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元ホストの俺、乙女ゲームの王太子に転生。婚約者(悪役令嬢)だけは絶対に守ります  作者: ふうこ0701
第6章 聖女の覚悟と涙

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第74話 壊れそうな心

「レオニス殿がエレノアを溺愛しているのは、

よくわかった。

しかし、このあり様で王妃は務まるのか?」


クラリッサの声は、鋭く響いた。


「エレノア以外に私の妻になれる女性はいない。」


俺は言い切る。


「溺愛するだけなら、何も正妃にする必要はない。

惻妃として可愛がってやればいい。

エレノアもその方が気が楽なんじゃないか?」


その言葉に、エレノアは俯く。


小さく震える肩。


その姿が、胸を締め付ける。


「姫は何か勘違いしていないか?

私が国益だけを考えて、正妃を選ぶのであれば、

すでにカミラ姫を正妃に迎えていただろう。

姫は結婚には、信頼と寵愛があればいいと言ったな?

だが、私はそれだけでは足りない。」


「では、レオニス殿は他に何が必要だと?」


クラリッサの視線が、真っ直ぐにこちらを射抜く。


「それは当然愛だ。」


その問いに、迷いはなかった。


「レオニス殿らしくない答えだ。」


「私らしくないか?姫は私をどんなふうに思っているかは知らないが、

私は存外凡庸な男なのだ。

愛する妻と子供に囲まれた温かい家庭が欲しい。

駆け引きや腹の探り合いでは安らげないからな。」


俺は、俺は言い切る。


クラリッサは、静かに息を吐いた。


「なるほど。レオニス殿は温かい家庭が欲しいのか。

だが、それは王妃の役目ではない。」


その言葉には、揺るぎない価値観が宿っている。


「クラリッサ姫は王妃になりたいのか?

では、どこぞの王の元へ嫁げばいい。

断言できるが、私の元ではクラリッサ姫が

王妃になることは絶対ないからな。」


クラリッサは、ふっと笑う。


「私は、ますますレオニス殿が気に入った。

こうも私の思うようにならない男は初めてだからな。」


そう言い残し、優雅にその場を去っていく。


張り詰めていた空気が、ゆっくりとほどけていく。


だが、クラリッサの背中が消えたその瞬間、


エレノアの体がふらりと揺れた。


「大丈夫か、エレノア。」


慌てて支えると、その体は驚くほど軽かった。


顔色は蒼白で、息も荒い。


今にも崩れ落ちそうなほどに。


俺は迷わず、エレノアを抱き上げた。


そのまま寝室へと運ぶ。


「グレイソン医師を呼べ。」


俺は命じる。


イザベラ夫人も、心配そうにエレノアを見つめていた。


やがて駆けつけたグレイソン医師は、すぐに診察を始める。


クレイソン医師の診断結果は、


「重度のストレスと心労。」だった。


(……わかっていたはずだ)


エレノアにとって、この状況がどれほど過酷か。


それでも、


(思っていた以上に、傷つけてしまった)


「すまない。」


思わず、言葉がこぼれた。


エレノアは、


「殿下が謝ることはございませんわ。

私の方こそ、殿下を煩わせてばかりで、申し訳ありません。」


と、無理に体を起こそうとする。


俺は、それを止めた。


「何も心配することはない。後は、私がなんとかするから。」


安心させたくて、そう言った。


だが、


「でも、私達のせいで、罪のない者が粛清されるのは辛い。」


震える声が、胸に刺さった。


「エレノア、粛清された男は、陛下の寵妃と知りつつ、

シルヴィアを自分の女、お腹の子は自分だと言い張った。

それは不敬に当たる。だから、決して罪がないわけじゃない。」


必死に言葉を探し、言い聞かせる。


「ですが、それは命を奪われないといけないほどの罪なのでしょうか?」


……答えられなかった。


(権力の前では、人の命はあまりにも軽い)


エレノアは、震えたまま動かない。


その姿を見ていられず、強く抱き寄せる。


「それに第8惻妃様だって。」


その一言で、エレノアの瞳から涙がこぼれ落ちた。


俺は、一度目を閉じる。


そして、静かに言葉を選んだ。


「男の事は手遅れだが、第8惻妃様については、

なんとか助ける。」


エレノアが、ゆっくりと顔を上げる。


その瞳は、まだ不安に揺れていた。


「今後は、できるだけ穏便にできるように取り計らうから。

だから、エレノア、君はもう、心を乱さず、ゆっくり休め。」


その言葉に、どれだけの重みがあるのか。


自分でもわかっていた。


それでも、今は、そう言うしかなかった。


崩れてしまいそうなエレノアを、ただ、抱きしめながら。

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