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元ホストの俺、乙女ゲームの王太子に転生。婚約者(悪役令嬢)だけは絶対に守ります  作者: ふうこ0701
第6章 聖女の覚悟と涙

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第79話 クラリッサの陰謀

「では、本題に戻りましょう。

王太子は、8妃の件でお越しになったのですね?」


俺は静かに頷いた。


「8妃は、陛下が気まぐれに手をつけた、元は侍女の娘です。

それを陛下が、無理に惻妃に引き上げました。

当初は物珍しさもあり、寵愛も受けていたようですが……

9妃が来てからは、すっかり足が遠のいたと聞いています。」


俺は小さく息を吐いた。

隣ではレオンハルトも舌打ちしている。

おそらく、同じことを考えているのだろう。


その様子に、王妃はくすりと笑った。


「8妃も、さぞ焦ったことでしょう。

後ろ盾もなく、子も持てず、寵愛まで失えば、

この後宮では、ただの囚われの身ですから。」


王妃は軽くため息をついた。


「私も8妃を哀れに思います。

ですが、王太子。この一件、私はあなたの差し金ではないかと疑っておりました。」


俺は思わず目を見開いた。


「私にとって、9妃の子の父が誰かなど、もはや重要ではありません。

ですが王太子にとっては、そうではないはず。

8妃の証言は、あなたにとって不都合なものだったでしょう?」


王妃の視線が、まっすぐに俺を射抜く。


「おっしゃる通りです。

8妃様の証言は、私にとって都合のいいものではありません。

ですが、後宮では、この程度の足の引っ張り合いは日常です。

戯言として一蹴できます。」


王妃は少しだけ考え、やがて口を開いた。


「そうですか。

実は、9妃の子が陛下の子ではないと、私に進言してきた者がいます。」


「……8妃ではありません。」


静かに、息を吐く。


「王太子の妃候補、クラリッサ姫です。」


その瞬間、すべてのピースがつながった気がした。


最初から、クラリッサの狙いはエレノアの排除だったのだ。

セドリックと共に、9妃の子の件も把握していたに違いない。


「女ってのは、怖ぇな。」


レオンハルトが呆れたように言う。


「先ほども申し上げた通り、

9妃の子が誰であれ、私にはもはや関係のない話です。

他の妃にも同様の話は行っていたのでしょう。

ですが皆、陛下の不興を恐れて関わらなかった。

8妃だけが、その浅はかさゆえに利用されたのです。」


王妃は静かに続けた。


「私は、王太子がこの陰謀に気づき、

これ以上噂が広がらぬよう、見せしめとして動いたのかと考えておりました。」


「確かに私は、エレノアのためなら手段は選びません。

人を殺すことすら厭わないでしょう。

ですが、それは最終手段です。

人の命は、軽く扱うものではありません。」


「……理解しております。」


王妃は即答した。


「へえ、やるじゃねぇかクラリッサ。

お前、今回は完全にやられたな。」


レオンハルトは不敵に笑う。


「たぶんあいつ、どっちでもよかったんだろうぜ。

9妃の子がバレても、バレなくてもな。

もし露呈すれば、エレノアもクラウディア公爵家も終わりだ。

お前にも飛び火する可能性はある。

だがクラリッサはアステリアの姫だ。

お前を国に連れて帰って、取り立てることもできる。

仮に失敗しても、エレノアは傷つく。

エレノアは、実際、良心と畏れでいまにも押し潰されそうだからな。」


まさに、その通りだった。


俺は完全に、クラリッサの掌の上で踊らされていた。


「王太子、一つ忠告を。

クラリッサ姫の言葉を、そのまま受け取ってはなりません。

姫は、おそらく誰よりも嫉妬深く、独占欲の強い方です。

表には出しませんが、内では確実に。」


「……ありがとうございます、王妃様。」


俺は、ようやく理解した。


“寵愛はいらない。必要なのは信頼と国益だけ”

――あの言葉を、俺は鵜呑みにしていたのだ。


「さて、8妃の件ですが、私も力を貸しましょう。

陛下も9妃の手前、表向き粛清したにすぎません。

命までは取られないでしょう。」


王妃は目を伏せる。


「ただし、処罰なしというわけにはいきません。

8妃は後宮を追われることになるでしょう。」


「ですが、それは彼女にとって悪いことではありません。

若い身であれば、外でやり直す道もある。

後のことは、私が手配いたします。

王太子は、自らの務めに集中なさい。」


俺は静かに頷いた。


それが――8妃にとっても最善だろう。


……それにしても、クラリッサ。


俺は、じわじわと怒りが広がっていくのを抑えられなかった。

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