第65話 強引な求婚
騒動が一息つき、俺はレオンハルトの元へ向かった。
レオンハルトは、何故か椅子に縛られ、口を塞がれていた。
衛兵の一人が、
「レオンハルト殿下は暴れ回り、暴言を吐き、周囲に危害が出るため、無礼とは思いましたが、仕方なくこのように。」
と申し訳なさそうに言う。
俺は、
「まるで猛獣だな。」
と呟いた。
そして、カイルに命じる。
「離してやれ。」
カイルは命じられるまま、レオンハルトの縄を解いた。
レオンハルトはすぐに、
「レオニス、てめーよくも。」
と殴りかかろうとする。
カイルがそれを止めた。
「レオンハルト殿下、落ち着いてください。」
俺は言う。
「落ち着け、レオンハルト。私はお前に話がある。」
レオンハルトは、ひとまず俺の話に耳を傾けた。
「話とは、ヴィオレッタ嬢のことだ。」
「ヴィオレッタは俺の女だ。」
即答だった。
俺は苦笑する。
「それはわかっている。実はな、ヴィオレッタ嬢が妊娠した。」
「何ー貴様ー。」
レオンハルトは再び殴りかかろうとする。
俺は冷静に言った。
「私の子ではない。私はヴィオレッタ嬢に指一本触れていないからな。」
レオンハルトは一瞬考え込み、
「ヴィオレッタはそんな女じゃないし、そもそも俺以外には心は開かねー。」
と言って、拳を下ろした。
「で、お前はどうする?」
「そりゃあ、結婚してヴィオレッタを幸せにするに決まってんだろ。」
即答だった。
俺は続けて問う。
「お前、あの晩餐会でどうするつもりだったんだ?」
「ああ、あの後か。そりゃあ、ヴィオレッタをかっ攫って逃げる。」
「そうか、それは中々ロマンチックだな。だが、あの衛兵の中でか?」
「大丈夫だ、あんなもん。俺の闇魔法で目隠しすればなんとかなる。」
レオンハルトは自信満々だった。
「外交問題は?」
「知るか、そんなの。国王がなんとかすりゃあいいんだよ。」
「だが、ヴィオレッタ嬢をさらったとして、その後の生活はどうするつもりだったんだ?」
「そりゃあ、ヴィオレッタのためなら、盗賊でも盗人でも何でもなってやる。」
全部犯罪だ。
こいつには理屈が通じない。
俺はそう思った。
レオンハルトと一通り話をした後、ヴィオレッタと対面させることにした。
レオンハルトは駆け寄り、第一声を放つ。
「でかした、ヴィオレッタ。」
本気で、自分の子供ができたことを喜んでいた。
その瞳も笑顔も、優しさに満ちている。
ヴィオレッタは言う。
「何を仰っているんです、レオンハルト様。この子はレオンハルト様のお子ではありません。」
レオンハルトは再び俺を睨む。
「レオニス、やっぱり――」
言い終わる前に、ヴィオレッタが遮る。
「違います。レオニス殿下のお子でもありません。」
「じゃあ、誰の子なんだ?」
レオンハルトは食い下がる。
ヴィオレッタは冷たく言い放つ。
「レオンハルト殿下には関係ないことです。」
「レオンハルト殿下はカミラ様に頭を下げて、コーネリアに婿入りすべきです。この国の王子として、責務を果たさなくてはなりません。」
その言い分は、どこか正妃モードのエレノアを思わせた。
その様子を見ていたエレノアは、小声で言う。
「ヴィオレッタさんのお気持ちもわかりますが、あのような物言い、レオンハルト殿下がお気の毒ですわ。」
俺は苦笑するしかなかった。
その後も二人のやり取りは続く。
「ヴィオレッタ、俺に王子は務まらん。それにな、あのプライドの高い姫さんのプライドをズタズタにしたんだ。もうどうにもならない。だから、ヴィオレッタ、俺と結婚してくれ。」
「何言っているんですか、レオンハルト殿下。貴方の子ではないと言っているでしょう?」
ヴィオレッタも中々強情だ。
レオンハルトはため息をついた。
「わかった。じゃあ、そういうことにしてやる。だから、結婚しろ。」
「なんで、そうなるんですか?だから、貴方の子じゃないと――」
「わかったって言ってるだろ。細かいことは気にしない。次は俺の子、産んでくれ。」
「そういう問題では……それに陛下が――」
「くそ、親父、あんなんほっとけばいい。それに俺は知ってる。お前は俺にしか心は開かない。」
レオンハルトは真っ直ぐヴィオレッタを見て言った。
「お前は何も考えなくていい。ただ、俺に惚れてろ。そして、元気な子を産んでくれ。」
ヴィオレッタも、さすがにこの言葉には抗えなかった。
こうして、ヴィオレッタとレオンハルトの話はまとまった。




