第97話 VSカースメイカー①
現在のメンバー……。
メインメンバー:ステラ ブルー グリーン ブラック メアリ
控え :ピンク ミリア
「この『カースメイカー』の正体を見たな! おまえら全員、変えてやる! 醜いブタの姿に!」
そいつは、ヘビの頭を持ち、口からチロチロと舌を出している。
ヘビ男、と言ったところだろうか。
でも、声はメイドのままだから、ヘビ女かな?
よく見ると、胸の辺りに膨らみもあるし、肉付きも女性のように見える。
「ヘビの雌雄なんか、どっちだっていいでしょう」
「まあね。私も興味ない」
「それよりも、迷探偵。あんたには、謝る相手がいるんじゃないの?」
ああ、流しては、いけないところか。
私は副会長に、頭を下げた。
「すみません。適当な推理をしちゃいました」
「いえいえ、いいですよ。それよりも、早く魔族を倒してください。会長を元に戻してくださいよ」
そうだ。この魔族を倒す。
それが、勇者である私の仕事だ。
「カースススススッ!」
ヘビ女はバサッとローブを羽織ると、懐から杖を取り出した。
「……大きな杖だな」
樹木を彫り込んで作った本格的な杖だ。
身の丈ほどの大きさで、先端には宝石が取り付けてある。
この杖や立ち居振る舞いから考えて、カースメイカーは純粋な魔法使いなのだろう。
「私は後衛に回るわ。危なくなったら、すぐに私のところに来るのよ。回復してあげるから」
メアリが後ろにさがり、入れ替えでブラックが前に出る。
「よし。ブラック。二人で攻めていくわよ」
「……ん……」
魔法使いへの対策は、とにかく攻めることだ。
魔法を受けようと思えば、こちらが後手に回ってしまう。
撃たれる前に、撃つ!
殴られる前に、殴る!
奴は会長をブタに変えた。強力な呪いなのだと聞いている。
だが、どれだけ強力な魔法だろうが、発動しなければ意味はない。
常に妨害して、こちらが有利な状況を作り出す。
「お前たちの考えていることぐらいお見通しだ」
魔族は杖を振り上げた。
「サモン!」
召喚術で呼び出したのは、大きな箱だ。
ガチャッ! 中から出てきたのは、おなじみの人形たち。
「さあ、行け! 我が下僕たちよ」
人形たちが動き出し、私たちの方へ攻めてきた。
「ブラック!」
「……ん……」
彼女は突進するように、前へ出ていく。
「……ふっ。愚か者めが!」
魔族の合図により、人形たちが一斉に呪文を唱えた。
「エクスプロージョン!」「エクスプロージョン!」「エクスプロージョン!」
自爆の連打が炸裂する。
だが―ー。
「……ん……」
スキルを発動。
ブラックの体が赤いオーラに包まれた。
「エクスプロージョン!」「エクスプロージョン!」「エクスプロージョン!」
「……ん……」
彼女は傷を負わない。
ヴァイケンの教えてくれたスキル『ファランクス』は属性攻撃を無効化する。
「……ようし!」
ブラックが自爆を引き受けている。
今の内だ。
「神速!」
私はブラックの横を通り過ぎ、まっすぐ魔族の元へ近づく。
「させるか!」
「マギー! マギー!」
人形たちが縦に積み上がり、壁のように立ちはだかる。
「……ジャンプ!」
私は高く飛び上がり、壁を飛び越えた。
「やれ!」
空中にいる私を狙うつもりか。
人形たちが私に向かって杖を突き付ける。
「グリーン」
「はーい」
彼女が弓を引き、マギーくんに狙いを定める。
「シールアロー!」
キリリリリ……シュッ! シュッ!
「……マギー」
人形の腕に命中すると、そこから奇妙な模様が現れた。
「マギ……マギー!」
人形は腕を上げられず、私を狙うことができない。
「メアリ! ブルー!」
「ホーリー!」
「ウォーターカッター!」
光の弾が頭を吹き飛ばし、水の刃が胴体を引き割いた。
「……」
詠唱する口を失った人形は、その場にパタリと倒れた。
「シールアロー!」
さらに、数発を連続で撃ち出し、人形たちの腕を射抜く。
「……マギ!」
動けなくなった奴を、またメアリとブルーが魔法で攻撃。
「マギー!」「マギー!」
敵が動揺しているうちに、私は地面に着地。
『カースメイカー』は、もう目と鼻先である。
「……おのれ! サモン!」
また箱を呼び出した。
人形を増やすつもりか。
「……そうはさせない!」
私は箱の上に飛び乗った。
――ガタガタ!
箱が揺れ動くが、私は体重を乗せて抑え込む。
「……どうだ!」
これでマギーくんは、出てこれないだろう。
「……くっ。バカか、おまえは」
そうだ。私は馬鹿なのだ。
文句があるなら、自分で箱を開けに来い。
「ブルー。お願い」
「はい。≪シーバスター≫! チャージ!」
砲台が出現し、先端に光を溜め込んだ。
「……発射!」
青白い光線が箱に向かって、放たれた。
箱は吹き飛び、中身の人形は全て燃え上がる。
「……ぐぐぐっ!」
ヘビ女の顔色が変わる。
ようし。さらに、変えてやろう。
「……神速!」
私は魔族の懐に踏む込むと、剣を振り抜いた。
「……くっ!」
キィン! 左腕を出しガードした。
こいつら、みんな硬いな。毎日、鉄でも食べてるんだろうか。
「……このっ」
右手に持った杖を振り上げる。
魔法を使うつもりか。
だが、やらせない。
「ブレイブラッシュ!」
私がスキルを使うと、ヘビ女がガード。キィン!
「……よし」
両手を使ってガードしている。
私のスキルは片手では受けられないようだ。
「ブレイブラッシュ! ブレイブラッシュ!」
魔族に向けてスキルを連打。
キィン! キィン!
敵には、ダメージが入っていないが、これでいい。
私がこうして張り付いている限り、こいつは魔法が撃てない。
「ブレイブラッシュ!」
「……むむっ!」
あとは四人が、残りの人形を片付けてくれる。
それを待っていればいい。
仲間が揃った状態で、一斉に攻撃。
それで、こいつを倒せるはずだ。
「ブレイブラッシュ!」
「……ふん! おまえの戦法はよく分かったが、教科書通りだな。予習はできてるようだが、つまらなくて欠伸が出る」
「何それ? 負け惜しみ?」
「我ら魔族は、型通りにはいかない。おまえのような奴とは、すでに何度も戦っているからな」
カースメイカーは、後ろに飛んだ。
私はそれを走って、追いかける。
「今から、それをお前に教えてやる。忘れないように、しっかりメモでも取っておくといい」
魔族が、私に杖を突き付けた。
だから、魔法は使わせないって……。
「言ってるだろ! ブレイブラッシュ!」
魔族は両手を使って、防御している。
これでは、先ほどと何も変わっていないが。
「……いや」
さっきと違う。
こいつは、杖を持っていない。
「杖はどこに……」
「よく見ろ。ここだ」
「……なっ」
肩から、新たな腕が。
つまり、腕が三本に増えて、私に杖を突き付けている。
「そんな単純な……」
「だが、これでおまえの策は破れた。私は魔法を使えるぞ」
そう言うと、私の体に掴みかかり。
「……ふん!」
更に、腕が生えてくる。
四本目の腕と、二本目の杖が現れた。
「では、とくと味わってもらうとしようか。私の魔法を」
杖の先端に、光が集まって行く。
「……喰らえ! ≪ツイン・シャドーエッジ≫!」
人形たちとは比べ物にならない力を感じる。
しかも、それが二本の杖から同時に。
「こんなの受けたら……」
まずい。
逃げないと。




