第36話 誰よりも君を選ぶ
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噂を聞きつけ、やってきたのはアルベルトだった。
「いいなー、レオニス、代わってあげましょうか?
私も、妖麗なヴァレンシア女王の相手をしたい。」
「その上、カミラ姫もかなりの美少女と聞く。」
アルベルトはうっとりとした表情を浮かべる。
全く呑気なやつだ。
その間にも、俺は動いていた。
女王、姫、そして王太子。
その人となり、癖、好み、過去の外交履歴。
手に入る情報は、すべて頭に叩き込む。
エレノアもまた、生徒会長として姫や王太子の対応に追われるはずだ。
……忙しくなるな。
そして迎えた、歓迎の式典。
会場は眩いほどの光と熱気に包まれていた。
まず姿を現したのは、ヴァレンシアのエリザベート女王。
ワインレッドの髪と瞳。
ただ立っているだけで、周囲を支配する存在感。
妖艶、その言葉をも圧倒する。
次に現れたのは、コーネリア公国のカミラ姫。
銀の髪に、透き通るような白い肌。
グレイの瞳は冷静で、感情を一切見せない。
美しい。
だが、近づけば切り裂かれるような鋭さがあった。
そして、アステリア王国の王太子、セドリック。
クラリッサによく似た、ダークネイビーの髪と瞳。
正統派の美しさと気品を兼ね備えた青年。
ご令嬢達が熱狂するのも無理はない。
やがて、宴も進み、空気が変わる。
「今日は美しい女性が集まっています。レオニス殿下、セドリック殿下、両殿下に
この中で最も誰が美しいのか、選んでいただきましょう。」
宰相が、バラを差し出す。
誰もが思っている。
女王か、姫か。
そのどちらかだと。
「どちらに行かれるのです?」
セドリック王子が、小さく問いかけてくる。
視線が集まる。
俺はバラを受け取った。
そして、迷いなく歩き出す。
ざわめきが広がる中。
俺は、一人の女性の前で足を止めた。
エレノア。
姫でも、女王でもない。
ただ一人の、俺の婚約者。
「私にとってこの世で一番美しい女性は、妻となるエレノアだ。」
高々と宣言した。
空気が、固まった。
宰相も、国王も、言葉を失っていた。
エレノアは、ただ、呆然と立ち尽くしている。
「殿下?これは?」
「私にとって、一番はいつでも君だけだ。それに、あちらのお二人も美しくはあるが、
君には叶わない。」
「そんな、、、。」
頬を染めるエレノア。
その表情すら、愛おしい。
「是非とも、美しい君のファーストダンスの栄光を私にくれないか?」
俺は、静かに膝をついた。
ざわめきが、波のように広がる。
さて。
セドリック王子はどう動く?
視線だけで彼を見る。
王子は一瞬、完全に止まった。
、、、、まあ、そうなるだろうな。
そして、音楽が流れ始める。
まるで、この場を救うかのように。
俺はエレノアの手を取り、踊り出した。
人々の視線を浴びながら。
青いドレスをまとった彼女は、光の中で一際輝いていた。
間違いない。
この場で、誰よりも美しい。
俺の心を、唯一満たせる存在だった。




