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人間不信の万能勇者は六人に分裂するようです~「私が六人いれば、それがドリームパーティーだ!」~  作者: 朝昼夜
第10章 会長の登場。三体目の魔族『カースメイカー』との戦い。
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第92話 制御キー


「エクスプロージョン!」


 呪文と共に、人形が内側から破裂した。

 破片が前にいた私に、飛び散ってくる。


「……いつっ……あたっ……」


 私の体にいくつもの擦り傷ができてしまった。


 メアリがすぐに『ヒール』を使用する。

 聖女なので、私のものより数倍は回復力がある。


「大丈夫? ヒール!」

「ありがと、メアリ」

「それにしても、自爆するなんてね」

「うん。びっくりした」


 すると、後ろの方で叫び声がした。


「きゃああああっ!」


 ピンクの声だ。

 どうしたんだろう。


「あわわ。私のマギー君が……」


 そうか。彼女はマギー人形を持ってるんだった。


「マギー! マギー!」


 人形は直立すると、私に向き直った。


「ステラ・レイラント。おまえは危険だ。今はまだ勇者のなりそこない。凡百の小娘にすぎないが。いずれは我々の脅威になる。そんな予感がする」


 手に持った包丁を突き付けた。


「ここで必ず仕留めてやる! この『カースメイカー』の手によって!」


 メアリが隣でニヤニヤしている。


「……モテモテね」

「……嬉しくない」


 カースメイカー。

 その言葉、そっくり、そのまま返してやる。


「逃がさないぞ」


 もしも、呪いを解きたいなら。

 あいつはダメージを与えれば良いと言っていたのだ。


「……あの人形には痛みがある。つまり、ダメージは反映されてるってことだから」


 要するに、人形を倒せばいいのだ。

 簡単なことだ。難しく考える必要はないんだ。


「……神速!」


 私は速攻をかけて、人形に切りかかる。

 こいつには反射があるが、その場合はブルーに魔法で攻撃を……。


 人形が包丁を構えた。


「そう何度も同じ手に――」


 ――カチッ!


 突然、部屋の照明が落ちた。


「……え?」


 ああ。私は完全に意表を突かれてしまった。

 そう思ったときには、奴の包丁が私の胸元を切りつけていた。


「……ぐっ」


 胸をおさえる。

 やばい。血が出てる。


「アディショナル!」


 呪文が聞こえる。

 これは……麻痺か。体の自由が効かなくなってしまう。


 ――カチッ!


「……ふん!」


 人形は走り出すと、副会長に襲い掛かった。


「……うわ。なんだやめろ」


 鍵のようなものを奪い去ると、今度は転送装置へ走って行く。


「逃がさないわ。ホーリー!」

「……リフレクション」


 青いバリアを張りながら、壁沿いに走り。

 やがて、装置のボタンに手にかけた。


「ステラ。追ってくるといい。私を倒したいのなら」


 ――ブイイイイイイン!


 ☆


 というわけで、逃げられてしまったのだが。


「……ゴホッ! 大変なことになった! このままでは!」


 副会長が頭を抱え込んでいる。

 わけを聞いてみよう。


「奴は制御キーを盗んでいったのです」


 制御キー。

 転送陣をコントロールするための鍵なのだそうだ。


「あれを使えば、町の転送陣を自由自在に扱えるようになるのです。それが魔族の手に渡ったとなれば」


 メアリが隣で補足してくれる。


「武器庫や宝物庫。それに食糧庫も、転送陣を使って移動するの」

「ということは……」

「数日もすれば、食糧がなくなるわ。あと水も飲めない。私たち、死ぬわね」

「ええ……」

「貴重な魔法書もあるから、文化的な観点でも、ヤバいわね」


 副会長が声を荒げた。


「一番、大変なのは金庫ですよ。この町の総資産が、あそこには保管されているんです。町の機能が停止してしまいますよ」


 そんな大事件なのか。

 制御キーが奪われた程度で、町が崩壊してしまうなんて……。


「予備のカギはないんですか? 緊急用のカギみたいな」

「あります。隣の部屋に」

「おおっ! だったら、それを使えば」

「しかし、隣の部屋に行くには、制御キーが必要で」

「ダメじゃん!」


 まあ、ありがちだけどね。


「おおっ! 緊急で思い出しました……おい!」

「……はい!」


 メイドさんが壁にあるボタンを押した。


 プルルルルルルッ!

 何やら、緊急っぽい音が。


「……ふう。これで安心です」

「今のボタンは?」

「非常用のボタンです。これで魔族に好き勝手されることはなくなります。あとは助けが来るのを待ちましょう」


 そう言うと、副会長は椅子に座った。


「……ん?」


 彼の足元に、血だまりができてる。

 最初に切られた右腕は、もう完治しているはずだが。


「さっき、真っ暗になったときに転んでしまって。それで、右足にケガを……」


 右足? そう言えば、人形も右足が切れていたな。


「……怪しい」


 なんか怒ってたのに、今は落ち着いてるし。

 本当は会長のことなんて、どうでもいいんじゃ……。


「ち、違います。魔族は強い。私では太刀打ちできないと理解できたので」

「それで追いかけないと」

「はい。おかしいですか?」

「いえ……」


 敵の能力は、まだ判明していない。 

 迂闊に飛び込むのは、とても危険だ。


「というか、治してあげなさいよ。ケガしてるんだから」

「あっ、ごめん」


 ブタが鳴きだした。


「ブヒヒヒッ! ブヒヒヒッ!」

「こら、会長。大人しくしてないとダメですよ」


 メイドさんが暴れる会長をなだめている。


「……ん?」


 このメイドさん、やけに汗だくだな。 

 エプロンが汗でびしょ濡れになっている。


「……はあ……はあ」


 息も荒い。

 調子でも悪いのか?


「……妙だな」

「なんですか?」

「……ペロリ。これはメイドさんの……」

「やめてください」


 メイドさんが答えた。


「この部屋、蒸し暑くないですか? それに息苦しくて」


 たしかに。

 暑いね。なんでだろう。


「大変だ。空調が止まってる! これでは空気が循環されないぞ! 私たち、死んでしまう!」

「……ええ」


 もう無茶苦茶だよ。


「技師はカフェにいるはずです。休日は、あそこで紅茶を飲むことが多いので」

「わかりました」


 さて、技師に会わないと。

 メアリに頭を叩かれた。


「あんたは魔族を倒しに行くのよ!」

「分かってる」

「空調の方は、私がやっておくわ」


 というわけで、私は人形を追いかけよう。

 もちろん、仲間たちと一緒だ。


 

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