(番外編)レオニス姫②
「じゃあ、まずはヘアメイクね。」
セレナは張り切る。
「待て、これに着替えるだけじゃダメなのか?」
俺は言う。
「ダメに決まってんだろ?レオニス。
お前も俺と同様の屈辱を味わえ。」
レオンハルトの表情は、小悪党そのものだった。
しかもその妻、ヴィオレッタまで、
「レオニス殿下、往生際が悪いですわよ。」
と微笑んでいる。
似た者夫婦め、と俺は恨みがましく思う。
エレノアは、
「殿下、大丈夫ですか?」
と心配そうに俺を見る。
だが、その瞳は憂いというより、好奇心に満ちていた。
「ああ、大丈夫だ、エレノア。
君のために頑張るよ。」
セレナはそんな俺に、
「そんなかっこいいこと言っても、
女装するだけだからね。」
と笑った。
やがて、どこからともなくエマ達侍女も集まってくる。
「お任せください、殿下――いえ、姫様。
私達が腕によりをかけて、美しくして見せますわ。」
なぜか張り切っている。
「適当でいい、適当で。」
俺は言うが、エマはまったく聞いていなかった。
「じゃあ、レオニス姫の準備ができるまで、私達はお茶でもしましょう。」
そう言って、セレナ達は退出する。
俺はというと、すでに抵抗する気も失せていた。
エマ達の着せ替え人形と化していた。
「せーの。」
エマ達は、ぎゅっとコルセットを締める。
「くっ、苦しい。」
俺は言うが、
「美しくなるためですわ、殿下――ではなく姫様。
頑張りましょう。」
エマは手を緩めなかった。
俺は心底、女は大変だなと思った。
次に、化粧を施される。
エマが粉を塗っていく。
くすぐったくて仕方ないが、
「エレノア様が楽しみにお待ちですよ。」
その一言で、なんとか耐えた。
髪もそれに合わせて整えられていく。
「装飾品はこちらが――殿下、いえ姫様にはこちらがよろしいかと。」
そう言って、装飾品を身につけられる。
そして、ついに支度が整ったらしい。
エマ達は、俺を見て言葉を失った。
やがて、
「お綺麗ですわ、姫様。本当に。」
と大絶賛だった。
俺は鏡を見る。
そこには、変わり果てた自分の姿が映っていた。
長いブロンドの髪は半分ほど結い上げられ、花の髪飾りが添えられている。
化粧もドレスも調和し、どこからどう見ても、美女だった。
その姿に、俺は落胆する。
そこへレオンハルトがやってきた。
「レオニス、終わったか?」
そして、俺を見て絶句する。
「お前、なんで女に生まれなかったんだ。
もったいない。」
実に気持ちの悪いことを口走る。
「まあいい。あいつらが待ってるぜ。」
そう言って、レオンハルトは手を差し出した。
「姫、どうぞ手を。」
「レオンハルト、気持ち悪いぞ。」
俺はレオンハルトを睨んだ。




