第96話 正体をみやぶる
現在のメンバー……。
メインメンバー:ステラ ブルー グリーン ブラック
控え :ピンク (ミリア)
――ブイイイイイイン!
「よし。着いたぞ。ここは……」
「カフェですね」
私は店の中をキョロキョロと見た。
そこら中の棚やテーブルが黒焦げになっている。
「人形だー」
「……」
たしかに、人形だが、全て残骸に変わり果てている。
腕や足。みんなバラバラに飛び散っており、立ち上がれそうにない。
「……魔法の形跡だな」
きっと、ド派手な聖魔法を滅多撃ちしたに違いない。
「ああ、ステラ。あんたも来たの?」
「メアリ。どうして、ここに」
「技師を探してたのよ。隣で聞いてたわよね。空調が止まったって」
転送陣から、新たな人形が出現した。
まずい。追手がやってきた。
慌てて、メアリに事情を説明する。
「あわわ。メアリ。人形が、魔族で……」
「は?」
「本体を倒さないと。でも、神竜様が、スキルに、お屋敷に……」
「よく分からないわ。アイスティーでも飲んで」
「ゴクゴクゴクゴク」
うん。冷たくておいしい。
精神が安定するね。こう、血が固まるって言うか……。
「制御キーはいいの? その人形を追ってたんでしょ?」
「うん。でも、術者はこの町にいるみたいなんだ」
そう言うと、メアリが顔をしかめた。
「私も同意見よ。操ってる人形の数が半端ないもの。おまけに全員が魔法を扱えるし。このレベルの術を遠くで操ってるとしたら、異常としか言いようがない。それこそ、大賢者クラスだわ」
ブルーだって、一度に出せるドローンの数は四機ほど。
やっぱり、近くで操ってると考えるのが、普通だろう。
「で、そいつは、屋敷の中にいるのね」
「うん。これは私の憶測だけど」
「……ということは、屋敷に侵入したふりをして、最初から隠れてたってわけね。本当に、狡猾な奴だわ」
数体の人形が迫ってきた。
「マギー!」「マギー!」
「ダイダルウェーブ!」
ブルーの魔法により、波に押し流されていく。
「帰ればいいのね。それなら、私の≪テレポート≫を使いましょう」
テレポートは、一瞬で遠くに飛ぶことができる魔法だ。
昔、メアリによくこれで遊びに連れてってもらった。懐かしい。
「でも、これ移動先はランダムなはずじゃ……」
「数回ぐらいやれば、着くわよ。この町、狭いしね」
「……お、おお」
この適当さは、師匠譲りだろうか。
少し不安になったが、まあ大丈夫だろう。
だって、メアリだし。聖女だし。
「じゃあ、出発――っ!」
☆
――ブイイイイイイン!
「二回で着いたわ。ちょっと、ぴっくり」
「……メアリ」
お屋敷に戻ってきたが、特に前と変わっていないようだ。
「ブヒヒッ! ブヒヒヒッ!」
「こら。会長。暴れちゃダメです」
会長がブヒブヒと鳴いている。
とにかく、彼女をなんとかしてあげないとな。
「ステラ。それで、魔族はどこにいるの?」
「待ってて。すぐに分かるから」
私は、ゆっくりと歩み寄っていく。
今回の事件の首謀者。
会長をブタに変え、町を混乱に陥れたこの事件の真犯人――。
「『カースメイカー』の正体は――」
私はビシっと指をさした。
「副会長! あなただ!」
「……なっ」
副会長は驚きのあまり、壁際までさがった。
「な、な、何を言ってるんですか?」
全員に注目されて、尻込みする副会長。
私は説明する。
「聞きましたよ。『マギーくん人形』をデザインしたのは、会長なんですってね」
「はい。たしかに、その通りです」
なんでも会長が昔から温めていたアイデアなんだとか。
「しかし、あなたは以前から、気に入らなかった。理由はかわいくなかったから」
気持ちはよく分かる。
不気味なのだ。マギーくん。
「はい。私はマスコットは女の子にしようと言ったのに、会長は聞かなくて……って、この話、今関係ありますか?」
「おおいに、あります。何故なら、これが犯行の動機だからです」
会場がざわついた。
私は続ける。
「どうしても、女の子が良かったあなたは、魔術師協会を乗っ取ることにした。そして、人形を暴れさせ、町の人々に『マギーくん』のマイナスイメージを植え付けようと……」
「……言いがかりだ! 私は会長を尊敬していた」
「だが、マギーくんは嫌いだった。だから、包丁を持たせて、自爆させた。そうですね?」
「証拠はあるんですか! 私がやったという証拠は!」
「……ふう」
私は、やれやれと肩をすくめた。
難事件を解決してしまったな。
これからは『名探偵ステラちゃん』と名乗ることにしよう。
――バシン!
隣で、メアリが私の頭を叩いた。
「もう、いいから、早くスキルを使いなさいよ」
「……ごめん。やるよ」
私は副会長をじっと見つめて、スキルを発動した。
「≪エビルスキャン≫!」
≪エビルスキャン≫
難度 ★×8
属性 光
使用回数 15/15
成功率 100%
説明 闇の力を抑え込み、相手の正体を見破る。弱点までも探り出す。
魔族というのは、闇の力を持った魔物のことだ。
これを使えば、副会長の化けの皮も剥がすことができるだろう。
さあ、正体を現してもらおうか!
カースメイカー!
「……」
「……あれ?」
おかしいな。
副会長に、何も起きないぞ。
そのとき、私の横から声が上がった。
「……ぐわあああっ!」
いったい、なんだ?
見ると……あれは、メイドさんか。
胸の辺りをかきむしり、苦しそうにもだえている。
「……があ……はあ」
その顔からは、汗が滝のように流れている。
ギョロギョロッ!
目が動いた。上下に。続いて左右に。
黄土色に怪しく光り、縦に線が入っている。
どう見ても、人間の目じゃない。
あの目は、まるで……。
「……聞いてない! 私は聞いてないぞ! この勇者に、こんな力があるなんて」
――ピシピシッ!
柔肌に亀裂が走って、白い粉が零れ落ちる。
「……」
私は息を呑んだ。
「見るな! 私を見るなあ!」
ボロボロと肌が剥がれて落ちていく。
そこからは、ごつごつとした皮膚が。
「これは……」
ヘビ、だろうか。
そいつが、ギョロっとした目で、私のことを睨みつけて……。
「この『カースメイカー』の正体を見たな! おまえら全員、変えてやる! 醜いブタの姿に!」




