第42話 君を守るための嘘
次の日、早朝。
俺は国王に呼び出された。
しかもまた、宰相や大臣、騎士団長など、錚々たる面子が揃っている。
その中に、エレノアの姿もあった。
コーネリアの動きは、思っていたより早いな。
そう感じた。
エレノアの父、クラウゼル侯爵の顔も暗い。
やはり、そういうことか。
「父上、このままではエレノアが学院に遅刻してしまいます。
生徒会長であるエレノアが遅刻など、示しがつかない。
なので、エレノアは退出させます。」
「何を勝手な真似を!」
国王が怒鳴る。
エレノアが、びくりと肩を震わせた。
「陛下、私の可愛いエレノアに何をするんですか?
それ以上の無礼は、陛下でも許しませんよ。」
俺は、国王を睨みつけた。
そして、エレノアへと向き直る。
「私はどうせ、しばらく学院には行けそうにないから。
エレノアは先に行って。大丈夫だから。」
笑顔を作り、そう告げる。
エレノアは不安そうにこちらを見つめていたが、やがて静かに一礼し、その場を後にした。
扉が閉まる。
その瞬間、空気が一変した。
「レオニス、命じる。カミラ姫と結婚しろ。」
やはりな。
俺は、静かに答える。
「お断りします。できません。」
「できるできないの問題ではない!」
怒号が、部屋に響き渡る。
またか。
本当に、この人は飽きないな。
「陛下、お聞きください。今回は私も辛酸を舐めております。」
ゆっくりと言葉を選ぶ。
「私は、こうなることを見越して、エリザベート陛下の保護を受けました。
女王に忠実な犬に成り下がったのです。」
場の空気が凍りつく。
「私自身には力はありませんが、私の“飼い主”にはあります。」
俺は、微笑んだ。
「なんじゃと……勝手なことを!」
国王が頭を抱える。
「勝手なこと?陛下が最初に望んでいたことではないですか?」
しれっと言い返す。
周囲がざわめく。
「ついでに言いますが、お陰様で女王陛下からは気に入られました。」
わずかに間を置く。
「だから陛下、絶対にカミラ姫との結婚は断ってください。」
空気が張り詰める。
「私も、陛下の出方次第では考えがあります。
女王陛下におねだりして、この国を乗っ取ってしまうかもしれません。」
俺は、真っ直ぐに国王を見た。
「お前は、余を脅すのか?」
「いいえ、忠告です。
頭の良い陛下と臣下の者達なら、ご理解いただけると信じております。」
国王は、苦々しく俺を睨みつける。
「じゃが、女王はそこまでお前のために動くのか?」
「陛下。どんな名君でも寵妃には陥落されるものです。
国を滅ぼした例も後を絶ちません。」
俺は、言い放つ。
「私は寵妃ではありませんが、女王の寵愛を得ているのは事実。
滞在中は、女王の元に留まるよう言われておりますから。」
沈黙。
その中で、宰相が口を開いた。
「それで、魔法石の方は確保できましたでしょうか?」
「いいえ。あくまでお願いしたのは、カミラ姫との結婚を回避すること。
図々しく二つも願うほど、強欲ではありませんから。」
宰相は、わずかに肩を落とした。
エレノアを退出させた理由。
それは、この話を聞かせたくなかったからだ。
いずれ、彼女も知ることになるだろう。
俺が選んだ、この道を。
そして、この選択を、彼女は受け入れてくれるのだろうか。




