が使えない。
あっという間に、囚われの身となってしまった。
「ねえ、どうしよう、セレナ。」
不安を隠せないリリア。
「落ち着きなさい、リリア。」
エレノアはリリアを諌めるが、エレノアも恐怖で震えている。
「父上、身代金払ってくれるかな。」
セレナは現実的なことを考えていた。
「私は、こんなことで、殿下を煩わせるわけにはいきません。」
エレノアは言う。
「でも、どうするのよ?」
リリアはエレノアを睨んだ。
エレノアにも、答えることはできなかった。
そして、男が、
「ついたぞ、降りろ。」
と乱暴にセレナたちを降ろす。
「上玉だな、売る前にちょっと味見しようか?」
男が気持ち悪い笑みを浮かべる。
エレノアは、ぞっと寒気がした。
この男の慰み者になるくらいなら、死んだ方がましだった。
リリアも真っ青になって震えている。
セレナも、流石に大人しくなっていた。
「おい、やめておけ。傷ものにしたら、値が下がる。」
そう言って、その男の親分らしき男が止めた。
「へい、わかりやしたよ、兄貴。」
とりあえず、三人は助かった。
三人は、ほっと胸を撫で下ろした。
男たちの目的ははっきりした。
身代金狙いの誘拐ではなく、セレナ達を売り飛ばしてしまうつもりらしい。
それはそれで、身の毛が震えた。
売られる先が、娼館なのか、それとも金持ちの変態ジジイなのか、
最悪の場合は、外国も考えられる。
そして結果は一つ。
慰み者にされるのだ。
リリアは、その未来が絶望すぎて泣き出した。
エレノアも、ぎゅっと唇を噛み締めて震えていた。
そんな二人を、セレナは、
「きっと、大丈夫、何とかなる。」
と勇気づける。
だが、セレナにも、このピンチを打破する方法はなかった。




