(番外編)レオニスのお仕置き
その日、俺とエレノアは外国の要人を歓迎するため、晩餐会を開いていた。
そこには多種多様な料理が並び、歌手や踊り子たちによる宴も催されていた。
その中でも一人の踊り子、シュナの踊りは妖艶で美しく、人々の目を引いていた。
俺はその素晴らしい踊りに敬意を示し、褒美を取らせることにした。
「シュナ、お前の踊りは見事だった。」
「ありがとうございます、殿下。」
ただ、それだけのことだった。
エレノアは、
「殿下、あの者をお気に召しましたか?」
と優しく微笑む。
「????」
俺は意味がわからなかったが、
「まあ、あの踊りは美しかったな。」
と答えた。
だが、それだけでエレノアは随分と早とちりをした。
その夜。
俺が自室へ戻り、寝ようとした時のことだった。
部屋に女がいた。
よく見ると、それは踊り子のシュナだった。
シュナは言う。
「エレノア様のご命令で、殿下にお仕えするよう言われ、参りました。」
俺は大きく項垂れた。
「その必要はない、戻れ。」
そう言ったが、シュナは帰らない。
「私はエレノア様に言われたからではなく、殿下にお仕えしたいのです。」
そう言って、体をくっつけてくる。
「わかった。なら、お前はここで眠ればいい。私が出ていく。」
そう言い、俺は自室を後にした。
向かった先は、エレノアの部屋。
正妃の役目だの器量だの、そんなことを考えてやったのだろう。
俺も以前はそれで悩まされたが、今はだいぶ免疫がついていた。
部屋の前には護衛騎士が立っていた。
「殿下、エレノア様はすでにお休みです。」
「わかっている。だが、大丈夫だ。」
そう言って部屋へ入ろうとすると、護衛騎士が言う。
「殿下がお望みでしたら、侍女を呼び、エレノア様をおこし、夜伽の準備をいたします。」
その申し出を断り、俺はそのまま部屋へ入った。
月明かりに浮かぶエレノア。
すやすやと寝息を立てて眠っている。
その姿は、まるで天使のように可愛らしかった。
さっきまでの怒りも、その姿を見た瞬間、すべて消えた。
俺はそっと近づき、優しくキスをする。
エレノアは気づかず、眠り続けている。
「全く、人の気も知らないで。これでは、私に何をされても起きそうにないな。」
思わず苦笑する。
俺はエレノアを抱き寄せ、そのまま眠りについた。
今夜は、いい夢が見られそうだ。
翌朝。
目を覚ましたエレノアは、パニックになっていた。
「で、で、殿下、何故、こちらに……。」
真っ赤な顔で混乱している。
その姿は、正妃としての顔よりよほど可愛い。
「おはよう、エレノア。」
そう言って抱きしめ、キスをする。
エレノアは何が何だかわからない様子だ。
「殿下、昨夜は?」
「ああ、変な女が私の部屋に来てな。恐ろしくて、君の部屋に避難してきた。」
あっけらかんと答える。
「殿下は、あの者がお気に入りなのでは?」
またしても的外れなことを言う。
「違う。君の勘違いだ。私は踊りを褒めただけだ。」
「で、殿下、私たちは昨日……?」
エレノアは赤い顔のままこちらを睨む。
「ああ、寝た。君は可愛かったよ、エレノア。」
そう言って微笑む。
エレノアは狼狽える。
その姿に、思わず満足してしまう。
少しからかいすぎたか。
「エレノア、誤解しているようだから言っておく。私は君と“寝ただけ”だ。君の寝顔が可愛かった。」
エレノアはきょとんとする。
まだ理解していない顔だ。
「私は君の純潔は奪っていない。眠っている君を抱いても面白くはないからな。」
一瞬の沈黙。
「殿下!」
エレノアは叫んだ。
「だが、起きている君なら……。」
そう言って押し倒そうとすると、
「いけません、殿下。結婚するまで節度を保つと約束したではありませんか?」
とぴしゃりと言う。
「……なんだか傷つくな、その言い方。君は私に抱かれるのが嫌なのか?」
憂いた瞳で、少し沈んだ声で問いかける。
エレノアは慌てて、
「い、いえ、嫌ではございません。ただ、私は……。」
俺は大げさに喜ぶ。
「嫌ではないんだな。では……。」
再び押し倒そうとする。
「で、で、殿下、ダメです!」
俺は笑いながら言う。
「冗談だ。今は君の気持ちを尊重するよ。だが、結婚したその時は、我慢しない。」
そう言って抱き寄せる。
「ああ、それから。」
俺はエレノアを見つめる。
「また変な女が私の部屋に来たら、私はここへ避難する。」
そして微笑む。
「その時は、私の理性がもつかは保証できない。眠っていても、君の魅力は変わらないからな。」
そう言って、キスをした。
その後、エレノアが露骨に俺に女をあてがうことはなくなった。




