第70話 レオンハルトの流儀
俺がリリアと共に学院へ戻ると、校内は大騒ぎになっていた。
本来行われているはずの授業も中止となり、各教室は自習に切り替わっている。
「何かあったのか?」
俺がそう尋ねた瞬間、どこからともなくアルベルトとセレナが現れた。
「実はですね、、、レオニス。レオンハルト、カッコよかったですよ。」
「私がエレノアだったら一言言いたい。
私のために、争わないでって。」
セレナは目を輝かせている。
そんな二人をよそに、ルシアンが事情を説明した。
「それで、レオンハルト達は?」
「職員室に呼ばれている、エレノアもな。
なんせ、王子同士の喧嘩だからな。」
「わかった。」
俺はそう言い、職員室へ向かった。
職員室に着く頃には、財務大臣と共にレオンハルトたちが出てきたところだった。
「レオンハルト、入学早々、停学とは一体どういうことだ?」
レオンハルトは、かったるそうに答える。
「仕方ないだろ。」
「レオンハルト様、大臣、申し訳ございません。
私のせいで、レオンハルト様を」
エレノアは恐縮し、深く頭を下げた。
「あん?お前のせいじゃねー。
俺はな、ただ、セドリックの顔がむかついただけだ。」
その言葉と同時に、大臣の鉄槌が落ちる。
「痛えな、何しやがる。」
大臣は深いため息をついた。
「ムカついたから殴るとは?しかも他国の王太子を。」
「俺はな、我慢できないタチなんだよ。
それに、ちょうど通学もだるいと思ってたところだったんだ。
俺にとって停学は好都合だ。
だから、お前が気にすることはねーからな。」
レオンハルトはそう言い切った。
「でも、、、。」
エレノアは納得できない様子で言葉を詰まらせる。
「あと、エレノア。お前に一つ言っとく。
俺からはレオニスには何も言わねー。
だから、お前から説明しろ。」
「・・・・。」
エレノアは口籠る。
「あのな、エレノア。
後宮で、長生きする秘訣は、自分に正直であることだ。」
エレノアはレオンハルトを見つめた。
「後宮では、足の引っ張り合い、バカしあいが日常茶飯時だ。
だからこそ、レオニスだけには本心を言え。」
「本心を隠すことが相手のためなんて、思うな。
相手の大丈夫を信じて、気がついた時には手遅れだったなんてことになれば、
その方が傷つく。」
「それに、俺は大丈夫だと自分に言い聞かせて、壊れていく奴を何人も見かけた。
だから、お前はそうなるな。
レオニスがもしお前を受け止められなかったら、それはお前のせいじゃない。
レオニスがそこまでの男だったということだ。
その時は、お前から見ぎればいい。」
エレノアは大きく目を見開く。
「レオンハルト様・・・。」
カッコいいじゃないか、と俺は思った。
近くにいる大臣も、何も言わない。
だが、その空気がよほど照れくさかったのか、レオンハルトはそっぽを向いたまま言った。
「エレノア、もう一つ言っておく。
俺に惚れるなよ?」
「はい?」
「だから、俺に惚れるな。」
一瞬の沈黙。
その後、エレノアは顔を真っ赤にして言い放つ。
「惚れません。」
その様子に、俺は思わず吹き出してしまった。
レオンハルトとエレノアが、同時にこちらを見る。
俺はレオンハルトに声をかける。
「どうしたんだ?その顔?」
「うるせーよ。だがな、俺はその倍、ボコボコにしてやった。
俺の勝ちだな。」
レオンハルトはVサインを見せた。
「レオンハルト、ありがとう。エレノアを守ってくれて。」
俺がそう言うと、レオンハルトは何も言わず、その場を立ち去った。
入れ違いに、顔を腫らしたセドリックが出てくる。
見た通り、ダメージは明らかにセドリックの方が大きい。
俺はすれ違いざまに、セドリックへ耳打ちした。
「セドリック、今回だけだ。
今回だけは、レオンハルトに免じて見逃してやる。
だが、次はないと思え。」
セドリックは何も言わず、そのまま立ち去った。




