第58話 身に覚えのない、祝福
シルヴィアは、無事に王宮入りを果たした。
ひとまずは、これで一息つける。
後は、警戒しつつ、成り行きを見守る。
国王は大変喜び、第9惻妃となったシルヴィアを歓迎したらしい。
妊娠しているというのに、早速寝所にはべらしたとも聞く。
なんとも呆れた話だ。
そんな中、俺は、アルベルト、ルシアン、カイルと乗馬をしていた。
そして、休憩となった時のことだ。
アルベルトは、俺のバケットの中を見て、笑う。
「どうしたんですか?それ。」
「エレノアが用意してくれたんだ。」
俺は肩をすくめる。
中に入っているのは、大量のゆで卵だった。
「でも、そんなにゆでた卵ばかり食べれたもんじゃないだろ。
あの女は一体、何を考えているのか。」
ルシアンは呆れている。
「だが、エレノアの一生懸命な顔を見ているとなんだか、無碍にできなくてな。」
エレノアの顔を思い浮かべる。
「レオニス、あなた、エレノアに甘すぎます。このままじゃ、エレノアに尻に敷かれますよ。」
アルベルトは言う。
「アルベルト、それはもう、手遅れだ。私は、エレノアにはすでに叶わない。」
アルベルトは気の毒そうに俺を見つめて、
「あなたも大変ですね。」
と肩をすくめる。
「エレノアといえば、知っています?」
「なんだ、アルベルト。」
「エレノアは、料理に自身の火魔法を使うらしんです。セレナが言っていました。
この間は、肉を焼こうとして、最大級の火魔法を使おうとして、エマに止められたらしいです。」
「火魔法か?それは豪快だな。」
俺は、苦笑する。
「しかも、火加減のことを指摘すると、どうしたと思います?」
「火加減を調節するために、火魔法の鍛錬をし始めたらしいですよ。」
アルベルトは明らかに受けている。
「それ、魔法の使い方間違っているな。」
ルシアンは心底、呆れている。
料理の火加減調整。
でも、エレノアにとっては、火魔力の調整に変換されるのか。
俺も思わず、笑ってしまう。
「で、セレナが真顔で言ったそうですよ。“エレノア、料理は作るものじゃない、食べるものだ”って」
俺は思わず、吹き出した。
笑っては可哀想と思っても、天然なエレノアが可愛すぎる。
カイルは、微妙な顔をしていた。
そんな俺達が、穏やかな日常を楽しんでいると、
エマがこちらへ向かってやってきた。
「何か、あったか?」
俺は聞く。
エマは、興奮した様子で、
「おめでとうございます、殿下。」
と言い出した。
俺は、意味がわからず、きょとんとする。
「殿下の妃である、ヴィオレッタ様がご懐妊されました。」
「なに?」
俺は、眉を潜める。
当たり前だが、俺に身に覚えはない。
アルベルトは俺を見て、
「なるほど、最近付き合いが悪かったのはそう言うことですか?」
と納得する。
ルシアンは、
「忙しいと言いつつ、やることはやっていたのだな。」
と俺をみる。
「待て。身に覚えが。」
俺は言うが、アルベルトは、
「別にいいんじゃないですか?
おめでたいですよ、あなたの子供の誕生は。」
とにこやかに答える。
もう、何を言ってもこれは、信用されないな。
俺は、エマに促されつつ、王宮へ戻る。
王宮では、エレノアやクレイソン医師、財務大臣が集まっていた。
エレノアはものすごい美しい笑顔で、
「おめでとうございます、殿下。」
と出迎え、俺はただただ落胆した。




