第25話 運命への反逆
毎週土曜日21時更新です
今日は、朝から雨確認したので、更新します。
「レオニス、どうしよう……。そうだった、私、聖女に転生したわけじゃない」
セレナは頭を抱えた。
「まあ、シナリオ通りにいくとは限らないけどな」
「えっ……?」
「だって、すでに私とお前という存在がいる時点で、シナリオは狂っている」
その言葉に、セレナの表情がぱっと明るくなる。
「それに、王太后も公認だというなら――私も協力しよう」
「やったー!レオニス、いいやつだね!」
セレナは一気に舞い上がる。
「カイル、そういうことだ。わかったな?」
カイルは眉をひそめながらも、静かに頷いた。
その様子を見て、アルベルトは苦笑する。
「カイル……いろいろと、すまない」
そう言って頭を下げていた。
「ねえ、なんでレオニスって聖女に惹かれないの?聖女、かわいいじゃん」
「私が好きなのは――」
「わかってる、悪役令嬢の方でしょ。たしか、エクレア」
勝手に名前を菓子に変換するセレナ。
「違う、エレノアだ」
即座に訂正する。
「あ、それそれ。でもさ、レオニスルートって、バッドエンドだと聖女の力が失われて、世界が大混乱になるんじゃなかった?」
「何だと?」
セレナは少し考え込む。
「うーん、私も詳しくは覚えてないけど……友達がレオニス推しで、そんなこと言ってた気がする。つまり、聖女が失意のまま闇落ちするんだよね」
さらりと、とんでもないことを言う。
だが――まったくあり得ない話でもなかった。
現に、リリアはすでに闇に堕ちかけている。
「だからさ、エクレアは諦めて、世界のためにリリアにしなよ」
「無理だ」
即答だった。
「でも、せっかくカイル様と結婚できてもさ、世界が不安定だったら楽しめないじゃん」
どこまでも自己中心的だ。
「ちなみに、私がリリアとハッピーエンドになった場合はどうなる?」
「エレノアが断罪される。たしか幽閉……だったと思うけど」
セレナは少し言い淀む。
「でも、悪役令嬢ってプライド高いから、自分で毒を――」
「そんなことはさせない。絶対に」
言い切る。
エレノアが断罪されるなど――あり得ない。
受け入れられるはずがなかった。
「じゃあ、リリアどうするの?」
「さっきも言っただろう。シナリオ通りになるとは限らない。いや――させない」
セレナはじっと俺を見る。
「それに、リリアが状況的にカイルルートに変わる可能性だってある」
「はあ?それ絶対ダメなやつじゃん」
少し考え込んだあと、セレナが顔を上げる。
「じゃあさ、こういうのは?ちょっとマイナールートだけど……お兄様とリリアをくっつける」
さらっと言い放つ。
「我が家としても、いつまでもフラフラしてる長男が片付くし、一石二鳥!」
得意げな顔だった。
「なるほど、それはいいかもしれん」
俺もつい笑いながらアルベルトを見る。
「あの……全部聞こえていますよ、あなたたちの悪巧みは」
アルベルトはため息をつく。
「それに、私は恐れ多くて聖女となど結婚できません」
するとすかさず、セレナが口を挟む。
「えー、なんで?じゃあクラリッサは?ああいうの、お兄様のタイプじゃない?」
アルベルトは頭を抱えた。
「……なぜ、レオニスの婚約者限定なんですか?」
「そりゃあ、カイル様と私の成婚率を上げるためでしょ」
なぜか胸を張るセレナ。
「……さっきから、カイルの意思は完全に無視ですね」
アルベルトが呆れ気味に言う。
「その件なら大丈夫!カイル様を幸せにする自信あるから!」
どこから来るのか分からない自信。
「たとえこの世が闇に包まれようと、私とカイル様はきっと生き残ってみせますわ!」
意味はよくわからないが、とにかく自信満々だ。
カイルはなんとも言えない表情をしていた。
とりあえず――
俺とセレナの協力関係は成立した。
これは婚約というより、“盟約”と呼ぶべきものかもしれない。
だが――
俺の中には、拭えない一抹の不安が残っていた。




