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元ホストの俺、乙女ゲームの王太子に転生。婚約者(悪役令嬢)だけは絶対に守ります  作者: ふうこ0701
第4章 女王と忠犬

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第43話 会えない時間の中で

女王との取引は成立した。


女王の出した条件。


それは、女王が満足するまで仕えること。


その間、俺に自由はない。


エレノアにも、会えない。


会えないと分かった瞬間、逆に想いは強くなる。


会いたい。


ただ、それだけなのに、それが許されない。


恋しさが、胸を締め付ける。


俺は……耐えられるのだろうか。




学院では、俺が公務のため、しばらく出席できないことが伝えられていた。


学院は、大いにざわめく。


「カイル、あなたは何か知っていますか?」


アルベルトが、いつもの調子で問いかける。


カイルは、無言。


だが、その表情には明らかな苛立ちが滲んでいた。


アルベルトも、それを察する。


「カイル、どうしたんです?機嫌が悪いですね。」


「殿下はいつもそうだ。御身のお立場を理解されているのか?」


カイルの声は、わずかに震えていた。


「だが、今回は仕方あるまい。何やら国の重大事項らしいからな。」


ルシアンも、神妙な面持ちでそう言う。


その傍らで、エレノアは、ただ静かに、そのやり取りを見つめていた。




その頃、俺は、女王の意向により、地方の湖畔へと来ていた。


女王はここで、数日間のバカンスを楽しむらしい。


国を放っておいて、若い男を連れてバカンスとは……。


いい気なものだな。


心の中で毒づく。


だが、それを顔に出すことはない。


「レオニス。」


「なんでしょう?陛下。」


俺は、いつものように愛想笑いを浮かべる。


「疲れた。」


女王は、尊大に言い放った。


「お疲れですか?では、少しマッサージでもいたしましょうか。」


そう言って、俺は女王の肩に手を置く。


さらに、退屈させないように。


女王の興味を引きそうな話題を、次々と口にした。


機嫌を損ねれば、すべてが終わる。


だから、気を抜くことは許されない。


ある時。


女王は、食事が気に入らなかったらしく、露骨に機嫌を悪くした。


召使たちは、ただ怯えている。


「私が何か作りましょうか?」


そう申し出ると、女王は、興味深そうに俺を見た。


「はい、女王の口に合うかは分かりませんが、簡単なものなら。」


俺はそう答えた。


前世の俺は、料理が得意だった。


梨香子と同棲していたが、彼女は家事がまったくできなかった。


いや、しなかった、が正しいか。


「ピアノを弾くから、手荒れしたくない」


それが、彼女の言い分だった。


だから、家事全般は俺の役目。


しかも偏食で、料理には気を遣った。


今思えば、ずいぶん都合よく扱われていたものだ。


そんなことを思い出しながら、


ふと、エレノアのことが浮かぶ。


あの白い手。


きっと、家事などしたこともない、綺麗な手だ。


しかも、不器用。


あの“せんべいクッキー”を思い出せば、一目瞭然だ。


……いや、むしろ。


エレノアが料理なんてしたら、後片付けが大変そうだな。


思わず、苦笑する。


エレノアお嬢様のためなら、料理でも、洗濯でも、何でも引き受ける。


そう思うと、自然と口元が緩んだ。


やがて、料理は完成した。


女王はそれを見て、目を輝かせる。


「何だ、これは見たことがない。珍しい。」


興味深そうに口にし、そして、すべて平らげた。


その表情は、明らかに満足していた。


俺が作った料理。


それは、オムライスだった。

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