(番外編)レオニス姫③
俺はレオンハルトの手をほどこうとするが、
慣れないヒールではうまく歩けない。
「それ、慣れるまではそうなるんだよ。
だから、黙って俺に捕まれ。」
レオンハルトに言われ、仕方なく手を取った。
俺の心中は、とても複雑だった。
レオンハルトにエスコートされ、セレナ達の前に現れる。
セレナ達は、俺を見て沈黙した。
「負けた、何、この敗北感。」
セレナは項垂れる。
「想像以上ですわ、殿下、いや姫様。」
ヴィオレッタはうっとりする。
リリアは、
「レオニス、なんであんた女に生まれなかったの?」
レオンハルトと同じことを言った。
エレノアは、
「・・・・・。」
無言だった。
俺は、
「エレノア?」
と声をかける。
だが次の瞬間、エレノアの目は涙ぐみ、
「殿下のバカー。」
そう言って立ち去ってしまった。
「エレノア。」
俺は後を追う。
だがヒールが邪魔で、うまく走れない。
「おい、レオニス、お前そんな格好で外に出るな。」
レオンハルトの声も、耳に入らない。
「まあ、自分の彼氏が自分より色っぽくて、美しかったら、ああなるよね。
乙女心は複雑なのよ。」
セレナは呟く。
「とにかく、王太子のあんな姿を他の奴に見られたら、国の権威に関わる。
とりあえず、追うぞ。」
レオンハルトの号令で、セレナ、ヴィオレッタ、リリアも後を追った。
俺は宮を抜け、中庭に出ていた。
そこでレオンハルト達に捕まる。
「おい、レオニス。王太子であるお前が、そんな格好で外に出るんじゃねー。」
「しかし、エレノアが。」
俺はレオンハルトを見る。
その時、間の悪いことに人影が現れた。
宰相だった。
「やべえな、レオニス。お前、絶対に喋るなよ。
喋らなければ、お前とは誰も思わん。わかったか?」
俺は頷いた。
「レオンハルト様。今日は、いかがいたしましたか?」
宰相が声をかける。
レオンハルトは、
「ちょっとな。」
と誤魔化す。
そして宰相の視線が、俺に向く。
「こちらのご令嬢は?」
「ああ、こいつはな……。」
レオンハルトは言葉に詰まる。
俺は愛想笑いを浮かべる。
すると宰相は、少し照れたように頬を赤らめた。
その様子を見て、セレナ達が笑いをこらえる。
セレナはすかさず、
「この方は某国のレティシア姫です。
外国の姫なので、ルミナリア語が分かりません。」
と説明する。
レオンハルトも俺も、それに合わせる。
「実は、レオンハルト様が側室に迎えたいと姫を望まれまして、
今日は王太后様と王妃様に許可をもらうために参ったんです。」
次から次へとでまかせを並べる。
レオンハルトが、
「待て、こいつが俺の側室だと。ふざけるな。」
と言うが、ヴィオレッタが、
「合わせてください。王太子だとバレたら、大変なことになります。」
と取りなす。
だが、ヴィオレッタが面白がっているのは明らかだった。
リリアは気の毒そうに俺を見る。
カイルは、右眉がぴくぴくと動いている。
だが、あれは怒っているのではない。
笑いをこらえているのだ。
カイルめ、後で覚えていろよ。
俺は心の中でそう思った。




