第67話 優等生と不良
レオンハルトは国王と財務大臣から呼び出され、
「学院でもう一度学び直せ。」
と命じられた。
本人はかなり不服そうだったが、逆らうことはできない。
とはいえ、レオンハルトの学院生活も残り一年もない。
闇属性持ちという理由で、彼が通学する前は一部の生徒たちが萎縮していた。
だが――
その漆黒の容姿は、あっという間に女生徒たちの心を鷲掴みにした。
しかし当の本人は、
「うるせーブス。」
と一蹴し、まとわりつく女生徒たちを容赦なく追い払う。
それを見ていたエレノアが、すぐに声を上げた。
「なんて事を言うんですか、レオンハルト様。」
だがレオンハルトは気にも留めず、
「うるせー、俺はヴィオレッタ以外にどう思われようと気にしないんだよ。」
と言い返す。
「それでも礼儀というものがあります。」
エレノアも引かない。
まるで優等生と不良だ。
俺は苦笑しながら、二人の間に入った。
「二人とも、その辺にしておけ。」
「ですが、殿下……」
納得のいかない顔で俺を睨むエレノア。
「エレノア、そんなに怒ると可愛い顔が台無しだぞ。」
そう言って宥めると、
「そうだそうだ。シワが増えるぞ。」
と、レオンハルトが軽口を叩いた。
「おい、レオンハルト。私のエレノアに失礼なことを言うな。」
そう釘を刺すが、本人はまったく気にした様子もない。
だが、悪気がないのは分かっている。
それ以上、咎めることはしなかった。
またある日のこと。
いつものようにアルベルトが、レオンハルトに声をかける。
「レオンハルト、あなたの女性の趣味、実に素晴らしい。
私も胸と尻が大きく、抱き心地の良い女性が好みです。
それにヴィオレッタ嬢は現在ご懐妊中。
あなたも不自由しているでしょう。ご一緒に花園へどうですか?」
……やはり、アルベルトはブレない。
それに対し、レオンハルトは即座に切り捨てた。
「そんな最低なことできるか。
自分の嫁が妊娠してるのに、帰って介抱するに決まってんだろうが。」
アルベルトはくすりと笑う。
「見た目によらず、意外と真面目なのですね。」
ヴィオレッタが妊娠中ということもあり、レオンハルトには側室の話もいくつか持ち上がっていたらしい。
だが彼は、きっぱりと断っている。
「俺の生涯はヴィオレッタ一人と決めている。
それに俺はもう王子じゃない、侯爵だ。
王子なら側室を娶る意味もあるが、侯爵には必要ねえ。」
その言葉に、俺は少しだけ羨ましさを覚えた。
俺は王太子という立場上、どうしても多くのしがらみに縛られる。
側妃の件も、自分の意思だけでは決められない。
かつては、王太子の立場などどうでもいいと思っていた。
だが――
最近は公務に関わるようになったせいか、
この国を良くしなければならないという、自覚が芽生え始めている。
それでも。
俺にとって一番大切なのは、変わらずエレノアだ。
そんな中、後宮では不穏な噂が流れ始めていた。
シルヴィアの子は、陛下の子ではない、、、、。
そんな不遜極まりない噂だ。
俺はクラウディア侯爵と共に、それを不敬として徹底的に否定する。
だが一度広まった噂は、簡単には消えない。
国王は今のところ、シルヴィアに夢中だ。
しかし、じわじわと広がる不安の気配を、
俺は止めることができなかった。




