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元ホストの俺、乙女ゲームの王太子に転生。婚約者(悪役令嬢)だけは絶対に守ります  作者: ふうこ0701
第6章 聖女の覚悟と涙

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第76話 それでも好き

俺は、エレノアを見舞っていた。


エレノアは相変わらず食欲がなく、顔色も優れない。


グレイソン医師からは、しばらく療養が必要で、

場合によっては長引くかもしれないと言われている。


「エレノア、どうだ?体調は?」


「はい、大丈夫です。殿下。」


そう微笑むエレノアの側には、ほとんど手のつけられていない食事が残っていた。


このところ、エレノアは部屋で食事をとっている。


宮の食事処では、どうしてもクラリッサと顔を合わせることになる。

だから俺もそれを許していたし、時間がある時は一緒に食事をとるようにしていた。


だが、その食事は、ほとんど減っていない。


「エレノア、食事が口に合わないのか?

何か、食べたいものはあるか?」


エレノアは小さく首を振る。


「いいえ、殿下……少し、食欲がなくて……。」


俺は、思わずため息をついた。


「だが、このままではエレノア、持たないぞ。

何でもいい、食べたいものを言ってくれ。

用意させる。」


そう言って、エレノアを抱き寄せる。


この状態が続いているせいで、エレノアはすっかり痩せてしまった。


やつれているはずなのに、どこか儚げで、美しい。


その美しさが、逆に俺を不安にさせた。


ふと、テーブルに目をやる。


そこに、林檎があった。


「エレノア、これなら食べられるんじゃないか?」


俺は林檎を手に取る。


「私が剥いてやろう。」


そう言って、ナイフを入れる。


「殿下、そのようなことは……」


エレノアは止めようとするが、


「大丈夫だ。」


と、そのまま続ける。


俺は、林檎をうさぎの形に切り分け、差し出した。


エレノアの目が、ほんの少しだけ明るくなる。


「これは、うさぎですか?殿下。」


「ああ、そうだ。うまいものだろ?」


俺が軽く笑うと、エレノアも小さく笑った。




その頃、リリアはセレナの部屋にいた。


「はあ……」


思わず、ため息がこぼれる。


「リリア、ため息ばかりついてると、幸せ逃げちゃうよ。」


セレナがぴしゃりと言う。


「だって……」


言いかけたリリアの言葉を、セレナが遮る。


「“だって”じゃない。わかってることでしょ。

レオニスがエレノアしか見えてないことなんて。

それわかってて、それでもあんたレオニスが好きなんでしょ?」


「そうなんだけど……あんなの見たら、平気でいられないよ。」


リリアの目には、今にも涙が滲んでいた。


セレナは一呼吸置いて、静かに言う。


「リリア、はっきり言うけど……あんた脈ないよ。

シルヴィアの件だって、たぶん黒なんだけど、レオニスは

エレノアのために真実を曲げようとしてる。」


「わかってる……わかってるわよ、そんなこと。

セレナ、優しくない。」


「優しくしたって、現実は変わらない。

レオニスはエレノアしか見てない。

それでもあんた、レオニスがいいの?」


言い方はきつい。

でも、その声はどこか優しかった。


「レオニスしか見えないし、好きになれないもん。」


リリアは、迷いなく答える。


「まあ、人なんてそのうち心変わりするものだし。

今はエレノアしか見えてなくても、この先チャンスがあるかもしれない。

リリアだって、前より好感度は上がってるし。」


セレナはそう言って、少しだけ肩をすくめる。


「でも、このままだとリリア。

あんた、レオニスから婚約破棄されるかもしれないよ。」


「いやよ、そんなの。」


「でしょ?でもさ、あんたの婚約の理由って、闇堕ち防ぐためだったよね。

でもそれ、自力で乗り越えちゃったでしょ。

だから、レオニスがあんたと結婚する理由……もうないんだよ。」


リリアは、じっとセレナを睨む。


「じゃあ、私が闇堕ちしかけたら、レオニスはまた……」


「それはダメ。リリア。

あんたは聖女なんだから、人を幸せにしないと。」


「どうすればいいのよ……」


リリアの声は、わずかに震えていた。


セレナは、静かに言った。


「一つだけ方法がある。」


リリアは、その言葉に目を見開き、セレナを見つめた。

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