(番外編)レオニス姫④
宰相は、
「王太后陛下と王妃様でしたら、花園でお茶をしておりましたよ。」
と教えてくれた。
セレナは、
「ついでに、エレノア知らない?」
と聞いた。
セレナの中で、エレノアはすでに“ついで”扱いだ。
「エレノア嬢も何やら、叫びながら花園の方へ走っていきましたぞ。」
宰相はそう言い残し、立ち去った。
「じゃあ、私達も行きましょうか?」
とセレナは言う。
「おい、ちょっと待て。一旦帰るぞ。レオニスを元に戻してから。」
レオンハルトが言うが、セレナは、
「いいの?エレノア、すごく傷ついてたよ。
自殺でもしたらどうするのよ。」
と物騒なことを言い出す。
俺もエレノアが心配で、結局そのまま向かうことにした。
もう、誰にも会わなければいいと願うばかりだった。
だが、その願いは叶わなかった。
しばらくして、今度はアルベルトとルシアンに出くわした。
二人は俺を見て、息を飲む。
そしてアルベルトは、
「私は、グランディア伯爵の長男で、アルベルト・グランディアと申します。
あなたのような美しい姫は見たことがありません。
どんな宝石も、あなたの美しさの前では霞んでしまいますね。」
と言った。
正直、頭痛がした。
セレナ達は笑いをこらえつつ、俺が某国の姫であること、ルミナリア語が分からないこと、
そしてレオンハルトの側室候補であることを説明する。
アルベルトは、
「レオンハルトの側室ですか?
それは残念です。」
と本気で項垂れていた。
ルシアンは、俺を見たまま終始無言だった。
「ちょっと、ルシアン。何ぼーっと見てんのよ。」
リリアが声をかける。
「あっ、リリア、綺麗な女だなと思って……。」
ルシアンの言葉に、リリアはむくれていた。
次に遭遇したのは、いけすかないアステリアのセドリック王太子だった。
セレナは、セドリックにも同様の説明をする。
説明を聞いたセドリックは、俺を見て言った。
「私はアステリアの王太子、セドリックです。
あなたのように類稀な美女にお目にかかれて光栄です。」
そして、俺の手に口づけをする。
俺は鳥肌が立つのを堪えきれない。
セレナ達はまた爆笑している。
見れば、レオンハルトも笑っていた。
レオンハルトは挑発的な目でセドリックを見る。
「なんなら、譲ってやろうか?」
俺はレオンハルトを睨む。
本当に何を言っているんだ、と言わんばかりに。
そして、レオンハルトの足をヒールで思いきり踏んだ。
「痛え、何しやがる。」
涙目で俺を睨むが、
「何しやがる」と叫びたいのは、俺の方だった。




