第18話 王太后の提案
3章、スタートです
毎週土曜21時の更新になります
俺は、エレノアと話がしたかった。
でも、それは許されず、数日の時がたった。
そして、さらに事態は思わぬ方向に進んだ。
王太后、エリザベート・ルミナリアより、新たな提案が出されたのだ。
王太后、国王の母で、レオニスの祖母。
今は実質、隠居しているとはいえ、国王もこの王太后には頭が上がらない。
またしても、宰相、魔法師団長、教会関係者、エレノア、クラウディア公爵、そして、リリア、早々たるメンバーが集められていた。
数日ぶりにエレノアの方を見た。
相変わらず、凛として美しい。
「レオニス、来たか?」
王太后が、俺を見た。
「はい、参りました。お祖母様。」
王太后は、品格と威厳を保つ、白銀の髪色をしていた。
その風貌から、若い頃は、かなりの美女だったと予想がついた。
そして、王太后が、次に口にした言葉は、周囲のものを驚かした。
「単刀直入に言う、レオニス。聖女と婚約をすると言うなら、ここにいる3人とも婚約してもらう。」
俺は、何を言われているのか、わからなかった。
国王を見る。
国王も王太后には逆らえないのか、黙っている。
その言葉に、一番先に反応したのはリリアだった。
「王太后様、それはあんまりです。」
王太后は、リリアを一喝した。
「聖女とはいえ、爵位ももたぬ小娘が、私に意見するとは何事だ。」
宰相が慌てて、
「お許しください、王太后陛下、聖女様はこういう場には慣れていないのです。どうぞ、お目溢しを。」
と取りなす。
王太后の威厳に流石のリリアも黙る。
そして、王太后の呼びかけに、3人の娘は前に出た。
一人目は、セレナ・グランディアと言った。
グランディア、どこかで聞いた名であったが、すぐにわかった。
グランディア伯爵令嬢、アルベルトの妹だ。
アルベルトと同じ、いやアルベルトより少し明るいブラウンの髪とクリクリとした大きな瞳を持っていた。
小柄だが、見た目はお人形のように可愛らしいご令嬢だった。
王太后は続けた。
「この者は、以前よりレオニスを慕っておったようじゃ。この機会にその思いを叶えてやりたいと思ってな。」
「セレナ・グランディアともうします。どうぞ、よろしくお願いします。」
セレナは深々とお辞儀をする。
確かに、綺麗なお辞儀だったが、緊張しているせいか、どこか不慣れな感じがした。
次に紹介されたのは、ヴィオレッタ・ヴァンデル。
ヴァンデル公爵家の一人娘で、弟・レオンハルトの元婚約者。
言ってみれば、レオニスの政敵だった相手の娘。
しかも、弟の元婚約者。
なぜ、こんな者が私の婚約者に入っているのだ。
俺は、王太后を見た。
「レオニス、お前の言いたいことは理解しておる。だが、昔のことは水に流せ。
いつまでもこの国の2大貴族が歪み合っているのは国政の安定上良くない。
だから、レオニスお前が、ヴィオレッタを娶ることで安定をはかれ。」
王太后は言う。
ヴィオレッタは少し、たじろいながらもお辞儀をした。
ヴィオレッタもラベンダーグレイの髪、色白の肌。
薄い紫の瞳で、どこか儚げな美少女と言った印象だった。
「ヴィオレッタ・ヴァンデルでございます。」
ヴィオレッタも挨拶をする。
最後に紹介されたのは、隣のアステリア王国の第4王女、クラリッサ・アステリアだった。
「アステリア王国からは、以前より婚姻を結び、両国の関係を強固にしたいと申し出があった。本来は、其方の正妃にという申し出であったが、其方が頑なに固辞したため、今回の運びとなった。クラリッサ殿は王女ではあるが、母君の身分が低く、そのため、正妃でなくても構わぬとのことじゃ。しかし、そうは言っても、クラリッサ殿は王族。正妃同様、丁重に扱うがよい。」
「クラリッサ・アステリアです、レオニス殿。あなたの意に沿わない婚姻だと言うことは理解しているつもりだ。だが、私たちは王族。愛だけでは婚姻に結びつかない。我々王族の婚姻に一番必要なのは、寵愛ではない。信頼と国益だと考えてはもらえないだろうか?」
クラリッサの物言いは実に、王女らしく、威厳のあるものだった。
クラリッサの容姿もダークグレイの艶やかな髪と金色の瞳をもつ妖艶な美女。
だが、俺はこの姫君は油断できないとどこかで警戒音が鳴った。
3人を紹介したのち、王太后は俺を見て、得意げに言った。
「どうじゃ?3人とも中々に美しかろう?其方のために、私がタイプの違う美女を取り揃えてやったのじゃ。」
「余計な真似を、、、、。」
俺は、すぐさま、王太后を睨む。
なぜだろうか、国王より、王太后の方が言いやすい。
やはり、王太后も孫には甘いのか。
「まあよい、其方は関係ない?」
王太后は、エレノアを見た。
「エレノア、其方はどうじゃ?正妃として、この者達をまとめていけそうか?」
エレノアは、
「王太后殿下、お心配りありがとうございます。至らない私ではありますが、皆様と力を合わせ、共に殿下をお支えしたい所存に存じます。」
と、エレノアはどこまでも、王太子の正妃として完璧だった。
でも、なぜだろう、俺はちっとも、誇らしくも、嬉しくもなかった。
むしろ、俺の胸がざわついた。
「流石は、正妃であるな。其方の器の大きさには、ただただ感心するばかりじゃ。」
と王太后は褒め称える。
「そんな、勿体無いお言葉。」
と頭を下げるエレノア。
俺は、その姿に鳥肌の立つ思いだった。
国王は、
「ということだ?レオニス、良いな?」
言ったが、その言葉にいつもの威厳は感じられない。
おそらく、王太后に押し切られたのだろう。
俺は、少し考えてから、
「お祖母様、一つ、お聞きしてもいいでしょうか?」
「何じゃ?レオニス、もうしてみよ?」
「はっ。」
俺は一呼吸おいた。
「何故、今なんです?それに、年頃の娘をどうしてすでに正妃の決まっている男に娶らせたがるんです?」
俺は素直に疑問に感じたのだ。
確かに、一夫多妻制なのはわかる。
だが、一気に5人も一度に娶れと言う意味がわからない。
普通、間を開けて増やすものではないだろうか?
「それはな、レオニス、お前のせいだ。
お前はその見た目の上に、素行もこの上なく良い。
しかも優秀であるから、お前との縁談を望む声が多くてな。これでも、3人までようやく絞ったんじゃ。私も王太子のうちは、エレノアだけで良いと考えたんじゃが、聖女との婚約で止められなくなってしまった。だが、レオニス。お前も今は、きちんと国王としての地位をしっかりと固めるべきなのも事実。それには縁談が一番手っ取り早いこともわかっているだろう?」
「なるほど、、、、しかし、同時に5人と言うのは、明らかに。」
「レオニス、妃を平等に愛し、まとめるのも男の甲斐性じゃ。それに、普通、側妃をもつことに建前上は嫌がっても、内心は喜ぶのが殿方というものじゃ。だが、何故か、レオニス、お前は心底嫌がっているように思える。」
「流石ですね、お祖母様。お察しの通り、私は心底嫌悪しております。」
とキッパリと言った。
「何故じゃ?」
「妻は一人でいいと思っております。」
俺は、真っ直ぐに王太后を見返した。
「お前が貫きたいのであれば、実力で示さねばならぬ。まずは、この婚約者達を納得させるのじゃな。」
と王太后は笑った。
「では、私が王太后のお認めになる結果を示れば、私のやりたいことをお認めになってくれるのですね。」
王太后は、
「よかろう、やってみよ。」
と頷いた。
その様子を国王はじめ、宰相達も黙って見守っていた。




