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元ホストの俺、乙女ゲームの王太子に転生。婚約者(悪役令嬢)だけは絶対に守ります  作者: ふうこ0701
第5章 漆黒の王子と二つの懐妊

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第55章 複雑な公爵家

「殿下、お話はお聞きになられましたでしょう?」


エレノアは不安そうに俺を見つめる。


「どうやら、私に弟か妹ができるらしいな。

陛下も大変お喜びだと聞く」


俺はわざと明るく振る舞った。


「殿下……ですが、シルヴィアは……」


エレノアが言いかけた瞬間、俺はそれを遮るように口づけた。


「殿下……?」


不安げに見上げるエレノア。


「エレノア、それ以上は口にしてはいけない。絶対にだ」


俺は低く言い聞かせる。


「ですが……畏れ多いですわ……」


「明るみに出れば大事になる。

君や君の家族がどうなるか、分からない」


エレノアは、ことの重大さを理解し、静かに震え出した。


「脅かしてすまない。だが約束する」


俺はエレノアの肩に手を置く。


「どんな事態になっても、私は君を守る。君だけは、絶対に」


「だが、できれば最悪の事態は避けたい。

君自身を守れても、君の望む生き方はできなくなるだろうから」


そして、俺は瞳を伏せる。


「……私は欲深い。

君を閉じ込めて、どんな悲しみや苦しみからも遠ざけたいとさえ思う」


庭の花に目をやる。


「この花のように愛で、寵愛だけを与えて守りたいとも思う。

だが、それは私の欲であって、君の望みではないだろう」


エレノアは震える声で言った。


「……では、どうすればよろしいのですか?」


「大丈夫だ、エレノア」


できるだけ穏やかに告げる。


エレノアを安心させるために。


「最悪のことにはならない。……いや、させない」


一息ついて、続ける。


「後は私が何とかする。だから、君は何も考えなくていい。

これ以上、この件に関わるな」


そう言って、俺はエレノアを抱きしめた。




エレノアをなだめた後、俺はクラウディア侯爵家へ向かった。


屋敷には、侯爵とその夫人たち、そしてシルヴィア嬢が集まっていた。


どうやら今後の対応を話し合っているらしい。


侯爵は俺に気づくと、慌てて跪く。


「申し訳ございません、殿下。我が家はただ今、立て込んでおりまして……お見苦しいところを」


それに続き、夫人たち、シルヴィア嬢も頭を下げる。


俺は、イザベラ夫人、エレノアの母に視線を向けた。


「義母上、お久しぶりです」


丁寧に挨拶する。


他の夫人たちには、形式的なものに留めた。


イザベラ夫人を見て、ふと思う。


――エレノアは、母親似なのだな。


シルヴィアは、こちらを値踏みするように見ていた。


確かに美しい。

ピンクの髪に、エメラルドグリーンの瞳。


陛下の好みなのだろう。


……だが、こんな少女にまで手を出すとは。


内心、軽蔑せずにはいられなかった。


シルヴィアは確かに美しい。だが、それだけだ。


エレノアとは違う。

そこに“品”は感じられない。


やはり、似てはいない。


シルヴィアの母、第二夫人が口を開く。


「ねえ、殿下。娘は王宮入りできますわよね?

なんといっても、陛下のお子を授かったのですから」


侯爵が慌てて制する。


「やめないか、不敬であるぞ」


第三夫人が続ける。


「本当に陛下のお子なのかしら。

私の姉だって長年お仕えしているのに、お子には恵まれておりませんもの」


ああ、そうか。


第三夫人は、国王の第5惻妃の妹だったな。


何とも見苦しい。


「おやめなさい、お二人とも。我が家の恥になります」


イザベラ夫人が静かに諌める。


その物言いは、エレノアにそっくりだった。


年を重ねれば、ああなるのか。


そう思うと、不思議と口元が緩む。


イザベラ夫人は、年齢を重ねてもなお美しい。


……それなのに。


なぜ侯爵は、この人を差し置いて側室など持つのか。


俺には、理解できなかった。

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