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元ホストの俺、乙女ゲームの王太子に転生。婚約者(悪役令嬢)だけは絶対に守ります  作者: ふうこ0701
第3章 婚約ではなく、盟約

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第20話 王太子の憂鬱

土曜日の21時更新です


今日も雨が降ったので、6月企画で更新します。

次の日の朝。


俺は、いつものようにエレノアと通学した。


だが、会話はなかった。


エレノアも何も話さない。

俺も、何も言わない。


同席しているカイルは、もともと寡黙な男だ。


そのせいで、余計に気まずい空気だけが流れていた。


学院では、すでに俺達の噂で持ちきりだった。


リリア、セレナ、ヴィオレッタ、クラリッサ。

他の婚約者達も注目の的だ。


「ねえ、結局、誰が殿下のお気に入りになるのかしら?」


「やっぱり聖女様じゃない?可愛いし。」


「でも、クラリッサ様もすごいわよね。あの雰囲気。」


好き勝手言いやがって。


そんな噂が、さらに俺の機嫌を逆撫でする。


そんな中、アルベルトがいつもの調子で声をかけてきた。


「レオニス、ついに五人ですか。さすがにすごいですね。」


俺はアルベルトを睨む。


「……その中に、お前の妹もいたな。」


「……ええ。」


アルベルトは一瞬言葉を詰まらせる。


そして、


「その件ですが、セレナは……少し事情がありまして。記憶が曖昧で、淑女としての振る舞いも少し……。多少、突飛なことを言っても、大目に見ていただけると助かります。」


珍しく歯切れが悪い。


「別にどうでもいい。興味もない。」


俺はそっけなく言い捨てた。


「……機嫌悪いですね。何かありましたか?」


「別に。」


短く答えて、席を立つ。


「レオニス、どこに行くんです?もう授業が――」


アルベルトの声を背中で聞き流し、そのまま教室を出た。


行き先なんて決めていない。


ただ、そのまま学院を出ようとした時だった。


「殿下、どちらへ?」


声をかけてきたのは、一人の女生徒だった。


「今日は、勉強する気分じゃない。少しサボる。」


そう答えると、彼女はぱっと表情を明るくした。


「殿下でも、そんな日があるんですね。」


「……私も、ご一緒してもいいですか?」


そう言って、自然に腕を絡めてくる。


「いいのか?授業をサボることになるぞ。」


「はい。でも……殿下と一緒の方が楽しそうです。」


……好きにしろ。


俺はそれ以上何も言わず、そのまま彼女と学院を出た。


彼女の名前は、マリア・ロンサール。


子爵家の四女で、明るくてよく喋るタイプだ。


正直、特に興味はなかったが、流れで彼女の勧めるカフェに入った。


そこは、色とりどりのフルーツをふんだんに使ったスイーツと、フルーツティーが売りの店らしい。


だが――


そんなものを楽しむ余裕はなかった。


頭の中にあるのは、エレノアのことばかりだった。


ここにエレノアを連れてきたら、喜ぶだろうな、とか。

今頃、何をしているのか、とか。


授業中、真剣に話を聞くエレノアの顔が、何度も浮かんでくる。


マリアは、楽しそうに自分の話をしていた。


家のこと、友人のこと、好きなもの。


きっと色々話していたんだろう。


でも、ほとんど覚えていない。


ただ、適当に相槌を打っていただけだった。


結局、学院をサボっても、気分はまったく晴れなかった。




その頃、学院では騒ぎになっていた。


俺の姿が見えないと気づいたカイルが、慌てて動き出す。


「殿下の御身に何かあっては大問題だ。」


教員達も慌てて対応に追われる。


そこへ、一人の生徒が言った。


「殿下なら、マリア・ロンサールと一緒に外へ出るのを見ました。」


事件性はないと判断されたが、それでも騎士団による確認は進められた。


そんなことも知らず、俺はマリアを送り届け、そのまま王宮へ戻った。


待っていたのは、カイルとアルベルト、それにルシアンだった。


「殿下、何をなさっていたのですか。」


「……ただのサボりだ。」


「あなたは王太子です。軽々しく外へ出ていい立場ではありません。」


カイルの声は、いつになく厳しかった。


「王太子、王太子……そればかりだな。」


思わず、口からこぼれる。


カイルが怪訝そうにこちらを見る。


「……もう、やめたいんだよ。」


「真面目にやったところで、面倒ごとばかりだ。何もいいことなんてない。」


一度口にしてしまうと、止まらなかった。


「――品行方正な王太子なんて、やめる。」


そう言い切った。

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