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人間不信の万能勇者は六人に分裂するようです~「私が六人いれば、それがドリームパーティーだ!」~  作者: 朝昼夜
第10章 会長の登場。三体目の魔族『カースメイカー』との戦い。
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第90話 会長が……

 

 お屋敷での食事会は、実に普通のものだった。


 どこかの物語にでも出て来そうな長大なテーブル。

 そこに、私たちは横並びに座っている。


「ミリア。町の散策はどうだった? 楽しかった?」

「はい。魔術師の方が、とてもよくしてくれて」


 店員なんかは、みんなローブ姿だった。

 あれは、やはり魔術師協会の人たちなのだろうか。


「会長に、早く、お礼が言いたいです」

「そう」

 

 周りの話では、美人で気の良い人なんだっけ?

 私もぜひ会ってみたいところだ。


 そうこうするうち、使用人により、料理が運ばれてきた。

 私たちは料理をいただくことにする。


「モグモグ……。おいしい」


 このステーキ、柔らかくて口の中でトロけそうだ。

 レッドも来れば良かったのに。もったいない。


 というか、よく見ると、ブルーも食べていないな。

 最初に二口ほど食べたきりで、スプーンが止まっている。


「どしたの? 食欲ないの?」

「いえ。そういうわけでは」


 テーブルの奥の席を横目で確認している。


「変ですね」

「……ん? ブルー。何が変なの? モグモグ」

「会長、まだ出て来ませんよ」


 会長か。

 たしかに、姿を現していない。


 本来、彼女が座るべき席は、空席になっている。

 料理は置いてあるので、来る予定はあるようだが。


「遅れてくるって、言ってたじゃん」

「それはそうですが……」


 ブルーは心配性だな。

 会長というからには、色々と用事があるのだろう。


 気にすることじゃない。

 私はスープのお代わりをすることにしよう。


「すみません。スープを」

「はい! 只今!」


 メイドさんが、スープを用意してくれた。

 私がそれを啜っていると、男が立ち上がった。


「……ゴホッ……ゴホッ」


 副会長と名乗る男だ。

 先ほどから、彼が食事会を仕切っている。


「みなさん。お待たせしました。会長のご到着です」


 ――パチパチパチパチ!

 おお。ついに、出てくるようだ。


「……」


 奥から、のそのそと誰かが歩いてくる。


 どうやら会長のようだが――。


「……え?」


 私は、我が目を疑った。


 現れたのは、ブクブクとした脂肪の塊だったのだ。


 そいつはピンク色の肌をしており、四本の短い足で、重たい体を支えている。

 その顔は潰れており、目も横に付いているし、その鼻はまっ平だ。


 話では、魔術師だと聞いていたのだが。


 この姿はどう見ても……。


「ゴホン!」


 副会長が咳き込んだ。


「会長。ご挨拶を」


 会長、のようなものが、声を荒げた。


「ブヒヒヒヒ! ブヒ!」


「素晴らしいお言葉、ありがとうございます」


 ――パチパチパチパチ!


 挨拶? を終えると、メイドは会長を席に着かせる。


「さあ。会長。ご飯ですよ」


 会長は口からヨダレを垂らし、テーブルの上に乗り出した。


「フゴフゴフゴフゴ」


 皿のステーキを、鼻息を荒くしながら食べている。


「ブヒブヒブヒ!」


 そして、口をソースでベトベトにしながら、隣の皿へ。

 ――ガシャン! ガシャン!


 会長の前足が当たり、皿が割れていく。

 

「……さささっ」


 数人のメイドがやってくると、汚れた床を掃除しはじめた。

 

「会長。お口に汚れが……フキフキッ!」

「ブヒブヒヒ!」

「どうぞ。みなさんも続けてください」

「……」


 楽しいお食事のはずなのだが、会場内は沈黙で静まり返っている。


「……えっと」


 どうなってるんだろう。

 これ、突っ込んじゃいけない雰囲気?


「いったい、会長はどこに……」


 周りを見るが、副会長はだんまり。使用人たちも素知らぬ振りだ。


 私が不安になっていると、メアリが声をひそめて話しかけてきた。


「……ステラ。平気?」

「メアリ。訳が分からないよ」

「そうよね。私も初めて見たときは、びっくりしちゃった」


 彼女は事情を知っているのか。

 聞いてみよう。


「……言いにくいんだけど、あれが会長よ」

「え? どういうこと?」

「実はね……。会長は呪いにかけられてるの」

「呪い?」

「ええ。『カースメイカー』という魔族がかけたらしいんだけど」


 どうやら、とても強力な呪いらしく。

 協会の魔術師たちは誰も解くことができないらしい。


「ということは、冒険者のランキングって……」


 呪いを解ける者を探し出すためなのか。

 上位の実力者なら、解けないまでも、その方法は知ってるかもしれない。


「それなら、ギルドに直接、依頼を出せばいいんじゃ」

「言えると思う? 『会長がブタになったんです。助けてください』って」


 言えないか。

 あんな姿でも、一応は組織のトップなのだ。


 それに魔法に関する技術は、協会が管理していることが多い。

 ギルドのデータベースや、転送装置、その他いろいろ……。


 もしも、トップの不在が公になれば……ヤバいよな。普通に考えて。


「相手は、魔族よ。当然、勇者の出番よね」

「うん……」


 会長がいなければ、書物の解読ができない。


「そして、なにより……」


 私は会長を見た。


「……ブヒヒ」


 話では、とても美人で気さくな人だと聞いている。

 そんな女性を、ブタに変えてしまうとは……。


 魔族め! 許せない!


「……メアリ。なんとかしよう!」

「ええ。そうね。クズ魔族をとっちめてやらないとね」


 と、二人で考えていると――。


 ――ブイイイイイン!


 転送陣から誰かが出てきた。

 

「……はあ……はあ」


 メイド、だろうか。

 ずいぶんと、息を切らした様子だが。


「……ゴホッ……なんだね。騒々しい」

「副会長! 大変です! 大変なんです!」


 メイドは慌てており、要領を得ない。


「いつも言っているだろう。用件は手短に話しなさい」

「……でも! でも! 人形が! 人形があ!」

「人形? マギー人形のことか。それがどうした?」

「こ、これを……」


 メイドは一体の人形を、両手に抱えていた。


 『マギーくん』とか呼ばれていた奴だ。

 町にいっぱい配置されていた。


「……ゴホッ! だから、それがなんだというんだ……ん?」


 副会長は目を見開いた。

  

「……マ……ギー!」


 人形が、一人でに声を出したのだ。

 さらに、そいつは懐から包丁を持ち出し――。


 ――スパン!


 副会長の右腕を切りつけた。


「ぐああああっ! なんだこいつはあ!」


「マギー! マギー!」


 呪文のように声を上げる人形は、床に降りると、面白そうに笑った。


「カーススススッ!」


 変な笑い方だ。


「冒険者たちよ! サモネアへようこそ!」


 私たちのことをさしているようだ。

 さらに、人形は続ける。


「まさか、これだけの実力者が、のこのこと足を運んでくれるとはな! 魔王様もさぞお喜びになるに違いない!」

「……」


 私とメアリは、震えた。


「……この感じ、あのときと同じだ」 


 そうだ。

 オバケスロットと対峙した、あのときと……。


「我が名は、『カースメイカー』。初めに言っておこう! おまえたち、誰一人、ここから逃しはしない!」

 

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