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人間不信の万能勇者は六人に分裂するようです~「私が六人いれば、それがドリームパーティーだ!」~  作者: 朝昼夜
第10章 会長の登場。三体目の魔族『カースメイカー』との戦い。
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第89話 格闘家とアサシン


 サモネアの町には、外というものがない。

 部屋から部屋へは、転送陣で移動するのだそうだ。


 さっそく、入ってみよう。

 まずは武器屋から。


 ――ブイイイイイイイン!


「いらっしゃいませー」

「……おお」


 ちゃんとした武器屋だ。

 最初の部屋は、無人だったから心配していたが。


 店内では、魔術師や私たちのような冒険者まで。

 いろいろな人々が買い物に来ている。


 活気に溢れてるな。

 堅苦しいとか言って、ごめんなさい。


「……商品を見てみようか」


 ガラスケースに並べられたものを眺めてみる。


 名前:ブラッドナイフ

 効果:体力を吸収


 名前:ハヤブサの剣

 効果:二回攻撃


 特殊な効果の付いたものが多い。

 しかも、どれもが強力な効果のものばかりだ。


 やはり、魔法使いのお店だからだろうか。


「……おっ」


 ブルーだ。

 商品をまじまじと見ている。

 

「……珍しい」


 彼女は、こういうところでは遠慮しがちなのだ。

 好きなものを買えばいいのに。


「何? 欲しいものがあるなら、買ってあげるよ」

「いえ、私は……」


 彼女は杖のコーナーを見ていたようだ。


 タクトやロッドなど、長さや太さ。オーク材やウォールナットのような材質。

 とにかく、色んな杖が並んでいる。

 

「そう言えば、ブルーって杖を装備しないよね。なんで?」


 杖には、魔法をコントロールしやすくする効果があるのだが。


「手が塞がるのが、好きではなくて……」

「ふーん」


 そういう人も、中にはいるな。

 要は精神を集中できればいいので、自分に合ったやり方を見つけるべきだ。


「でも、本当は欲しかったり?」


 彼女は首を横に振った。


「魔法書の方を見てきますね」


 そう言って、ブルーは別の魔法陣へ。


「まあ、いいか」


 次に行くとしよう。


 ☆


 広場にやってきた。


「……ほお」


 これまた凄い。

 空が青々と広がり、太陽が眩しいほどに輝いているのだ。


 当たり前のように聞こえるが、ここは室内。

 しかも、天井はたいして高くないはずなのだ。


 通りでは、街路樹が植えられており、中央には噴水もある。

 もちろん、偽物ではなく実際に触れることもできる。


 いったい、どうなってるんだ。

 魔術の力って、すげー!


「おーい! みんな注目だ!」


 噴水の側。

 男が声を張り上げている。


 上半身は裸で、下は黒いズボン。

 それ以外の目立った装備はない。たぶん、格闘家だと思う。


「オレ『ヴァイケン』の攻撃を、受け止めきれた奴。そいつに素敵な景品をプレゼントしよう。さあ! 腕に覚えのある奴は前に出な!」


「……」


 野次馬がざわざわとしているが、誰も前に出ようとしない。

 当たり前だ。見るからに、強そうなのだ。


 あの筋肉の付き方から言って、並みの鍛え方ではない。

 加えて顔が厳つく、口元には切り傷まである。


 出て行ったら、ボコボコにされる。

 誰だって、そう思うはずだ。


 隣のメアリが、私に声をかけた。


「あの人、ランキング五位の人よ」

「……五位!」


 高すぎだろ。

 いったい、メタスラを何匹狩れば、そんな順位を……。


「どうして、この町に」

「食事会に呼ばれたのは、ミリアだけじゃないわ。同時に複数人を招待してるの」


 そうなのか。

 やはり、ついて来て良かったかもしれない。


 ミリアも格闘家と食事しても、嬉しくはないだろう。

 どうせなら、知り合いと楽しくワイワイとやりたいものだ。


「おい! そこの勇者!」

「え? 私?」

「そうだ。暇なら、オレの相手をしていってくれ」


 周りの観衆も、私に注目している。

 指名されたなら、出ないわけにもいくまい。


「……やれやれ。それじゃあ、私の本気を見せるとしようか。流星でパパパッと」

「話を聞いてた? 攻撃を受けるのよ」

「……」


 無理だよ。

 あの筋肉だぞ?


 そのとき、私を押しのけて、誰かが前に出てきた。


 ブラックだ。

 我がパーティーの盾職が、満を持して参戦するようだ。


 しかし、敵は人間かも怪しい。

 筋肉のお化けだぞ。


「……ん……」

「あなた、まさか……」


 なんと、彼女は私の身代わりなってくれるというのか。

 私のためなら、その身を投げ売ってもいいと。


「……素晴らしい!」


 これこそ、仲間だ! 

 自己犠牲の精神だ!


「あなたの気持ちはよく分かったわ。大丈夫。骨は拾ってあげるからね」

「……ん……ん……」


 あっ、違うんだ。

 じゃあ、どうして出てきた?


「……ん……」

「あいつを見ろって?」


 名前:重石のベルト

 効果:移動しないと、全耐性↑↑


 良い効果だが、使いにくそうだ。移動しないって……。

 これが男の言う『素敵な景品』だろうか。


 なんとなく盾職のアクセサリーのように見えるけど。

 彼は格闘家だよな? なんであんなものを?


「……ん……」

「欲しいわけね」


 なんだ。景品目当てか。

 この娘は現金なところがあるからな。

 ブルーにも見習わせてあげたい。


 ヴァイケンとブラックは、向かい合って立った。


「ルールは分かったな?」

「……ん……」


 まずは軽い小手調べ。

 男はブラックに、蹴りの一撃をお見舞いする。


 彼女の顔を蹴り抜くつもりのようだが……。

 盾で、がっちりとガード!


「ふん……」


 続いて足を振り上げ、踵落としを繰り出した。

 脳天を目がけた頭上からの蹴り技。


 盾では受けにくい攻撃だが。


「……ん……」


 これも難なくガード! 手慣れたものである。


 今度は後ろにさがり。


「はああっ!」


 飛び蹴りをしかけるが、これも防御。

 盾を引きながら、上手に衝撃を押し殺している。


 ヴァイケンは、笑みをこぼした。


「……勇者の仲間か。予想以上だな」


 まあ、ドラゴンとも真っ向から戦っているので。

 我がパーティー『エレメンタルクラウン』の盾を甘く見ない方がいい。


「だったら、最後は本気だ」


 そう言うと、男は両足でステップを踏み出した。


「この一撃が、おまえに受けられるかな」


 相手の自信を持った攻撃。

 それは感じからして、スキルのようだが。


「……行くぜ! 必殺!」


 彼の利き腕が緑色の光を帯びた。

 それを後ろに引くと、


「≪ストームブロウ≫!」


 ≪ストームブロウ≫

 難度  ★★★★★★

 属性  風

 使用回数 15/15

 成功率 100%

 説明 嵐のような一撃。相手の能力アップを消し飛ばすことができる。


 竜巻のごとき一撃が、ブラックに……。


 ――ガッシャーン!


「……ごぼほっ」


 当たる直前、男の方が吹き飛ばされた。


「……ん……」


 見ると、ブラックがハンマーを持っている。

 どうやら、無防備だった顔面へカウンターをぶち込んだようだ。


「あの。ブラック……」


 ルールでは、あなたが殴っちゃいけないんじゃ……。


「……ん……」

「何? 痛そうだから、受けたくなかった?」

「……ん……」


 そうか。それなら、仕方がない……のか?


「……」


 起き上がってこない。

 かなり、油断してたんだろう。


「すみません。ヴァイケンさん。失礼します」


 私とブラックは、その場から退散した。

 

 ☆


「ステラちゃん。見てみて。『マギードール』」


 とても頭が大きく、目玉も負けないぐらい大きい。

 魔法使いの格好をしていて、手には杖を持っている。


 ピンクは『可愛いでしょう~』と言いたげだが、別にかわいくない。

 夜に見ると、ちょっと不気味かもしれない。


「こうやって、お腹を押すとね」

「『マギー! マギー!』」

「って、鳴くんだよ」

「そう」


 まるで、モンスターのような声だったけど。


「ところで、これなんなの? 他のお店にも置いてあったけど」

「魔術師協会のマスコットなんだって」

「へえ」


 町中の至るところに配置してあった。

 間違えて、踏みつけそうになったぐらいだ。


 もう、顔なじみである。

 マギーくん。男の子らしい。


 なんでも会長がデザインしたものらしく、彼女のお気に入りなんだとか。

 ふーむ。会長のセンスって……。


 ピンクはいくつも持ってるけど、これ買ってきたんだろうか。


「あそこの人が配ってるんだよ」

「へえ……って、え?」


 何あの人? 

 頭に、ガスマスクみたいなものを被ってるんだけど。


「シュコー! シュコー!」


 シュコシュコ言ってるんだけど。

 あの人、何者?


 メアリが答えてくれた。


「あれは……ランキング4位の『キョウ』ね」

「4位!」


 今度は4位だと!?

 いったい、どれだけのメタスラを狩ったんだ。


「いや……」


 動きやすそうな黒い装束を着ている。

 おそらく、あれはアサシンだろう。

 

 たしか、敵を暗殺するのが得意な闇の職業だったか。

 勇者とは対極に位置すると言っていい。


「シュコー! シュコー!」


 どう見ても、ヤバい雰囲気を放っている。

 関わり合いにならない方が、いいだろう。


 そう思っていると、グリーンがやってきた。


「やっほー」


 ――バシッ!

 アサシンの背中を叩いた。

 子供でも逃げ出すような姿なのに。


「……シュコッ」


 しかも、痛そう。

 手加減なしの痛恨の一撃を浴びせている。


「……あのバカ」


 なんてことを。殺されてしまうぞ。

 相手はアサシンなんだぞ。


「ねーねー。何してるのー?」

「シュコー!」

「そっかー。バイトしてるんだー」

「シュコー!」

「アサシンはお金かかるんだー。大変だねー」


 会話が成立している。


 どういうことだ? 

 シュコシュコ言ってるだけだろ?

 

「趣味は何ー?」

「シュコー」

「アイテム作りー。面白そうー」


 しかも、会話が弾んでないか。

 アサシンも楽しそうに見えるぞ。


「キョウ。今度、遊びに行こうー」

「シュコー!」

「グリーンでいいよー」

「シュコー」

「決まりだねー」


 なんか、一緒に遊ぶようだ。

 ものの十分ほどで、もう友人関係に。


 グリーンさん、すげー!

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