第98話 VSカースメイカー➁
「喰らえ! ≪ツイン・シャドーエッジ≫!」
敵の魔法が来る。
「……んぐう」
しかも両腕で、がっちりと掴まれ、身動きが取れない。
もう、ダメだ。魔法が飛んでくる……。
そのとき。
パタパタパタパタ! 上空からプロペラの音が。
「あれは……」
ブルーの≪シードローン≫だ。
「ショット!」
後ろから声が聞こえると、ドローンから散弾が発射された。
チュインチュイン!
「……ぐおおあっ!」
効いてるぞ。
腕にポツポツと穴が開き、魔族がうめき声をあげている。
「……がああ……」
面白いぐらい痛がると、私を掴んでいた腕がわずかに緩んだ。
「……今だ! えいっ!」
両足で胴体を蹴り上げて、敵の拘束から、なんとか抜け出した。
魔法が迫っている。
「……神速!」
寸前で高速移動して、魔族から距離を離した。
「……あ、危なかった」
もう少しで、やられるところだった。
私の元にメアリが走ってきた。
「あんた前に出すぎよ」
本当に、その通りだ。
でも、あいつには魔法を撃たせたくなかったのだ。
「あの会長の呪いが……」
いまだに誰も解くことができないのだ。
そんなものにかけられてしまったら、大変なことになる。
「言いたいことは分かるわ。でも、それであなたがやられたら、本末転倒よ。誰があの魔族を倒すのよ」
まったく、その通りだ。
反省している。
「人形たちは、あらかた片付いたわ。ここからは、私とブルー。グリーンも使って、戦っていくわよ」
「ブラックは?」
「残りの人形を引き付けてもらってる」
「そう」
まあ、十分に戦えている。
あとは、敵の魔法をどう受けるか。
それと決め手になる一撃だな。
「……うーん」
「どうしたの?」
「ちょっと気になることがあって」
グリーンが前をさした。
「来るよー」
本当だ。
魔法を撃ちだそうとしている。
「シャドーエッジ!」
どうやら、私を狙っているようだ。
ちょうどいい。
このまま、私が引き付けておこう。
「……神速!」
私は高速移動で回避する。
まずは一発目を回避。
だが、奴には杖がもう一本ある。
「シャドーエッジ!」
「……ジャンプ!」
高く飛び上がった。
これで二発目を回避。
強力な魔法には、溜め時間が必要だ。
少なくとも、一分ほどは次の魔法が撃てないはず。
「この隙に……」
スキルを発動。
私は魔族に狙いを定める。
「≪エビルスキャン≫!」
このスキルは、敵の正体を暴き出すだけではない。
弱点までも探り当てるのだ。
ピコンと音が鳴った。
すると、敵のウィークポイントが。
カースメイカーの弱点:水
「……やっぱりそうか」
さっき、ドローンに攻撃されたときの反応が、おかしかったのだ。
ピンクのバフがかかってるならともかく、素の威力であのダメージはありえない。
「それなら、ブルーに攻撃させよう」
どの魔法でもいい。
ドローンだろうと、バスターだろうと。
とにかく、たくさん攻撃を当てれば、奴を落とせるはずだ。
「というわけなんだけど、いけそう?」
「はい。射程を考えれば、ドローンがいいでしょうね」
パタパタパタパタ! 一気に四機が飛んでいく。
「あとは私たちが敵の気を逸らすよ」
「お願いします」
あいつは、私に狙いを定めているのだ。
このまま、近づいていき、目立つ行動を取っていればいい。
「カーススススッ」
敵が笑い出した。
嫌な予感がする。
「勇者ステラ。おまえの策はわかったぞ」
「嘘だよ。分かるはずがない」
「……」
カースメイカーは黙って、私の後ろを見た。
ブルーを見ているのだろうか。
「障害になるものは、先に潰すだけだ。会長のようにな」
会長? それはブタに変えるということだろうか。
どんな魔法かは知らないが……。
「やらせないよ! グリーン」
「シールアロー」
魔族の足を、矢で射抜いた。
特殊な模様が浮かび上がり、足に絡みつく。
「この封じにかかれば、移動は制限される。その間に、あなたは倒されるんだ」
「……こんなものでは、私は止められん!」
影縫いのときも同じようなことを言っていたが。
このスキルには耐性がないはず。
大丈夫。はったりだ。
「喰らえ! ≪ツイン・シャドーエッジ≫!」
そのとき、
――カチッ!
照明が落ちた。
「……なに!?」
真っ暗で、何も見えない。
――カチッ!
「……は?」
私は驚く。
そこには足しかないのだ。
「まさか、自分の足を切り落としたのか」
腕を生やせるのだ。
それなら、足だって生やすことができるはずだ。
「奴は……」
「きゃあああああっ!」
「ブルー」
彼女にしては、珍しく甲高い叫びをあげている。
本当に、まずい状況なのだ。
ブルーは両腕で首を絞められ、もがき苦しんでいる。
そして、その顔に向けて、二本の杖が突きつけられている。
「さあ、では、受けてもらうとしようか」
彼女のシードローンは消えてしまっている。
それに、この距離だと他の者も間に合わない。
「私が誇る究極の呪いを」
「……や、やめろ」
「≪ベイブ・カース≫」
≪ベイブ・カース≫
難度 ★×7
属性 闇
使用回数 5/5
成功率 100%
説明 古代魔法の一つ。相手を醜いブタに変えてしまう。
ブルーの体が暗闇に包まれると、その体がみるみる萎んでいく。
やがて、出てきたのは……。
「ブヒヒッ! ブヒヒヒッ!」
醜いブタであった。
「カースススススッ! これで私の障害になるものは潰した。この『カースメイカー』の勝利は決まった!」
私は、ブルーを抱きかかえた。
その姿は、太ったブタだ。どこから、どう見ても、醜いブタだ。
「でも……」
それでも、ブルーは……。
「私の仲間だ! たとえ、あなたがどんな姿になったとしても、私はあなたを見捨てたりしない!」
その言葉を聞いて、魔族は腹を抱えて笑った。
「気でも狂ったか? そんな奴に話しかけてなんになる! その醜い脂肪の塊が、おまえに何をしてくれるというんだ!」
「……くっ」
「所詮は食べるしか能のない獣だ! 仲間ではない! 臭くて汚いブタだ!」
「……うるさい」
ブルーは醜くなんかない。
能無しなんかじゃない。
「ブルーは、私の大切な……」
「ブヒヒッ! ブヒヒヒッ!」
「ブルー……」
なんだ。
今、変な感じが……。
「ブルー。もしかして、あなた……」
私は立ち上がると、その醜いブタにたずねた。
「私の言ってることが分かるの?」




