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元ホストの俺、乙女ゲームの王太子に転生。婚約者(悪役令嬢)だけは絶対に守ります  作者: ふうこ0701
第5章 漆黒の王子と二つの懐妊

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第54話 疑惑の懐妊

「殿下、お耳に入れたいお話がございます」


宰相は血相を変えて現れた。


俺は顔を上げず、書類に目を落としたまま答える。


「どうした」


「陛下が、ある年若いご令嬢にご寵愛を与えられました。そのご令嬢が、陛下のお子を懐妊されたのです」


宰相は頭を抱えている。


「陛下のことだ。驚くことでもあるまい」


俺は淡々と答えた。


国王の病は、相当重いらしい。


「ですが、殿下」


宰相は言葉を続ける。


「実のところ、陛下は第二惻妃様との間に姫君を授かって以降、お子を授かっておりません。

姫君ご誕生の後、大病を患われ、それ以来、お子はできにくいお身体なのです」


「……」


「陛下ご本人はお認めになりません。お相手を変えては励んでおられるものの、この十年、成果はございませんでした」


さらに宰相は声を落とした。


「今回の件、陛下はご寵愛を与えたこと自体は認めておられますが……その記憶が曖昧なのです。

外での出来事ということもあり、何とも不謹慎ではありますが……陛下のお子ではない可能性もございます」


「なるほど。言いたいことは分かった」


俺は書類から目を離さずに言う。


「だが、陛下のなさったことだ。私にどうこうできる話ではないだろう」


「……ですが、殿下」


宰相は俺を見た。


「もし、そのご令嬢の子が陛下の子でなかった場合、どうなるとお考えですか?」


「大罪だな」


俺は淡々と答えた。


「陛下を謀った罪。一族皆殺しもあり得る。

軽く済んでも流刑だろう」


そして付け加える。


「そんな浅はかな真似をしたのなら、自業自得だ」


「……殿下のおっしゃる通りです」


宰相は一度言葉を切り、深くため息をついた。


「ですが、この件、殿下は必ず関わることになります」


俺は、そこで初めて顔を上げた。


「どういう意味だ?」


「そのご令嬢は、クラウディア侯爵家の令嬢。

つまり、エレノア嬢の妹君でございます」


その一言で、俺は、全て理解した。


宰相は続ける。


「エレノア嬢のご家庭の事情はご存じでしょう。

侯爵と正室、イザベラ夫人との間にエレノア嬢。

第三夫人との間にご長男。

そして今回のご令嬢は……侯爵と踊り子との間に生まれた、公爵家の次女、シルヴィア嬢です」


「……」


「その軽率な娘のために、エレノア嬢が危険に晒されることになります」


俺の中で、静かに怒りが膨らんだ。


本来であれば、エレノアの妹である以上、守るべき存在だ。


だが、話を聞く限り、似ても似つかない女らしい。


「ならば」


俺は言い放った。


「その子は、陛下の子として押し通す」


「……殿下」


「何としてもだ。絶対に」


宰相と別れた後、俺は公務を放り出し、エレノアの元へ向かった。


おそらく、エレノアの耳にも届いているはずだ。

エレノアが、どんな顔をしているか。


考えただけで、居ても立ってもいられなかった。


エレノアは中庭で花を愛でていた。


だが、その姿はどこか沈んで見える。


「エレノア」


声をかけると、エレノアは振り返った。


潤んだ瞳が、まっすぐに俺を見つめる。


憂いを帯びたその表情も、美しい。


だが。


やはり、エレノアには笑っていてほしいと俺は思った。

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