第59話 祝福と告白
エレノアは、さらに俺に追い討ちをかける。
「殿下、どうぞヴィオレッタ様のおそばへ。
きっと、お心細くされていますわ。」
「エレノア、君は私が他の女性と子供を作って、
そんなに嬉しいのか?」
俺はたまらず、聞いた。
エレノアは首を傾げて、
「もちろん、殿下のお子であれば、どなたのお子であっても
私は祝福しますわ。」
と微笑んだ。
俺は、深くため息をついた。
ヴィオレッタの周囲は、ざわついていた。
誰もがヴィオレッタと俺に、祝福の言葉をかけてくる。
俺は、ヴィオレッタの前に出た。
本当は、「俺の子ではない」と言いたかった。
だが、先ほどのエレノアの態度を見ていると、
もうどうでもよくなってしまった。
エレノアは、俺が誰との間に子供を作ろうが、
気にならないのだろう。
それが、辛かった。
ヴィオレッタは、俺に気が付く。
そして、怯えた目で俺を見つめた。
父親の財務大臣が、
「殿下、お越しになってくれましたか?
ヴィオレッタが、娘が懐妊しましたぞ。」
と喜んでいた。
エレノアもそれに合わせて、
「そうですわ、ヴィオレッタさん。
元気なお子を産んでください。殿下もどうぞ、お言葉をかけてください。」
と明るく言う。
俺は、ただ虚しくなった。
「エレノア様、違うのです。殿下のお子ではございません。」
ヴィオレッタの言葉に、場が一気に静まり返る。
財務大臣が、
「何を言っておるのだ、ヴィオレッタ。」
とヴィオレッタを睨む。
「お許しください、殿下。でも、殿下のお子ではないんです。」
ヴィオレッタは涙ながらに、はっきりと宣言する。
呆然とするエレノア。
俺は、エレノアに静かに、
「そういうことだ。」
と告げる。
エレノアは、ぎゅっと唇を噛んで、ヴィオレッタを見ていた。
俺は、ため息をつきながらヴィオレッタを見る。
俺の子だと言い切ることもできたはずだ。
だが、ヴィオレッタはそうしなかった。
ヴィオレッタは悪い娘ではない、俺はそう思った。
「ヴィオレッタ嬢、事情を話してもらえないだろうか?」
と俺は、優しく問いかける。
ヴィオレッタは、涙ながらに答えた。
「私には、殿下の婚約前より思う方がおりました。
その方を忘れることはできませんでした。
申し訳ございません、殿下。」
と涙ながらに頭を下げる。
「私は、ヴィオレッタ嬢、怒ってはいないし、
君を責める気も、責める資格もない。
私は、君にとって良い男にはなれなかった。だからお互い様だ。」
俺はヴィオレッタに告げる。
財務大臣はことの重大さに気がつき、
「お前はなんて言うことをしでかしたんだ。」
とヴィオレッタを叩こうとする。
それを俺は止める。
「大臣、私とヴィオレッタ嬢の婚約は解消する。
だから、今回の件で大臣が責任を問われることはない。
私はヴィオレッタ嬢にも健やかに過ごしてほしいし、
優秀な財務大臣であるあなたを失いたくもない。
……理解してもらえるだろうか?」
大臣は俺を見て、
「殿下、申し訳ありません。」
と頭を下げる。
「陛下にも、私からうまいこと言うから、安心していい。」
俺はそう告げた。
「でも、ヴィオレッタ嬢。子供は一人では作れない。
相手は誰なのだ?」
俺は尋ねる。
ヴィオレッタは、
「それは申し上げられません。私が愚かなのです。」
と相手を庇う。
大臣も、
「そうだ、相手を言え。八つ裂きにしてやる。」
とヴィオレッタを怒鳴りつける。
俺は、またため息をつく。
ヴィオレッタは相手を庇っているのは明らかだった。
「まあいい。そのことは、いずれ改めて話そう。
今日はヴィオレッタ嬢も疲れているだろうし、これ以上は体に触ってはいけない。
詳しい話は日を改める。私はこれで失礼する。」
と言い、その場を立ち去った。




