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元ホストの俺、乙女ゲームの王太子に転生。婚約者(悪役令嬢)だけは絶対に守ります  作者: ふうこ0701
第二章 婚約者の本当の姿

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第16話 王の選択

毎週土曜日の21時更新です

「レオニスが……いえ、殿下が変なのです。」


 


リリアは涙を浮かべたまま、そう言った。


 


「変とは、どういうことだ?」


 


国王が静かに問う。


 


リリアは震える声で続けた。


 


「以前の殿下は……もっと優しかったのです。

至らないところは注意されましたが、それでも、いつも見守ってくださって……。

わたくしが不安にならないように、そばにいてくださったのです。」


 


言葉を紡ぎながら、リリアは涙を必死に堪えていた。


 


「……エレノア様からも、守ってくださいました。」


 


その言葉に、宰相の目がわずかに細くなる。


 


「わたくしは知っています。

殿下がエレノア様に特別な感情をお持ちであることも。

それでも……わたくしは……殿下をお慕いしております。」


 


リリアは縋るように国王を見た。


 


「おそばにいたいのです。ですが……最近の殿下は、どこか冷たくて……」


 


ついに、リリアは涙を零した。


 


その様子に、宰相が静かに口を開く。


 


「聖女様のお気持ち、痛いほど理解できます。」


 


「私は……レオニス殿下に冷たくされると、その……心がざわついてしまって……うまく、抑えられないのです。」


 


部屋の空気が、わずかに張り詰める。


 


「慕っている殿下が突然変わられれば、心も乱れましょう。

しかし、殿下にも事情がございます。」


 


宰相はあくまで穏やかな声音だった。


 


そして、国王に目配せする。


 


(殿下の記憶喪失をお伝えすべきかと。)


 


国王はしばし無言で考えた。


 


やがて、決意したように口を開く。


 


「リリアよ。レオニスは……記憶を失っている。」


 


リリアの肩が、びくりと震える。


 


「先日、剣の稽古中に倒れた際の衝撃でな。記憶が曖昧になっている。

ゆえに、以前とは違って見えるのだ。」


 


「……え……?」


 


リリアは驚いた顔をしたまま、言葉を失う。


 


何かを考え込むように、視線を落とした。


 


国王は続ける。


 


「それに、そなたの心を乱した件について責を問われ、現在は謹慎中だ。

しばらくは自由に動くことも許されておらぬ。」


 


リリアの顔から血の気が引いた。


 


「そんな……」


 


だが、すぐに顔を上げる。


 


「でしたら、どうか……殿下の処罰をおやめください。

今回のことは、すべてわたくしの未熟さゆえです。

わたくしが、感情を抑えきれなかったから……」


 


涙ながらに訴える。


 


「ですから……どうか……レオニス……いえ、殿下をお許しください。」


 


リリアは深く頭を下げた。


 


宰相が問いかける。


 


「聖女様は、それほどまでに殿下を慕っておられるのですか?」


 


「はい。わたくしが……必ず、元の殿下に戻れるよう尽力いたします。」


 


リリアは、きっぱりと言い切った。


 


 


 


リリアの部屋を出た後。


 


国王と宰相は応接室へと向かった。


 


しばらく、二人は無言のまま茶を口にする。


 


やがて、宰相が静かに口を開いた。


 


「……このままでは、いずれまた同じことが起こります。

聖女の精神は不安定です。

今回のように、いつ闇に傾くかわかりません。」


 


国王は厳しい表情で宰相を見据える。


 


「原因は明白です。レオニス殿下と、エレノア嬢。

いずれかを遠ざける必要があります。」


 


宰相は言い切った。


 


国王は深くため息をつく。


 


「……エレノアを国外へ出すか。あるいは、婚約を解消し、リリアと、、、、


 


そこまで言いかけて、言葉を止める。


 


「……認めぬだろうな。」


 


「はい。」


 


宰相は即答した。


 


「殿下は、エレノア嬢を決して手放しません。」


 


尋問での様子を思い出せば、それは明白だった。


 


「それどころか……最悪の場合、王太子の座を捨て、エレノア嬢と駆け落ちする可能性すらございます。」


 


国王の表情がわずかに険しくなる。


 


「駆け落ち……か。」


 


「今の殿下であれば、あり得ます。

王太子不在となれば、王室は再び混乱し、新たな悲劇を招きかねません。」


 


宰相の言葉に、国王は再びため息をついた。


 


レオニスを王太子に定めるまで、王室は長く権力闘争に揺れていた。


 


貴族同士の争いは国政にまで影響を及ぼし、多くの犠牲を生んだ。


 


だからこそ――王室の安定は、国の安定そのものだった。


 


レオニスは賢く、思慮深く、武勇にも優れている。


 


次代の王として申し分ない。


 


だが、


 


「……あれほど、エレノアに執着するとはな。」


 


記憶を失う前のレオニスは、まだ王太子としての責務を優先していた。


 


だが今は違う。


 


エレノアを守ることを、何よりも優先している。


 


それゆえに、厄介なのだ。


 


「陛下、妙案がございます。」


 


国王は宰相を見た。


 


「聖女様を、殿下の婚約者となさるのです。」


 


「だが、あやつはエレノアとの婚約破棄など到底……」


 


「はい、承知しております。

エレノア嬢との婚約はそのままに、聖女様とも婚約させるのです。」


 


国王は眉をひそめる。


 


「しかし、レオニスはまだ王太子であるぞ。」


 


「はい。ですが、前例がないわけではございません。」


 


宰相は淡々と続ける。


 


「それに、いずれ国王となれば、さらに多くの妃を持つことになります。

王族の婚姻は、国家にとって有益なものでございます。」


 


確かに、この国では一夫多妻が認められている。


 


国王自身も、王妃のほかに八人の側室を持っていた。


 


遅かれ早かれ、レオニスも同じ道を辿るだろう。


 


国王は静かに目を閉じる。


 


「……それしかないか。」


 


「はい。」


 


宰相は、迷いなく頷いた。

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