第81話 聖女の覚悟
レオニスは、部屋へ入ってくる。
その瞬間、リリアの胸は大きく高鳴った。
もともとは、告白して、セレナの言う通り振られるつもりだった。
自分の気持ちに、ケジメをつけるために。
でも。
目の前のレオニスを見て、心が揺らぐ。
ダークブロンドの髪。
琥珀色の、今は少し憂いを帯びた瞳。
やっぱり、この人以上に素敵な男性はいない。
愛されなくてもいい。
軽蔑されてもいい。
それでも、側にいたい。
そう思ってしまった。
「レオニス、前にさ、ご褒美くれるって言ったこと覚えてる?」
リリアは、まっすぐにレオニスを見た。
それは、ヴァレンシアとの神殿の儀式の時。
リリアを勇気づけるために、彼が言った言葉だった。
「ああ、覚えてる。何か欲しいものでも、あるか?」
レオニスは、何気なく答える。
リリアは深呼吸した。
そして、一気に言葉を吐き出す。
「私をレオニスの女にしてほしい。」
「……。」
レオニスは一瞬、言葉を失った。
「だからね、私を抱いてほしい。
私はレオニスの正式な惻妃になりたい。」
レオニスは、何かを言いかけて、やめた。
そして、目を閉じる。
レオニスは、何かを考えているようだった。
リリアには、その心の内はわからない。
やがて、レオニスは短く言った。
「わかった。」
リリアの胸が強く鳴る。
自分でも信じられないほど大胆なことを言っている。
それでも、受け入れてもらえたことが嬉しかった。
だが、その次の言葉で、すべてが崩れた。
「裸になって、ベッドに横たわれ。すぐ終わらせるから。」
レオニスは、冷たい目と声でそう言った。
その瞳はあまりに冷たく、感情も感じられない。
怖い。
こんなレオニスを、リリアは知らなかった。
戸惑っていると、レオニスが近づいてくる。
「何だ?脱がしてほしいのか?」
「レオニス、ちょっと待って。私、初めてだから優しく……」
言い終わる前に、リリアの身体はベッドに押し倒される。
「すぐ終わらせるから。」
そう言って、服のボタンに手をかける。
恐怖が一気に込み上げた。
「いや、やめて!」
思わず叫んでいた。
涙があふれる。
レオニスは、何も言わず離れた。
「私の女になると言うことは、こういうことだ。」
冷たく言い放つ。
リリアは震えながら問いかける。
「なんで?なんでエレノアなの?」
「今はレオニス、エレノアに夢中でも心変わりするかもしれないじゃない?」
レオニスは小さくため息をついた。
「私が愛するのは、エレノアだけだ。
今も、これまでも、これからもずっと。断言できる。」
そして、まっすぐにリリアを見る。
「リリア、お前の気持ちは嬉しい。
だが、お前の気持ちには答えられない。」
リリアは、必死に言葉を紡ぐ。
「私、レオニスと一緒にいられるなら、2番目でもいい。
ううん、3番目でも、4番目でも。
ずっと一緒にいたい。」
それが、本心だった。
「私には、2番目も3番目もない。
エレノアしか愛せないんだ。」
そして、静かに続ける。
「それに、リリア。
お前は愛されないと分かっていて、抱かれるような、そんな安い女ではないだろ?」
その声色は甘く優しかった。
ずるい。
そう思った。
そんなセリフだけで、何も言えなくなる。
レオニスはそのまま、何も言わず部屋を出ていった。




