第66話 愛を選んだ王子
翌日、レオンハルトは国王に呼び出された。
俺もその場に同席する。
国王はすでに憤慨していた。
「お前という奴は……!」
宰相や騎士団長が、
「どうか、陛下、お鎮まりください。」
と必死に宥める。
宰相がレオンハルトに問いかける。
「レオンハルト殿下、何故、あのようなことを?」
レオンハルトの答えは単純だった。
「好きだからだよ。」
「は?」
宰相は首を傾げる。
レオンハルトは言い放つ。
「ヴィオレッタが好きだからだ。それ以外、理由はない。」
さらに、爆弾を落とす。
「それにな、ヴィオレッタはすでに俺の子供を妊娠している。だから、俺はヴィオレッタと結婚する。」
まさかの発言に、財務大臣の顔色はみるみる悪くなる。
「なんじゃと……?」
国王はレオンハルトを睨んだ。
そして、全員の視線が俺に集まる。
無理もない。ヴィオレッタは、俺の妃候補だったのだから。
俺は静かに口を開いた。
「陛下、財務大臣、おめでとうございます。お二人に初孫が誕生するのですね。」
「お前はそれでいいのか?」
国王が問う。
「もちろんです。それに、思い合っている二人を引き裂くなど、無粋な真似はできません。」
「おお、いいこと言うじゃないか、レオニス。」
レオンハルトが笑う。
宰相は頭を抱えた。
「それはそれとして、レオンハルト殿下が王位に復権すれば、また……。」
俺とレオンハルト。
二人の王子による権力争い。
それを懸念しているのだ。
その懸念は、レオンハルトの一言で消えた。
「俺は臣下に降る。王子には戻らない。ヴィオレッタに婿入りして、ヴァンデル公爵家の跡取りになる。」
「しかし、それは王妃が何というか……。」
国王は頭を抱える。
「大丈夫だ。母上も権力闘争の恐ろしさは身に染みてるはずだ。だから反対はしない。」
さらに続ける。
「第一、俺はこんなんだから、国王には向かない。国益より、外交より、何よりヴィオレッタが大切だ。だから王の座は、上品なレオニスに譲る。」
俺は言った。
「私は別に、お前が国王でも構わないのだがな。」
それは本心だった。
レオンハルトが王になっても、この国はきっと良くなる。
俺はそう確信していた。
「いやだね、そんな面倒ごと、俺に押し付けるな。」
レオンハルトは悪態をついた。
その後、レオンハルトとヴィオレッタの結婚は急ピッチで進められた。
レオンハルトは正式に、ヴァンデル公爵家へ婿入りする。
結婚式は、ヴァンデル公爵家で盛大に執り行われた。
「ヴィオレッタさん、お綺麗ですわ。」
エレノアが目を細める。
純白のウェディングドレスに身を包んだヴィオレッタは、とても美しかった。
「確かに美しいな。でも、二番目だ。」
エレノアが俺を見る。
「きっと、君の花嫁姿には敵わないさ。」
俺はエレノアを抱き寄せた。
ヴィオレッタの投げたウェディングブーケが空を舞う。
そして――
それは、エレノアの元へと舞い降りた。




