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人間不信の万能勇者は六人に分裂するようです~「私が六人いれば、それがドリームパーティーだ!」~  作者: 朝昼夜
第10章 会長の登場。三体目の魔族『カースメイカー』との戦い。
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第94話 ファランクス


 私たちは『カースメイカー』から逃げ出し、転送陣に乗り込んだ。


 ――ブイイイイイイイン!

 

 着いた先は、ずいぶんと静かなお店だが……。


「本屋ですね。主に、魔法書が売られています」


 私たちはすぐに柱の陰に身をひそめた。


「ブラック」

「……」


 気を失っているのか。

 目を閉じたまま、黙り込んでいる。


「ヒール!」


 私が呪文を唱えると、彼女の表情が幾分かやわらいでいく。


 回復はしているのだろう。

 だが、全快とまでは……。


「状態異常も治りませんね」


 毒・麻痺・火傷・凍傷。

 一度に四つの状態異常を受けたことで、ブラックの体力は大幅に削られた。


 これ以上、削れてしまうと、戦闘の復帰も難しくなる。


「ブラック。しっかりしてよ」


 盾職の離脱は大きな痛手だ。

 特に今回の相手は、高い攻撃力を持っている。


 彼女がいないのは、正直かなり厳しい。


「……メアリを連れてきておけばよかったな」


 敵の状態異常は、条件が必要な特別なもの。

 いわば、呪いのようなものなのだ。


 このレベルの魔法は、私では解除できない。

 ヒーラー、神官、聖女などの専門職の力が必要になる。


「ステラさん。アイテム屋を利用しましょう。サモネアにある高品質のアイテム。それを使えば、状態異常も回復できます」


 なるほど。それはいい。

 アイテム屋と本屋は、転送陣で繋がっているのだ。


「魔方陣はどこにあるかな」

「昼間に確認しておきました。カウンターの隣に設置してあります」


 カウンターか。

 ここからだと、本棚が邪魔で見えないな。


「ステラー」


 グリーンが声をかけてきた。


「人形いるよー」

「ほんと? どのくらい?」

「えっとねー。二十体ー」


 あらかじめ、お店にも配置していたということだろうか。


「面倒くさい」

「ええ。今回の魔族は、用意周到な性格のようです」


 だが、百体を相手にするよりは、難易度が下がった。


 しかも、ここは店内だ。

 これだけ狭ければ、取り囲まれる心配もないだろう。


「では、私が……≪シードローン≫!」


 手のひらから、航空機が飛び立った。


 出したのは、四機。

 パタパタパタパタ! 天井すれすれを旋回している。


「一体ずつ仕留めていきましょう」


 でも、ブラックの体調もあるし、広場から追手もくるはず。

 あまり、ゆっくりはしていられない。


「こちらも出しておきます。≪シーキャノン≫!」


 床がせり上がり、自動砲台が出現。

 私の背後に狙いを定めている。


「追手は、この砲台に対処させましょう」


 人形の対策はできた。

 私たちはこそこそと身を隠し、本棚の横を移動していく。


 カウンターまでまっすぐ向かうと、複数の敵から攻撃されかねない。

 だから、迂回して、本棚を横切りながら前に進む。


 十分ほど経過した。

 ブルーのドローンは、人形を何体か倒してくれただろうか。


 グリーンに確認してもらおう。


「ムムムッ!」

 

 頭を抑えて、唸っている。


「どう? あと一桁ぐらい?」


 彼女は首を横に振ると、


「あと、三十四体ー」

「……え?」


 増えてないか?


「増援を呼ばれたんでしょうか?」

「むうっ! この魔族、ほんとにウザい」

「敵はリフレクもあります。このままでは、こちらのジリ貧に」


 そのとき、前から誰かが突っ込んできた。


 人形でも、他のモンスターでもない。

 どうやら、人間。私たちと同じ冒険者のようだ。


「お前ら、なにしてんだ」


 男が、話しかけてきた。


 上半身は裸で、靴も履いていない。

 ここ、本屋なんだけど。


「ヴァイケンさん」


 昼間に会った男だ。

 職業は格闘家で、ランキングは五位。

 とにかく、筋肉が凄いことは、よく覚えている。

 

 食事会には、いたんだったか。

 それなら、大方の事情も理解できているだろう。


「私たち、魔族と戦ってるんですよ」

「そりゃあ、オレもだが……って、そいつ」


 彼はブラックを見て、目を丸くしている。

 私に背負われて、じっと眠り込んだままなのだ。


「何があったんだ?」

「実は、魔族にやられちゃって……」

「魔族に! やられただと!?」


 ヴァイケンは昼間に、ブラックと手合わせをしたのだ。

 両者ともお遊びではあったが、彼はブラックの実力を高く評価していた。


「……オレでさえ、まだ一発も入れてねぇのに」


 ヴァイケンは悔しがり、隣の本棚を殴りつけた。


「ぐおおおっ! 悔しいっ!」

「……そうですか」


 こんなことをしてる場合ではない。

 私たちは先に進まないといけない。


「ステラー。あれー」


 グリーンが指し示した先には、転送陣がある。

 あそこに乗り込めば、アイテム屋まで行くことができる。


 だが――。


「あれはなんだ!?」


 体長二メートルほどの大きさの人形。

 それが魔方陣の上に陣取っているのだ。


「マギギー!」


 ドスの利いた低い声だが、『マギー』と鳴いている。

 それに、服装や顔つきにも見覚えがある。


「マギーくんなのか?」


 しかし、それにしては、あまりにもサイズが違いすぎる。


 SサイズとⅬⅬサイズ? 

 いや、もっと離れているような気が……。


「デラックスサイズです」


 ブルーが答えた。


「マギーくん人形デラックスです。会員限定でしか入手できないレア商品です。巷では『マギギくん』と呼ばれているそうです」


 なるほど。

 よく分からないが、とにかく大きなマギーくんってことか。


「あれでは乗り込めませんよ」

「うん。おジャマ虫だね」


 しかし、あの大きい人形を倒すとなれば、一苦労だろう。

 その間に、更なる増援も呼ばれるだろうし。


「マギー」「マギー」


 とか考えてる間に、背後からマギーくんの声が。


「あわわ。どうしよう」

「困りました。困りましたよ」


 私とブルーがあたふたしていると、ヴァイケンさんが訪ねてきた。


「アイテム屋に行きたいのか?」


「はい。ブラックを回復させたくて」


 それを聞くと、ヴァイケンはウンウンと頷いた。


「それなら、オレが囮になろう!」

「……なっ。本当ですか?」


 協力してくれるというのか。

 私たち、まだ知り合って間もないのに。


「オレは元は盾職だったんだ。今は転職してるが、スキルも防御系のものが多い」

「いや、でも……」

「そこのでかい奴が動いたら、すぐに乗り込め。急いでるんだろ?」


 ヴァイケンはカウンターに飛び乗ると、スキルを発動した。


挑発アピール!」


 相手を引き寄せる。ブラックもよく使用するスキルだ。


「マギギー!」


 人形が重い腰を上げて、カウンターに歩み寄って行く。


「行きましょう」

「うん」


 せっかく、囮をやってくれるというのだ。

 彼の好意を無駄にしてはならない。


「マギー! マギー!」


 他の人形たちも上手く誘導してくれたようだ。

 これで道が開けた。


「よし。乗り込むよ」


 だが、私たちが魔方陣の中に入ると、急に人形の様子が変わった。


「マギー!」「マギー!」「マギー!」


 一斉に杖を振り上げたのだ。


「……まさか、転送陣に乗り込むことが、起動スイッチに」


 すでに十体ほどが、ヴァイケンを取り囲んでいる。


「マギギー!」


 マギギくんまで杖を取り出した。


「……ヴァイケンさん」


 彼らは全て自爆するつもりだぞ。

 いったい、どうするつもりなんだ。


「……ちょうどいいな」


 ヴァイケンは、私たちに向かって、宣言する。


「よーく見とけよ。今からおまえのために、とっておきの技を披露してやる」


 人形たちが、呪文を唱えた。


「エクスプロージョン!」「エクスプロージョン!」「エクスプロージョン!」


 そして、一斉に自爆しようとする最中、ヴァイケンはスキルを発動した。


「≪ファランクス≫!」


 ≪ファランクス≫

 難度 ★★★★★★ 

 属性  無

 使用回数 4/4

 成功率 100%

 説明 一定時間、地・水・火・風属性のダメージを無効。


 ヴァイケンの体から、赤いオーラが立ち昇った。


「エクスプロージョン!」「エクスプロージョン!」「エクスプロージョン!」


 次々と自爆していく人形たち。

 この魔法は広場でも見た通り、かなりの威力を誇る。


 だが――。


「……ふん」


 無傷! ヴァイケンの体には、傷一つ付いていない!


「……おおっ」


 赤いオーラは、火属性の攻撃をガードできるようだ。

 つまり、人形の『エクスプロージョン』は全て無効化することができる。


「注意すべき点は、この技は自分にしか効果がないということ。仲間は守れねえからな! 気を付けろよ!」


 私の背中で、ブラックが手を上げた。


「……ん……」

「起きてたんだ」

「……ん……」


 彼女のために、わざわざスキルを教えてくれたのか。

 良い人だ。筋肉なんて言って、すまなかった。


「分かったら、さっさと行け! 次が来るぞ」


 ヴァイケンの言う通り、私たちの元へ新たな人形が迫ってきている。


「先に進みましょう」

「うん。転送開始!」


 ブイイイイイイイイイン!


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