第103話 偽りの姫 前編
俺は、国王と大臣達の前で、クラリッサがエレノアを破滅させようとした陰謀を明らかにするため、召集をしてもらった。
クラリッサも、アステリアの大臣セドリックも同席している。
「陛下、私は申し開きをしたことがございます。」
俺は国王に向かって言う。
「何じゃ、王太子。申してみよ。」
国王は威厳に満ちた声で答えた。
「はい。実は先日、私の妃、エレノアを失態させるべく、陰謀が図られました。
私はこれを、決して見過ごすことはできません。」
そう前置きし、俺は経緯を説明する。
そして、“影”が集めてきた資料を提出した。
国王や大臣達は、静かに耳を傾けている。
俺はクラリッサの方へ視線を向けた。
クラリッサは、不敵な笑みを浮かべている。
やがて話を聞き終えた国王が口を開く。
「クラリッサ姫。今の話は誠か?」
クラリッサは一礼する。
「陛下、レオニス殿下の申された事は事実です。」
その言葉に、場がざわめいた。
「では、認めるのだな?」
クラリッサは一瞬間を置き、
「はい。認めます。」
と答えた。
――だが、それだけでは終わらない。
「ですが、陛下。私の預かり知らぬところで、事は起きてしまったのです。」
静かに続ける。
「私も先ほどまでは、存じ上げませんでした。
その者は、幼い頃より仕えていた侍女。
それゆえ、私への忠誠心が異常に強く……」
「普段からレオニス殿下の寵愛がエレノア様に集中し、
至らぬ私は殿下の関心を受けられずにおります。」
「私も何度もエレノア様に相談を致しましたが、
エレノア様は殿下をお独り占めにされたいご様子で……」
クラリッサの目から、涙が溢れる。
だが、あれは演技だ。
「クラリッサ姫、エレノアは、私の妃はそんなに度量は狭くない。
エレノアからは姫の事は、何度も聞いている。」
俺は冷ややかに言い放つ。
「だが、私がエレノア以外に興味を持てないのだ。
エレノアとて、私に首輪をつけて、姫に差し出すわけにはいかんだろうからな。
その辺りを勘違いされては困る。」
「そのような言い方はあるまい。クラリッサが可哀想ではないか。」
セドリックが噛みつく。
「ええい、このような場で内輪揉めをするでない。
で、クラリッサ姫、話の続きは?」
国王がうんざりした様子で促す。
クラリッサは顔を上げ、再び口を開いた。
「はい。その者は私を哀れに思い、エレノア様を傷つけるようなことをしてしまったのです。」
「私も意図せぬこととはいえ、このような事態を招いてしまいました。
全ては私の至らなさゆえ。私の責任です。」
「エレノア様にも詫びましょう。
どうぞ、私めにバツをお与えください。」
そうきたか、、、。
全てを侍女に被せるつもりか。
「クラリッサ姫、随分と空々しい言い訳ではないか?」
俺は冷たく言い切る。
クラリッサは、真っ直ぐ俺を見た。
「殿下が、エレノア様を寵愛していることは存じています。
それゆえ、私を疎ましく思っていることも。」
「ですが、信じてください。
私はアステリアとルミナリアの友好のため、殿下の元にまいりました。」
「両国のためにも、どうか信じてください。」
国王はその様子を見て、深く息をついた。
「クラリッサ姫。あなたの言い分が真実かどうか、吟味する必要がある。
その侍女を連れてまいれ。」
――しかし。
「陛下、お許しください。
その者は、自らの罪の重さに耐えられず、昨夜、自決いたしました。」
「これも私の至らなさが招いた結果です。
どうぞ、私にバツをお与えください。」
クラリッサは、深く頭を下げる。
……やられたな。
俺は、失笑するしかなかった。




